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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.07374
Manara et al. (2018)
Why do protoplanetary disks appear not massive enough to form the known exoplanet population?
(なぜ原始惑星系円盤は既知の系外惑星を形成するために十分な重さがないように見えるのか?)
系外惑星検出サーベイと原始惑星系円盤サーベイは,これまでに新しい知見を提供してきた.ここでは,存在が確定した系外惑星の質量の情報を集め,恒星質量に対する惑星の存在度を,100 - 300 万歳程度の年老いた星形成領域において質量が測定されている原始惑星系円盤の存在度と比較した.
原始惑星系円盤の質量を,Gaia DR2 で得られた年周視差から導出された新しい距離の推定値を用いて再計算した.
その結果,系外惑星系における惑星の合計質量は,測定されている円盤質量よりもずっと小さいという予測が存在する一方で,実際には系外惑星系の質量は最も重い部類の円盤質量と同程度か,あるいはそれよりも重い事が判明した.
これと同じ結果は,測定された惑星の質量を重元素存在度に変換し (巨大惑星の場合はコア質量,スーパーアース質量の場合は全質量),これを円盤ダスト質量と比較することによっても見出される.
原始惑星系円盤中のダスト質量が大きく過小評価されていない限り.今回の結果は大きな問題である.円盤内での極めて効率的なダスト粒子のリサイクリングでは,この問題を解決できない.
今回の発見は,惑星のコアは 10 - 100 万年以内に非常に急速に形成され,同じタイムスケールで円盤から大量のガスが取り除かれたか,あるいは円盤は周囲から新鮮な惑星形成物質を継続的に供給されているかであることを示唆している.
これらの仮説は,より若い天体の円盤質量を測定し,円盤物質がその周辺から補充されているか,その場合どの様に補充されているかをよりよく理解することで検証できる.
同様に,200 万歳より若い星団中の若い恒星は,60 - 80 % 以上が原始惑星系円盤を持っていることが分かっている (Fedele et al. 2010など),
これらの惑星がいつ形成されるかを決定するのは,原理的には単純である.系外惑星系の質量の中央値を,年齢に伴う原始惑星系円盤の質量の減少と比較し,その交点を決定すれば良い.
しかし現実的には,原始惑星系円盤の質量測定は大きなサンプル数が存在しないことと,系外惑星検出サーベイの不完全さにより,惑星形成タイムスケールに制約を与えることは難しい.さらに,原始惑星系円盤からのミリメートル放射は小さいダスト (~ cm 未満) の質量のみをトレースしている という事実と,円盤の全質量の推定は未だに不明確であることから (Bergin & Williams 2018),この比較をより困難なものにしている.
特に Greaves & Rice (2010),Williams (2012),Najita & Kenyon (2014) では,質量が測定されている円盤のごく一部だけが,観測されるガス惑星の大部分の質量を説明するのに十分な質量を持っているということが示されている.彼らは,惑星形成はこれらの円盤が観測された段階 (100 - 300 万歳程度) では未だ進行中であるということを提案している.
まず,抽出した各惑星系における個々の惑星質量を足し上げる.
系外惑星サーベイは依然として不完全であり,また惑星質量の測定に対して \(1/\sin i\) のファクターが存在する.そのため,この足し上げた質量は各惑星系での総質量の下限値に相当する.
ここで議論している系外惑星系の質量は,今後の検出で変更される可能性がある.
一方で系外惑星系の質量は,既知の惑星系内で新たに複数惑星が検出された場合は増加する.しかしこれの影響は,小さいかあるいは無視できる.これは,既に観測されている系で過去に検出されていなかった惑星は,同じ系内で既に発見されている惑星に比べて低質量だからである.
ミリメートル連続波の観測から,ダスト不透明度と温度に単一の値を仮定して,円盤のダスト質量を導出した.従ってこのような測定は,最大で ~ cm サイズの粒子のみに感度があることになる.
円盤ガスの輝線から示唆される円盤の総質量の推定には,依然として大きな不定性がある.そのため,ガス輝線のデータを用いる代わりに,円盤の総質量はダスト質量から推定を行った,ガスとダストの質量比を 100 と固定し,ダスト質量から円盤の総質量の推定を行っている.
また円盤質量と恒星の光度は,Gaia DR2 での視差から新たに算出された距離を用いてスケールし直している.
