忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1809.06941
Meshkat et al. (2018)
A deep search for planets in the inner 15 au around Vega
(ベガの 15 au 以内での深い惑星探査)

概要

高コントラスト撮像観測による,Vega (ベガ) のまわりの惑星探査の結果について報告する.

ベガは若く明るい太陽系近傍の恒星である.ベガの周囲にはフェイスオン (円盤面が観測者の方を向いている) の 2 つの帯を持つデブリ円盤が検出されている.この円盤の構造は,不可視の惑星によって形作られている可能性が指摘されているため,高コントラスト撮像で惑星を探査するのに理想的な対象である.

Palomar Observatory (パロマー天文台) のコロナグラフ積分場分光 Project 1640 (P1640) を用いて,J バンド と H バンドで観測を行った.
2016 年の 2 夜でデータを取得したが,この時はシーイングの条件が悪く,2017 年により好ましいコンディションで 2 夜追加で観測を行った.合計で,積分時間が 5.5 時間,中程度から良好なシーイングコンディション (1”.5 以下) でベガの観測を行った.

結果として,今回の観測ではこの系内にはいかなる低質量天体も検出されなかった

今回のデータは,ベガの周りにおける非常に小さい軌道距離 (2-15 au) での最も感度の高いコントラスト限界を提供する,また,ベガ系を形作っている可能性のある伴星天体に対する新しい制約を課すことができた.

ベガについて

ベガの特徴

ベガは北半球における最もよく研究された天体の一つで,高コントラスト観測の良いターゲットである.

ベガは比較的若い恒星であり (4 億 4500 万歳,Yoon et al. 2010),2.5 太陽質量の A0V 星で,距離は 7.68 pc (van Leeuwen 2007) と太陽系に近い.
また 0 等星の明るい星であり,補償光学を用いた補正に適している.そのため低質量の惑星を検出するのに必要なコントラスト限界を満たしている.

ベガ周りの円盤の観測

ベガは,小さい粒子からなる円盤ハロー状の大きなフェイスオンの円盤を持っている.この円盤はスピッツァー宇宙望遠鏡によって最初に発見された (Su et al. 2005).

さらに,JCMT による 450 µm と 850 µm での撮像観測では,滑らかで軸対称な構造の,73, 135 au の大きさの円盤がそれぞれ検出された (Holland et al. 2017).これらのデータからは,低温なデブリ帯の中心は恒星の位置から 2” ずれていることも判明した.このずれの大きさは,過去に検出されていた干渉系データによるピークのずれである 8-14” よりも小さい (Koener et al. 2001,WIlner et al. 2002),

ハーシェル宇宙望遠鏡の 70 - 500 µm でのデータは,恒星からのピークのずれが無い,滑らかな円盤構造と整合的な結果が得られている (Sibthorpe et al. 2010),

ハーシェルとスピッツァーのデータからは,水の凍結線近くの温かいダストからの放射が発見されている,この放射の位置は ~ 14 au であり,外側の ~ 80 au にある円盤とは空間的に離れている (Su et al. 2013).
内側の温かいデブリと外側の冷たいデブリの間に大きな間隔が空いていることから,また高コントラスト撮像観測からの制約から,Su et al. (2013) はベガのデブリ構造とフォーマルハウト周囲の構造は,凍結線以遠に複数の惑星が存在することを示していると示唆した.

ベガ周囲の惑星探査

円盤がフェイスオンの向きであるため,円盤と同一平面にある惑星の撮像観測に適している.対照的に,フェイスオンで高速自転星の場合は,視線速度で惑星を探査するのは非常に困難になる.

Janson et al. (2015) はスピッツァー宇宙望遠鏡と MMT 観測の結果 (Heinze et al. 2018) を組み合わせ,ベガ系に存在する可能性のある惑星質量に制約を与えた.
スピッツァー宇宙望遠鏡のデータから,ベガから 100 - 200 au の範囲に存在する惑星の質量上限値として ~ 1-3 木星質量という値を与えた.また MMT データからは,20 - 80 au の範囲に ~ 5 - 20 木星質量という上限値を与えた.

また,Macintosh et al. (2003) では Keck/NIRC2 で取得された K バンドデータから,50 au 以遠で ~ 5 木星質量という上限値を与えた.

観測結果

今回取得したデータ中には,いかなる点源も検出されなかった.

観測結果から,内側の温かいデブリ円盤を形成している天体として,~ 12 au の位置に 20 木星質量以上の天体が存在する可能性は否定された (H バンドの観測を元にした場合).J バンドでの観測を元にした場合,同じ位置に 30 木星質量以上の天体が存在する可能性は否定される.

Raymond & Bonsor (2014) では力学的シミュレーションを行い,ベガ系に存在する可能性のある惑星質量への制約を与えている.そこでは,5 - 10 au の範囲にある低質量の惑星 (木星質量以下) によってデブリ円盤の形状を再現可能であることが示されている.
今回の観測では,そのシミュレーションに対して意味のある制約を与えるほどの感度はない.

拍手[0回]

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック