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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1809.10744
Caballero et al. (2018)
Studying the solar system with the International Pulsar Timing Array
(国際パルサータイミングアレイを用いた太陽系の研究)

概要

パルサータイミング解析に用いるタイミングモデルは,全ての記録されるパルス到着時間が参照される準慣性系である太陽系の重心の位置を推定するために使用する,太陽系の天体暦の誤差に敏感である.太陽系の天体暦におけるあらゆる誤差は全てのパルサーに影響するため,パルサータイミングアレイ (pulsar timing arrays, PTAs) はその様な誤差を探査する手段として適している.また天体暦に関連する物理パラメータへの独立した制約を課すことも出来る.

ここでは,International Pulsar Timing Array (国際パルサータイミングアレイ) の最初のデータリリースを使用し,太陽系の惑星-衛星系の質量に制約を与えた,また,太陽系内のモデル化されていない天体 (仮説上の天体) の探査にも用いた.


2 つの独立した研究グループによる 10 個の太陽系の天体歴を使用して惑星系の質量への制約を導出し,それぞれを比較した.また,小惑星帯の天体に対する初めての PTA による質量の制約与えた.

惑星系の質量に対する制約は,同じ推定を用いた過去の結果よりもファクターで 20 程度改善した,
木星系の質量を 9.5479189 × 10-4 太陽質量.準惑星ケレスの質量を 4.7 × 1010 太陽質量と推定した.

また,モデル化されていない天体の質量に対する全体的な限界を与える,実際のデータを用いた初めての感度曲線を提供する.これは,仮説上のエキゾチック天体の質量の上限値として用いることができる.例えば,ダークマターのクランプ質量に対する上限値は,これとは独立した手法を用いて推定された上限値と同程度である.

全ての太陽系天体暦を用いて導出された惑星質量に対する制約は整合的であるが,関連するタイミングの残差とモデル化されていない天体の感度曲線における違いについて注目し議論を行った.

背景

パルサーとパルサータイミング

ミリ秒パルサー (millisecond pulsars, MSPs) は,観測可能な宇宙内でこれまでに知られている中で最も安定な回転体である.

パルサータイミングは,パルスの到達時間 (times-of-arrival, TOAs) を記録し,洗練されたモデルを使用して,観測者を原点とした TOA,あるいは場所の到達時刻をパルサーと共動する基準座標系でのパルス放出時間に変換する強力な手段である.タイミングの残差を調べることによって,つまり観測された TOA と理論モデルが予測する TOA の違いを調べることによって,タイミングモデル中に考慮されていない情報を捉えることができる.

パルサータイミングアレイ

MSPs のパルスのタイミングを観測することで,パルサータイミングアレイ (pulsar timing arrays, PTAs) として利用することが出来る.

PTA 研究の主要な科学的目標は,低周波の重力波の直接検出である.これには,nHz 周波数での,確率的 (stochastic) な重力波背景の検出を含む.

PTAs としてが,現在 3 つのコラボレーションが稼動している.European Pulsar Timing Array (EPTA,Desvignes et al. 2016),North-American Nanohertz Observatory for Gravitational Waves (NANOGrav,Arzoumanian et al. 2015),Parkes Pulsar Timing Array (PPTA,Reardon et al. 2016) である.またこれらのコラボレーションは,International Pulsar Timing Array コンソーシアム (IPTA,Verbiest et al. 2016) の元で恊働している.

パルサータイミングアレイを用いた太陽系探査

タイミングモデルには,パルサーの自転,位置天文,軌道パラメータが含まれており,パルスシグナル伝播が星間物質によって時間遅延する影響も考慮されている.しかし実際に重力波背景の探査を妨害する可能性が最も高い,TOA 内に相関したシグナルを混入する可能性があるのは,観測場所での到達時刻を太陽系重心での到達時刻に変換する時である.時計と太陽系天体暦の間に誤差が存在することは,PTAs による重力波の誤検出確率を上昇させる.

パルサータイミングに使用する太陽系天体暦は,既知の太陽系天体の運動方程式の数値積分によって構築される.これらの積分は,望遠鏡による観測,電波とレーザーでの測距,惑星とその衛星を周回する宇宙機からの豊富な観測データを反映したものになる.このようなインプットデータは,惑星やその他の重要な太陽系天体の質量の推定を含んでいる.

観測的には,天体の質量そのものではなく,天体質量と万有引力定数をかけた重力パラメータ \(GM\) が決定されることになる.このパラメータは,万有引力定数そのものよりも高い精度で決定することが出来る.

この事実は,SI 単位系における天体質量の測定精度を制限することになる.これが理由で,惑星などの太陽系天体の質量は,各天体の重力パラメータと,太陽の重力パラメータ \(GM_{\odot}\) (heliocentriv gravitational constant,日心重力定数) との比として表されることになる.


時間の経過とともに新しいデータが追加されていくため,より新しい太陽系天体暦は,より良い精度のデータと観測サンプリングに依存することになる.このプロセスは,地球-月系に対する惑星系の位置に関する正確な予測を提供するが,天体質量は初期値として使用するものよりも遥かに良いものへと制約することは出来ない.これは,太陽のパラメータに対する惑星系の重力パラメータの比が,数値積分の最中に固定されているという事実に反映される.

基準惑星質量に関する太陽系天体暦のバージョン間の変化は,惑星系の初期質量値,例えば宇宙機フライバイによる新しい質量推定の後,および/または,太陽系天体暦におけるフィットされたパラメータであり得る,太陽重力パラメータの推定値である.従ってインプットする惑星質量は,原理的には様々な太陽系天体暦のバージョン間で異なるもになる.

これを念頭に置いて,過去の Champion et al. (2010) では,惑星系の質量の誤差を,パルサータイミングデータが識別できる最も可能性の高い誤差として調査した.ここではその過去の研究を拡張し,IPTA のデータを用いた.様々な惑星系の質量推定に加え,最も重い部類の小惑星帯天体の質量の PTA データを用いた初めての制約を与えた.また,存在する可能性のあるモデル化されていない天体の探査を行った.

結果

太陽系の惑星や,小惑星帯の天体の質量への上限値を与えた.

この手法は既知の天体の質量を制約するだけではなく,太陽系の重心を公転するあらゆる種類の重い天体の質量の上限値を与えることが出来る.例えば,ダークマターのクランプや宇宙ひもなどである.

太陽系の重心から 2 AU (PTAs での感度が最大になる場所) よりも遠方では,1.2 × 10-11 太陽質量のダークマタークランプが存在する可能性を否定した.土星軌道まで (9.6 AU) の距離では,ダークマタークランプの質量の上限値は 4 × 10-10 - 2 × 10-9 太陽質量と推定された.値の違いは,使用した太陽系天体暦の違いに依存している.

異なるデータと手法を用いて独立に推定したデータと比較すると,Pitjev & Pitjeva (2013) と Pitjeva & Pitjev (2013) では,土星軌道を半径として太陽を中心とする球内に存在するダークマター質量の上限値として 1.7 × 10-10 太陽質量という値を与えている.この過去の推定は,惑星間空間でのダークマター分布による加速による惑星の軌道運動への擾乱を調べた結果得られたものである.

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