理論的な観点からは,微惑星と惑星形成を説明する全てのモデルは,非常に非効率的なプロセスに基づいている.例えばペブル降着のようなシナリオでは (Johansen et al. 2007など),ペブル流速の極小さい割合のみが,成長している惑星に捕獲される (Guillot et al. 2014参照).
もし,粒子サイズの分布を仮定して計算された円盤の総ダスト質量が,小さいダスト粒子とペブルの両方の質量を表していると考える場合,円盤ダスト質量は惑星系の重元素の最終質量よりも少なくとも一桁は大きい必要がある.
ここで示したように,系外惑星系に含まれている重元素は,中心星が太陽質量の恒星の場合は 2 - 3 木星質量程度,中心星が褐色矮星の場合は 0.02 木星質量 (6.4 地球質量) となる.
太陽系の場合,地球型惑星の質量,巨大惑星のコア,カイパーベルトとオールトの雲を足し合わせた,合計の重元素量は,130 地球質量,あるいは 0.4 木星質量と推定される (Guillot et al. 2014など).対照的に,100 - 300 万歳の原始惑星系円盤のダスト質量として測定された中で最も大きいものは,太陽質量の恒星周りでは 0.5 - 1 木星質量,褐色矮星まわりでは 0.01 木星質量 (3 地球質量) 程度である.
ここで示した大きな円盤質量は,観測された円盤のうちのごく一部であり,円盤の大部分はそれよりも一桁小さい質量を持っている.この比較から,惑星降着過程は既存の形成モデルが示唆するよりもずっと効率的であるか,あるいは他の形成シナリオが必要であるということが示される.
しかし,円盤サーベイは 100 - 300 万歳でまだ重いものだけをターゲットにしており,そして,例えば近赤外線で光学的に薄い,軽い円盤 (class III の天体) は含まれていないというバイアスがかかっている.そのためこれら 2 つのバイアスは相殺する.
円盤中のダスト質量のいくらかは,光学的に厚い円盤内側にとらわれることが示されている (Tripathi et al. 2017など).また円盤の不透明度と温度の値については議論が残されている.
また,ダスト成分の大部分が cm サイズかそれより大きなサイズに成長しているというのも,ありうる可能性である.大きなサイズのダスト成分は,ミリメートル波の観測では検出できない.
しかし,円盤質量が一桁以上も過小評価されてはいないと信じるに足るいくつかの理由も存在する.
例えば,もし円盤質量が非常に大きいと考えた場合,デブリ円盤のフェーズに遷移している非常に年老いた円盤を除いて,ガス・ダスト比が 100 よりずっと小さい事を意味する弱い CO 輝線の存在を説明することをさらに困難にする.
さらに,測定されている円盤質量・質量降着率は,円盤の粘性進化理論から予測される値と整合的であるが,円盤ダスト質量が大幅に過小評価されていると考えた場合はこの整合性と矛盾を来す.
円盤内での物質のリサイクルが起きるというシナリオでは,内側へ移動したダスト物質がその後円盤の最も内側領域 (1 au 以内) に起源を持つ円盤風に運ばれ,外部円盤 (10 au 以遠) に再供給され,その後ダストは再び内側へ移動できる,と考えられている.
このシナリオは,観測されているカルシウム・アルミニウム豊富な内包物 (CAI) の存在を説明するために使われている.
しかしリサイクル効率が最も高い最良のケースのシナリオでも,惑星降着に利用可能な総質量は円盤のダスト質量が上限であり,観測されている惑星の重元素質量の合計よりも典型的に小さい.さらに,すべての円盤内の物質が再利用されるとは考えづらい.
このシナリオでは,惑星を形成する物質の大部分は円盤内で既に微惑星の形で存在していると考える.
ペブル降着では,微惑星が非常に初期の段階に形成されるというシナリオが提案されている.これは円盤が重く,重力的に不安定だった場合に起きうる (Booth & Clarke 2016).
しかし惑星コアの形成は非常に非効率的で,木星のコアを月質量の半分から 20 地球質量まで成長させるのには,350 地球質量程度のべブルが必要である (Morbidelli et al. 2016).従って円盤は 100 万歳以降の年齢で観測されている質量よりも,初期に 10 - 100 倍重い必要がある.このことも,円盤の大部分は初期に重力的に不安定である必要があることを示唆している.
このモデルの問題点は,もし初期の円盤質量が 100 万歳より年老いた円盤で観測されている質量よりも 10 - 100 倍重い場合,観測されている Class 0 アウトフローの存在と整合的であるためには,極めて効率的な円盤からのガス除去機構が存在する必要がある.
