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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1812.02453
Salz et al. (2018)
Detection of He I λ10830 Å absorption on HD 189733 b with CARMENES high-resolution transmission spectroscopy
(CARMENES 高分散透過光分光による HD 189733b でのヘリウム I 10830 Å 吸収の検出)

概要

Calar Alto の CARMENES 高分散分光器を用いて,HD 189733b のトランジットを 3 回観測した.その結果,近赤外線でのヘリウム I 三重項 10830 Å での強い吸収シグナルを検出した

トランジットを起こしている最中の平均吸収レベルは 0.88 % であり,この観測での測定範囲は ± 10 km s-1 の波長域である.また合計の青方偏移の大きさは -3.5 km s-1 である.
トランジットの ingress (入り) と egress (出現) の最中での吸収シグナルの視線速度は,それぞれ +6.5 と -12.6 km s-1 であった.これらの視線速度は全て惑星静止座標系で測定した場合の速度である.

解析の結果,恒星活動に関連する疑似シグナルが,惑星大気吸収シグナルに干渉することを示す.恒星活動による擬似シグナルは,観測されたシグナルの内最大で 80% に寄与しており,観測された視線速度の特徴にも影響を与えるが,疑似シグナルによって観測されたシグナルの全てを説明できる可能性は非常に低い.

観測された線比 (分解されていない 2 つの線とヘリウム I 三重項の三番目の線との比) は 2.8 で,光学的に薄い大気に対して期待される値とは大きく離れている.これを惑星大気による吸収だと解釈する場合,わずか 0.2 惑星半径の広がりしか持たないコンパクトなヘリウム大気であることを示しており,その柱密度は 4 × 1012 cm-2 である.

観測された大気の視線速度は,赤道スーパーローテーションにともなう大気循環か,惑星から散逸する物質の非対称大気成分の兆候のどちらとも解釈できる.またトランジット前や後での吸収の特徴のような,物質が惑星のロッシュローブを超えて存在していたり,吸収の視線速度が脱出速度を超えているなど,大気蒸発が進行中であることを示す明確な特徴は検出されなかった.

ただし上記の発見は惑星の大気蒸発が起きている事とは矛盾しない.しかし今回の HD 189733b でのヘリウム吸収の検出は,明確な惑星からの大気散逸の特徴を示すような大気層をトレースしていないだけだと言うことを示している.

大気の散逸

可視光と紫外線での観測

系外惑星の広がった水素大気は,KELT-9b において可視光波長 (Hα 線) で検出が報告されている (Yan & Henning 2018).
その他には,紫外線波長 (ライマンアルファ線など) でも検出が報告されており,HD 209458b,HD 189733b,WASP-12b,GJ 436b で紫外線による広がった水素大気の存在が報告されている.ライマンアルファ線での観測は宇宙空間の観測装置でしか行うことが出来ず,またさらに重要なことは,星間物質がライマンアルファ線のスペクトルのコア部分を吸収してしまうという問題がある.これは,最も近い部類の恒星に対しても起きる問題である.そのためライマンアルファ線の吸収シグナルは,10 km s-1 周辺のものは全て抑えられてしまう.

ヘリウムの赤外線波長での観測

ヘリウム I の 10830 Å 波長の観測の重要性を初めて強調したのは Seager & Sasselov (2000) である.その後 Oklopcˇic ́ & Hirata (2018) では,一次元大気モデルを使って散逸する大気のヘリウム観測について調べられた.

実際の観測では,WASP-107b でハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測で大気中のヘリウム吸収の検出が報告されている (Spake et al. 2018).その他,WASP-69b でも CARMENES を用いた観測で吸収が検出されている (Nortmann et al. 2018).

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