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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1509.05337
Sanchis-Ojeda et al. (2015)
A low stellar obliquity for WASP-47, a compact multiplanet system with a hot Jupiter and an ultra-short period planet
(ホットジュピターと超短周期の惑星を持つコンパクトな複数惑星系、WASP-47の小さい傾斜角)

概要

WASP-47系において、WASP-47bによるロシター効果 (Rossiter-Maclaughlin effect)を検出した
この系は現在知られている系外惑星系の中では唯一の、近接した惑星を持つホットジュピターがいる系である。

ケプラー宇宙望遠鏡での観測と今回の分光観測の結果を合わせて解析した結果、この恒星の自転軸と惑星の公転軸の傾きは、0° ± 24°であった
よって、WASP-47bが逆行惑星である可能性は明確に排除される。
また順行で大きく傾いた軌道を持つという可能性も排除できる。

このような小さな傾斜角は、他のコンパクトな複数惑星系でも見られる傾向である。
ケプラー56系における、2つのトランジット惑星がトランジットを起こしている中心星ケプラー56 (準巨星)では 45°の傾きがあることが分かっており、コンパクトな複数惑星系で大きな傾斜角を持っているという唯一の例外である。

従って、ケプラー56系という例外を除けば、コンパクトな複数惑星系ではほとんど傾斜角は小さい。

研究背景

これまでの複数惑星系での傾斜角観測

中心星に近接した惑星を持つ系では、傾斜角の値は広い範囲になり得る(Triaud et al. 2010, レビュー論文は Winn & Fabrycky 2015)。
ホットジュピターの形成や移動の理解に関して重要であり、惑星はそれらが形成された原始惑星系円盤の平面から大きくずれることがあり得る。

ロシター効果はこの傾斜角の観測に重要である。
ホットジュピターはサイズが大きく軌道周期も小さいため、ロシター効果の検出は容易である。
最近はその他の系、特にコンパクトな複数惑星系でもロシター効果の測定が可能になってきている。

惑星が小さく、トランジットの頻度も低い惑星系では、一般的にはロシター効果の測定は難しい。
しかし、ケプラー25、ケプラー89においてロシター効果が確認された(Hirano et al. 2012, Albrecht et al. 2013)。この2つの系では、共に傾斜角は小さい値を得た。

この傾向は、後に観測されたケプラー30でも見られた(Sanchis-Ojeda et al. 2012)。
この観測では、惑星が恒星の黒点を通過するイベントから、傾斜角への制限を与えている。
さらに、ケプラー50、ケプラー65においては、恒星のp-mode振動のrotational splittingから傾斜角を測定し、共に小さい値を得ている(Chaplin et al. 2013)。

これらの観測により、コンパクトな複数惑星系では傾斜角は小さく(Albrecht et al. 2013)、大きな傾斜角はホットジュピターに特有のものである可能性があると考えられてきた。

しかし、この暫定的な結論はケプラー56での観測により打ち砕かれることとなった。
この惑星系では、傾斜角は45°と大きな値を示した(Huber et al. 2013)。

WASP-47系

この系は、ホットジュピターがコンパクトな複数惑星系の一員になっている珍しい系である。

ホットジュピターは最初に発見され、軌道周期は 4.1日である(Hellier et al. 2012)。
その後、長期間の視線速度観測から、長周期の木星型惑星が検出された(Neveau-VanMalle et al. 2015)。
さらに最近は、ケプラー宇宙望遠鏡のK2ミッションから、公転周期 0.79日のスーパーアースと、公転周期 9日の海王星サイズの惑星が検出された(Becker et al. 2015)。

このような系は非常にレアであり、傾斜角の観測対象として興味深い。

(※参考
天文・宇宙物理関連メモ vol. 45 Becker et al. (2015) ホットジュピター近傍での惑星検出)

観測

WASP-47は、ケプラー宇宙望遠鏡のK2ミッションのCampaign 3の視野内に入っている。
そのため、ケプラー宇宙望遠鏡の測光データを利用している。

ロシター効果の観測には、Keck I telescopeのHIRES分光器を利用している。

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