このシナリオは,木星の原始コアが非常に初期の段階で形成されているという最近の結果と一致する.また HL Tau の円盤で観測されている,惑星によって刻まれているかもしれないリング構造とも整合的である.
このシナリオでは,円盤は周囲の星間物質から継続的に,あるいは変動性を持って供給していると考える.
供給されているガスと小さいダスト粒子は中心星へ降着し続ける.円盤内で惑星形成に使われなかった物質はそのまま中心星に降着するか,あるいは円盤風に乗って除去され,また部分的に再利用される可能性がある.
ただし,どの程度の恒星-円盤系が実際に周囲から物質を降着し続けているか,またこのプロセスが継続的か一時的なものかは不明である.
arXiv:1809.07374
Manara et al. (2018)
Why do protoplanetary disks appear not massive enough to form the known exoplanet population?
(なぜ原始惑星系円盤は既知の系外惑星を形成するために十分な重さがないように見えるのか?)
概要
惑星が原始惑星系円盤内で,いつどのように形成されるかは,未だに議論の対象である.系外惑星検出サーベイと原始惑星系円盤サーベイは,これまでに新しい知見を提供してきた.ここでは,存在が確定した系外惑星の質量の情報を集め,恒星質量に対する惑星の存在度を,100 - 300 万歳程度の年老いた星形成領域において質量が測定されている原始惑星系円盤の存在度と比較した.
原始惑星系円盤の質量を,Gaia DR2 で得られた年周視差から導出された新しい距離の推定値を用いて再計算した.
その結果,系外惑星系における惑星の合計質量は,測定されている円盤質量よりもずっと小さいという予測が存在する一方で,実際には系外惑星系の質量は最も重い部類の円盤質量と同程度か,あるいはそれよりも重い事が判明した.
これと同じ結果は,測定された惑星の質量を重元素存在度に変換し (巨大惑星の場合はコア質量,スーパーアース質量の場合は全質量),これを円盤ダスト質量と比較することによっても見出される.
原始惑星系円盤中のダスト質量が大きく過小評価されていない限り.今回の結果は大きな問題である.円盤内での極めて効率的なダスト粒子のリサイクリングでは,この問題を解決できない.
今回の発見は,惑星のコアは 10 - 100 万年以内に非常に急速に形成され,同じタイムスケールで円盤から大量のガスが取り除かれたか,あるいは円盤は周囲から新鮮な惑星形成物質を継続的に供給されているかであることを示唆している.
これらの仮説は,より若い天体の円盤質量を測定し,円盤物質がその周辺から補充されているか,その場合どの様に補充されているかをよりよく理解することで検証できる.
背景
円盤観測と惑星形成時期
これまでの観測から,少なくとも 30% の恒星が惑星を持っている事が示されており (Zhu et al. 2018など),現在の検出限界を考えると,全ての恒星が惑星系を持っていると考えることは妥当である.同様に,200 万歳より若い星団中の若い恒星は,60 - 80 % 以上が原始惑星系円盤を持っていることが分かっている (Fedele et al. 2010など),
これらの惑星がいつ形成されるかを決定するのは,原理的には単純である.系外惑星系の質量の中央値を,年齢に伴う原始惑星系円盤の質量の減少と比較し,その交点を決定すれば良い.
しかし現実的には,原始惑星系円盤の質量測定は大きなサンプル数が存在しないことと,系外惑星検出サーベイの不完全さにより,惑星形成タイムスケールに制約を与えることは難しい.さらに,原始惑星系円盤からのミリメートル放射は小さいダスト (~ cm 未満) の質量のみをトレースしている という事実と,円盤の全質量の推定は未だに不明確であることから (Bergin & Williams 2018),この比較をより困難なものにしている.
円盤質量が小さい問題
ALMA 以前の原始惑星系円盤の質量のサーベイと,視線速度およびトランジットでの惑星探査サーベイの初期結果に基づくと,原始惑星系円盤の質量は検出されている巨大惑星の質量より一般に小さいことが分かっている.特に Greaves & Rice (2010),Williams (2012),Najita & Kenyon (2014) では,質量が測定されている円盤のごく一部だけが,観測されるガス惑星の大部分の質量を説明するのに十分な質量を持っているということが示されている.彼らは,惑星形成はこれらの円盤が観測された段階 (100 - 300 万歳程度) では未だ進行中であるということを提案している.
