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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1902.06004
Díaz et al. (2019)
The SOPHIE search for northern extrasolar planets. XIV. A temperate (Teq∼300 K) super-earth around the nearby star Gliese 411
(北天の系外惑星の SOPHIE による探査 XIV.近傍星グリーゼ411 まわりの温暖な (平衡温度 ~ 300 K) スーパーアース)

概要

SOPHIE 分光器を用いた分光観測で,近傍の M 型星グリーゼ411 での周期的な視線速度の変動が報告された.
現在のデータでは 12.95 日周期とその 1 日のエイリアスである 1.08 日周期を区別することは出来ないが,前者の解がわずかに好ましい.測定された視線速度の振幅は 1.6 m s-1 であり,SOPHIE で検出された中では現在のところ最も低振幅のシグナルである.

このシグナルの有意性と,その起源の詳細な解析を行った.この解析は,恒星活動によって誘起されるシグナルによる非相関・相関ノイズの広範のシミュレーションを含む.

その結果,シグナルは有意に検出され,全ての試験の結果はこのシグナルが惑星起源であることを示した.さらに,視線速度の時系列におけるさらなる変動が存在することが現在のデータから示唆される.

一方で,この恒星に対してこれまでに HIRES を用いて報告されていた 9.9 日周期のシグナルは,SOPHIE のデータ中では発見されなかった.HIRES のデータセットの独立した再解析でもこの周期を発見することに失敗した.


もし 12.95 日周期が実際のものであるとすると,SOPHIE で検出されたシグナルの振幅は,惑星グリーゼ411b が存在することを示唆する.惑星の最小質量はおよそ 3 地球質量,軌道長半径は 0.079 AU である.

惑星は地球のおよそ 3.5 倍の日射を受けており,平衡温度は 255-350 K である.そのためハビタブルゾーンには高温すぎる.この惑星系は地球からの距離がわずか 2.5 pc であり,これまでに発見された低質量の惑星の中では 3 番目に近い.地球に近いことから,次の十年の高コントラストの撮像と高分散分光によって大気を探査できるだろう.

グリーゼ411について

グリーゼ411 (Gl411, Gliese 411, Lalande 21185, HD 95735) は,最も明るい M 型星のひとつである.そのためこれまでにも多数の観測が行われてきた.

アストロメトリ観測では,van de Kamp & Lippincott (1951) によって,離心軌道にある 1.14 年周期の伴星の存在が報告された.この時推定された伴星の最小質量は 0.03 太陽質量であった.この結果は後に Lippincott (1960) で修正され,8 年周期で最小質量は 0.01 太陽質量とされ,これは 10 木星質量程度に相当する.

さらに最近では,Gatewood (1996) でアストロメトリ観測から 5.8 年周期のシグナルの検出が報告された.この観測では惑星は 0.9 木星質量と示唆された.

ただしこれらの惑星の検出は,現在までに確認されていない.

また HIRES 分光器を用いた視線速度の観測では,Butler et al. (2017) が 9.9 日周期の周期シグナルを検出しており,最小質量が 3.8 地球質量の惑星の存在を報告している.

パラメータ

グリーゼ411
スペクトル型:M1.9
距離:2.5468 pc
有効温度:3563 K
自転周期:56.15 日
質量:0.386 太陽質量
半径:0.389 太陽半径
光度:0.0220 太陽光度
グリーゼ411b
軌道周期:12.9532 日
軌道離心率:0.22
最小質量:2.99 地球質量
軌道長半径:0.0785 AU
平衡温度:349.83 K (アルベド0.3) - 255.77 K (アルベド0.8)

過去の惑星検出の主張との比較

van de Kamp & Lippincott (1951) および Lippincott (1960)

SOPHIE の視線速度観測では,van de Kamp & Lippincott (1951) および Lippincott (1960) での伴星・惑星の存在主張は否定される.それぞれ 1 km s-1 と 265 m s-1 の振幅のシグナルが視線速度に見られるはずであるが,この大きさの変動は検出されていない.

Gatewood (1996)

Gatewood (1996) での主張では惑星の傾斜角の情報が不明だが,45° という値を仮定すると,視線速度変動の振幅が 18.5 m s-1,周期 5.8 年が見られるはずであるが,このような変動は見られなかった

Butler et al. (2017)

Butler et al. (2017) は,9.8693 日周期で 3.8 地球質量相当のシグナルを HIRES で検出したと報告している.しかしこのシグナルは,SOPHIE では検出可能な水準にもかかわらず発見されなかった.また,HIRES の参照可能なデータの再解析でも発見できなかった.

これは過去の解析手法の違いによるものである可能性がある.結果の差異に関する詳細な調査が将来的に必要である.

注意点として,HIRES データの窓関数は,Butler et al. (2017) で報告されている仮説上の惑星の軌道周波数に一致するピークを含んでいる.これは最も重要な窓関数のピークからは大きく離れているものの,Rajpaul et al. (2015) によるアルファ・ケンタウリB の観測・解析結果を考慮すると,報告されたシグナルの性質には疑問を投げかける必要がある.特に,解析を行う前にデータから差し引かれている永年加速度のような低周波数の項を視線速度が含むことが分かっている場合はその必要性がある.

結論

SOPHIE の長期間にわたる観測により,グリーゼ411 の周囲に 2.99 地球質量の惑星グリーゼ411b が 12.95 日周期で存在することが判明した

視線速度変動には 1.08 日周期のエイリアスも有意に見られたが,これが実際の周期性かどうかの結論は現在のデータでは不明である.しかし低質量星周りでの非常に短周期の惑星の存在頻度は,10 日周期のスーパーアース惑星のものよりもずっと低いことが分かっている (Sanchis-Ojeda et al. 2014,Bonfils et al. 2013).このことも,現実のシグナルは 12.9 日周期のものだということを補強する.
いずれにせよ,さらなる高頻度の観測がこの周期をより詳細に区別するのに役立つだろう.

発見された惑星は,スペクトル型 M2 の主星から 0.079 AU の距離を公転している.ハビタブルゾーンの内縁より内側を公転しているため,表面に液体の水を持てないだろう.

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