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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1809.07242
Vanderspek et al. (2018)
TESS Discovery of an ultra-short-period planet around the nearby M dwarf LHS 3844
(近傍の M 矮星 LHS 3844 まわりの超短周期惑星の TESS による発見)

概要

新しい Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) によって取得されたデータから,LHS 3844 まわりのホットアースを検出した.この恒星は 15 pc の距離にある M 型星である.

発見された惑星 LHS 3844b は 1.32 地球半径で,11 時間の周期で公転している.

このような強く輻射を受けている惑星の周りに大気が存在するかは疑問だが,恒星は十分明るい (I=11.9,K=9.1) ため,トランジットと二次食の分光観測で探査できる可能性がある.また恒星が明るく惑星は短周期なので,ドップラー分光による惑星の質量測定も可能だろう.

パラメータ

LHS 3844
質量:0.151 太陽質量
半径:0.189 太陽半径
光度:0.00272 太陽光度
有効温度:3036 K
距離:14.9 pc
LHS 3844b
軌道周期:0.46292792 日
半径:1.32 地球半径
軌道長半径:0.00623 AU
平衡温度:805 K

考察

類似した性質を持つ系外惑星

LHS 3844b は,地球からも最も近い部類の系外惑星であり,中心星からも最も近い部類の系外惑星でもある.

また,太陽近傍の M 型星周りの惑星の一員となった.その他には GJ 1214b (Charbonneau et al. 2009),GJ 1132b (Berta-Thompson et al. 2015),TRAPPIST-1b-h (Gillon et al. 2016),LHS 1140b-c (Dittmann et al. 2017,Ment et al. 2018) がある.また ultra-short period (USP) planet (超短周期惑星) の一員でもある.これは軌道周期が 1 日未満の惑星を指す (Sanchis-Ojeda et al. 2014,Winn et al. 2018).

この惑星は,木星サイズ未満の既知の超短周期惑星の中では,最も大きなトランジット深さを持つ.また,その他の既知の系である CoRoT-7 (L ́eger et al. 2009),ケプラー10 (Batalha et al. 2011),ケプラー42 (Muirheadet al. 2012),ケプラー78 (Sanchis-Ojeda et al. 2013) よりも明るく,地球に近い.

大気の存在の有無

トランジットと二次食の分光観測で,惑星大気の特徴付けを行うことが期待される.

この惑星の平衡温度は 805 K で,軌道半径は恒星半径の 7.1 倍であり,どのようなタイプの大気を持つのかは不明である.

もし惑星が現在の位置やその付近で形成された場合,惑星が過去に持っていた初期大気は,中心星が若い時期の,より明るく彩層が活発な時期に完全に吹き飛ばされてしまうだろう.

ケプラーで発見された短周期惑星で観測されている惑星半径の関数では,1.8 地球半径の所に存在個数のへこみが見られる.これは惑星からの大気損失の結果だと解釈されている.つまり,1.8 地球半径より小さい惑星は,初期の水素・ヘリウム大気を光蒸発によって失っていると考えられる (Fulton et al. 2017,Lopez & Fortney 2013,Owen & Wu 2013).

この惑星の半径は 1.32 地球半径であり,この惑星も光蒸発による大気損失の過程を経ただろうと考えられる.この場合,トランジット分光観測では波長によって惑星半径に変化を示さないと考えられる.しかし掩蔽の分光観測では,惑星の表面からの放射スペクトルを測定することができるだろう.

視線速度観測の可能性

組成が地球と同じだった場合,惑星質量は 2.8 地球質量だと推定される.この質量を仮定した場合,ドップラーシグナルの大きさは 8 m/s になる.これは岩石惑星としては非常に高い値である.

軌道周期が十分短いため,数夜の観測で一回の周期を観測できるだろう.また軌道周期は恒星の自転周期より 280 倍も短いので,惑星の軌道運動によるドップラーシグナルと,その他の恒星に起因する疑わしいドップラーシグナルとは明確に分離できるだろう.

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