サンプルとデータ選定
系外惑星データ
系外惑星のデータは,exoplanet.eu から取得した.2018 年 7 月 10 日時点でのデータを使用している.惑星質量と恒星質量の依存性を解析するため,両者のデータが利用可能な惑星のみを抽出している.まず,抽出した各惑星系における個々の惑星質量を足し上げる.
系外惑星サーベイは依然として不完全であり,また惑星質量の測定に対して \(1/\sin i\) のファクターが存在する.そのため,この足し上げた質量は各惑星系での総質量の下限値に相当する.
ここで議論している系外惑星系の質量は,今後の検出で変更される可能性がある.
一方で系外惑星系の質量は,既知の惑星系内で新たに複数惑星が検出された場合は増加する.しかしこれの影響は,小さいかあるいは無視できる.これは,既に観測されている系で過去に検出されていなかった惑星は,同じ系内で既に発見されている惑星に比べて低質量だからである.
円盤質量データ
原始惑星系円盤の質量は ALMA の観測データを元にしている.100 - 300 万歳の年老いた Lupus and Chamaeleon I 星形成領域のデータを用いた.これは ALMA で集中的に研究されている最も若い星形成領域である (ANsdell et al. 2016,Pascucci et al. 2016).ミリメートル連続波の観測から,ダスト不透明度と温度に単一の値を仮定して,円盤のダスト質量を導出した.従ってこのような測定は,最大で ~ cm サイズの粒子のみに感度があることになる.
円盤ガスの輝線から示唆される円盤の総質量の推定には,依然として大きな不定性がある.そのため,ガス輝線のデータを用いる代わりに,円盤の総質量はダスト質量から推定を行った,ガスとダストの質量比を 100 と固定し,ダスト質量から円盤の総質量の推定を行っている.
また円盤質量と恒星の光度は,Gaia DR2 での視差から新たに算出された距離を用いてスケールし直している.
原始惑星系円盤が軽すぎるという問題
非効率な惑星形成モデルにおける問題点
今回得られた結果は,原始惑星系円盤は 100 - 300 万歳の段階で,惑星を形成するのに十分な質量を持っていない可能性があるという,深刻な問題を提示している.理論的な観点からは,微惑星と惑星形成を説明する全てのモデルは,非常に非効率的なプロセスに基づいている.例えばペブル降着のようなシナリオでは (Johansen et al. 2007など),ペブル流速の極小さい割合のみが,成長している惑星に捕獲される (Guillot et al. 2014参照).
もし,粒子サイズの分布を仮定して計算された円盤の総ダスト質量が,小さいダスト粒子とペブルの両方の質量を表していると考える場合,円盤ダスト質量は惑星系の重元素の最終質量よりも少なくとも一桁は大きい必要がある.
ここで示したように,系外惑星系に含まれている重元素は,中心星が太陽質量の恒星の場合は 2 - 3 木星質量程度,中心星が褐色矮星の場合は 0.02 木星質量 (6.4 地球質量) となる.
太陽系の場合,地球型惑星の質量,巨大惑星のコア,カイパーベルトとオールトの雲を足し合わせた,合計の重元素量は,130 地球質量,あるいは 0.4 木星質量と推定される (Guillot et al. 2014など).対照的に,100 - 300 万歳の原始惑星系円盤のダスト質量として測定された中で最も大きいものは,太陽質量の恒星周りでは 0.5 - 1 木星質量,褐色矮星まわりでは 0.01 木星質量 (3 地球質量) 程度である.
ここで示した大きな円盤質量は,観測された円盤のうちのごく一部であり,円盤の大部分はそれよりも一桁小さい質量を持っている.この比較から,惑星降着過程は既存の形成モデルが示唆するよりもずっと効率的であるか,あるいは他の形成シナリオが必要であるということが示される.
質量の不一致の原因に関する考察
観測バイアスの可能性
この質量の不一致を説明する素朴な可能性としては,現在の系外惑星のサーベイは重い惑星を発見しやすいというバイアスがかかっており,実際の系外惑星の集団の全体は我々が観測しているものよりもずっと低質量である,というものである.しかし,円盤サーベイは 100 - 300 万歳でまだ重いものだけをターゲットにしており,そして,例えば近赤外線で光学的に薄い,軽い円盤 (class III の天体) は含まれていないというバイアスがかかっている.そのためこれら 2 つのバイアスは相殺する.
