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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1901.05018
Kennedy et al. (2019)
A circumbinary protoplanetary disc in a polar configuration
(極配置にある周連星原始惑星系円盤)

概要

これまでにトランジット法で発見されている周連星惑星は,連星の軌道面によく沿った軌道を持っている.軌道面が揃っていない周連星惑星が存在する可能性はあるが,それらは検出が難しいためまだ発見されていない.

惑星を形成するためのダストが豊富な円盤はほとんど全ての若い恒星の周りに存在するが,軌道面が揃っていない惑星を形成し得る周連星円盤の存在はこれまでに知られていなかった.
ここでは HD 98800 系における,他の惑星形成円盤と似た特性を持った,しかし大きく傾いた周連星円盤の発見を報告する.

連星からのトルクはこの円盤を安定した極配置の状態に留めている.今回の発見は,この配置にある不揃いの周連星円盤が存在し,軌道面が不揃いの惑星を形成するのに十分長い時間生き残ることができるという初めての証拠である.極軌道における惑星の存在は,周連星惑星の存在頻度は単独星よりも高いことを意味する可能性がある.

背景

これまでに,11 個の周連星惑星が 9 つの食連星系にトランジット法を用いて発見されている.これらの惑星の軌道長半径は 0.08 - 0.23 au の範囲にある.

周連星惑星の発見における最も強い観測バイアスは,惑星の軌道平面が連星の軌道平面に近く揃っていないと,発見するのが非常に困難という点である.このようなバイアスが存在するにも関わらず,揃った軌道面を持った周連星惑星の存在頻度は,単独星周りの類似した惑星の存在頻度と同等であることが分かっている.ただし周連星惑星自体の発見数が少ないため不定性は大きい.
もし,これまでに発見されていない軌道面が不揃いの惑星も存在する場合,周連星惑星の形成は単独星周りでの惑星形成よりも容易である可能性がある..

HD 98800 系について

ここでは HD 98800 系の観測について報告する.この恒星はよく知られた階層的な四重星系であり,44.9 pc の距離にある.年齢が ~ 1000 万歳の TW Hydrae アソシエーションの一員である.

HD 98800A と B,あるいは HD 98800AaAb と BaBb の 2 つの連星ペアが各々 1 au 程度の軌道長半径で存在しており,2 つの連星ペアの軌道長半径は 54 au である.
HD 98800BaBb の連星はよく特徴づけされており,軌道離心率は 0.785 である.今回の観測でのデータを用いると,HD 98800A と B の軌道は軌道離心率 0.52,軌道周期は 246 年である.
HD 98800AaAb ペアの特性は確かではないが,その詳細は今回の結果には影響を与えない.

HD 98800 BaBb ペアが明るい周連星円盤を持つことは 1980 年代の発見以降知られていた.この円盤は恒星系に影響されていると考えられており,円盤内縁は BaBb 連星によって切り取られている.また円盤外縁は HD 98800A によって外から切り取られている.

円盤は当初は内側の連星と同一平面に存在すると思われていたが,高分解の観測では異なる配置にある可能性が示唆されていた.また円盤が大量のガスを持っているかどうかは不明であり,ガスが豊富な「惑星形成」円盤か,ガスが欠乏した「デブリ」円盤のどちらでもあり得ると解釈されてきた.
この系で酸素が検出されたこと,また HD 98800B で水素分子からの放射が観測されたことから,このペアはガスが豊富な円盤からの降着を受けていることが示唆されており,前者の解釈が支持されている.

観測結果

この系を ALMA の 230 GHz (1.3 mm) で観測した.一酸化炭素の J = 2-1 の回転遷移とダスト連続波であり,どちらも強く検出された.

ダストと一酸化炭素の内縁はそれぞれ 2.5 au と 1.6 au と推定され,また外側円盤は 4.6 au と 6.4 au と推定される.ダストと一酸化炭素は同じ配置であることと整合的である.
天球に対する角度は 26° か 154°,であり,誤差は ±1°.154° のケースは,極配置 (BaBb の軌道面と BaBb の近点方向のどちらにも垂直) からわずか 4° 離れた配置である.26° のケースは連星の軌道面から 48° 離れた配置 (ここではややずれたケースと呼称).計算から,このような配置での円盤は安定に存在しうると推定される.

連星軌道面とずれた原始惑星系円盤の形成メカニズム

シミュレーションからは,このような結果は星形成のカオス的な振る舞いの自然な帰結である可能性が示唆される.一つの可能性は,元々別々だった 2 つの連星系が重力的に結びつき,その過程で BaBb の円盤がずれたというものである.またその過程で,A の周りの円盤を破壊したかも知れない.

しかしシミュレーションは,ある範囲の角運動量を持った分子雲物質からの形成は,単独系であっても不揃いの円盤を形成する可能性があり,またそのような系は実際に観測されている.そのため不揃いの周連星円盤を形成するためには必ずしも外部天体が必要とは限らない.

今回の結果は,周連星惑星はこれまでに思われていたよりも一般的であることを示唆している.
円盤が連星軌道面に初期にランダムに配置されていたと仮定し,また円盤は連星の軌道に影響しない程度に軽いとし,連星の軌道離心率が 0.8 まで一様に分布しているとすると,およそ 45% の円盤が極配置に進化する.

最も離心率が高い連星の周りの周連星円盤は極配置になりやすいことが分かった.これまでに知られているトランジットする周連星惑星は,連星の離心率が 0.52 以下のものばかりであり,また 8/9 は 0.22 未満であるということと整合的な結果である.
ここでのポピュレーション推定はシンプルなものであるが,極円盤と惑星は週連星円盤形成の一般的な結果であることを示している.

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