ダスト質量の過小評価の可能性
その他の可能性としては,円盤のダスト質量が大きく過小評価されているというものが考えられる.円盤中のダスト質量のいくらかは,光学的に厚い円盤内側にとらわれることが示されている (Tripathi et al. 2017など).また円盤の不透明度と温度の値については議論が残されている.
また,ダスト成分の大部分が cm サイズかそれより大きなサイズに成長しているというのも,ありうる可能性である.大きなサイズのダスト成分は,ミリメートル波の観測では検出できない.
しかし,円盤質量が一桁以上も過小評価されてはいないと信じるに足るいくつかの理由も存在する.
例えば,もし円盤質量が非常に大きいと考えた場合,デブリ円盤のフェーズに遷移している非常に年老いた円盤を除いて,ガス・ダスト比が 100 よりずっと小さい事を意味する弱い CO 輝線の存在を説明することをさらに困難にする.
さらに,測定されている円盤質量・質量降着率は,円盤の粘性進化理論から予測される値と整合的であるが,円盤ダスト質量が大幅に過小評価されていると考えた場合はこの整合性と矛盾を来す.
円盤内でのダストのリサイクル
円盤内のダスト物質の効率的なリサイクルはこの矛盾を説明するのに十分ではないと考えられる.円盤内での物質のリサイクルが起きるというシナリオでは,内側へ移動したダスト物質がその後円盤の最も内側領域 (1 au 以内) に起源を持つ円盤風に運ばれ,外部円盤 (10 au 以遠) に再供給され,その後ダストは再び内側へ移動できる,と考えられている.
このシナリオは,観測されているカルシウム・アルミニウム豊富な内包物 (CAI) の存在を説明するために使われている.
しかしリサイクル効率が最も高い最良のケースのシナリオでも,惑星降着に利用可能な総質量は円盤のダスト質量が上限であり,観測されている惑星の重元素質量の合計よりも典型的に小さい.さらに,すべての円盤内の物質が再利用されるとは考えづらい.
質量の不一致を解決する仮説の提案
矛盾を説明しうる 2 つのシナリオとして,ここでは惑星コアの初期形成と,コンベアベルトとしての円盤というシナリオを提案する.惑星コアの早期形成
1 つ目は,惑星のコアは原始惑星系円盤進化の非常に初期段階に形成されたというものである.あるいは,円盤がまだ形成中の埋め込まれた時期に形成されたという可能性もある.このシナリオでは,惑星を形成する物質の大部分は円盤内で既に微惑星の形で存在していると考える.
ペブル降着では,微惑星が非常に初期の段階に形成されるというシナリオが提案されている.これは円盤が重く,重力的に不安定だった場合に起きうる (Booth & Clarke 2016).
しかし惑星コアの形成は非常に非効率的で,木星のコアを月質量の半分から 20 地球質量まで成長させるのには,350 地球質量程度のべブルが必要である (Morbidelli et al. 2016).従って円盤は 100 万歳以降の年齢で観測されている質量よりも,初期に 10 - 100 倍重い必要がある.このことも,円盤の大部分は初期に重力的に不安定である必要があることを示唆している.
このモデルの問題点は,もし初期の円盤質量が 100 万歳より年老いた円盤で観測されている質量よりも 10 - 100 倍重い場合,観測されている Class 0 アウトフローの存在と整合的であるためには,極めて効率的な円盤からのガス除去機構が存在する必要がある.
このシナリオは,木星の原始コアが非常に初期の段階で形成されているという最近の結果と一致する.また HL Tau の円盤で観測されている,惑星によって刻まれているかもしれないリング構造とも整合的である.
コンベアベルトとしての円盤
2 つ目は,原始惑星系円盤はコンベアベルトと同じ様に,物質を周囲から中心星へ向かって輸送している存在である,というシナリオである,このシナリオでは,円盤は周囲の星間物質から継続的に,あるいは変動性を持って供給していると考える.
供給されているガスと小さいダスト粒子は中心星へ降着し続ける.円盤内で惑星形成に使われなかった物質はそのまま中心星に降着するか,あるいは円盤風に乗って除去され,また部分的に再利用される可能性がある.
ただし,どの程度の恒星-円盤系が実際に周囲から物質を降着し続けているか,またこのプロセスが継続的か一時的なものかは不明である.
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