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arXiv:1903.01591
Chontos et al. (2019)
The Curious Case of KOI 4: Confirming Kepler's First Exoplanet
(KOI 4 の興味深い事例:ケプラーの最初の系外惑星の確認)

概要

ケプラーによる数千もの惑星系の発見は,惑星は普遍的な存在であることを示した.しかしケプラーの惑星候補の確認作業は大きな障壁であり,検出された多くの惑星候補は確認を待っている状態にある.

これらの中で最も奇妙な例のひとつが KOI 4.01 で,これはケプラーが初めて検出した惑星候補であった.なお,1-3 番目にあたる KOI 1.01,KOI 2.01,KOI 3.01 はケプラー打ち上げの前から存在が知られている系外惑星であった.

ここでは,この KOI 4.01 の確認と特徴付けを行った.KOI 4.01 が惑星であると確認された後に与えられた名称はケプラー1658b である.惑星の確認には,星震学と視線速度測定が用いられた.

ケプラー1658 は重く進化した準巨星であり,重いホットジュピターケプラー1658b を持つ.軌道周期は 3.85 日である.
この系は短周期 (100 日以下) の惑星を持つ進化した段階の恒星という数少ないサンプルのひとつであり,この惑星は軌道周期という観点から見ると,これまでに知られている中で進化した恒星に最も近い惑星である.

この系の独特さと短い軌道周期という性質から,ケプラー1658 は潮汐散逸とホットジュピター形成理論を検証するための新しいベンチマークとなる.

ケプラーの 4 年間の全ての観測データを用い,惑星の軌道崩壊率を \(\dot{P}\leq -0.42 {\rm s\,yr^{-1}}\) と制約した.またこの値から,潮汐の Q 値に強い制限を与えた.Q 値の下限値は (\(Q’_{*} \geq 4.826\times10^{3}\)) である.

中心星の有効温度は 6200 K 程度であり,spin-orbit misalignment の境界の 6250 K に近い.そのため,惑星の軌道傾斜角を制約するフォローアップ観測を行う良い対象であり,ホットジュピターの形成と移動の理論への洞察を与えるだろう.

ケプラーが初めて発見した系外惑星候補の経緯

ケプラーが 2009 年 3 月に打ち上げられた段階で,ケプラーの観測視野内には地上観測を元にして 3 つの系外惑星の存在が既に知られていた.これらのターゲットには 3 つの KOI (Kepler Object of Interest) 番号が割り振られた.そのため,KOI 4 に付随する KOI 4.01 がケプラーによって初めて検出された惑星候補となる.

Kepler Input Catalog (KIC) での KOI 4 のデータは,1.1 太陽半径の主系列星で有効温度は 6240 K とされていた.検出されたトランジット深さは 0.13% で,海王星サイズの惑星が公転していることを示唆していた.しかし深い二次食が観測されたため,KOI 4.01 は初期のケプラー KOI カタログ中では偽陽性と判断された.これは,主系列星を公転する海王星サイズの惑星の場合は二次食は小さすぎて観測できないとされたからである.

NASA Exoplanet Archive には,ケプラーの初めての系外惑星候補の複雑な経緯がより詳細に記録されている.

KOI 4.01 は最初の KOI カタログには惑星候補としては掲載されていなかったが,第二版のカタログには ‘moderate probability candidate’ として掲載され,中心星は高速自転星であることも付記された.第三版でも惑星候補として掲載されていたが,第四版では再び偽陽性に戻されていた.これは深い二次食が検出された影響と思われる.

第五版と第六版のカタログでは,特定のパラメータ空間内に KOI を配置しなかった.第七版のカタログは Robovetter パイプラインを用いた初めての完全に一様なカタログであり,過去に偽陽性とされた 237 個の KOI が,更新された恒星のパラメータを用いて惑星候補に戻された.この中には KOI 4 も含まれている,最後の版のカタログでも,Robovetter はこの系を惑星候補としている.

現在に至るまで,ケプラーが初めて発見した惑星候補は,本当の惑星検出だと確認されるのを待っている状態であった.

パラメータ

ケプラー1658
有効温度:6126 K
金属量:[m/H] = -0.18
質量:1.447 太陽質量
半径:2.891 太陽半径
ケプラー1658b
軌道周期:3.8494 日
軌道長半径:0.0546 AU
半径:1.04 木星半径
軌道離心率:0.0585
質量:5.88 木星質量
密度:7.00 g cm-3

結論

・ケプラー1658 は準巨星で,有効温度 6216 K,2.89 太陽半径,1.45 太陽質量である.準巨星であるため,現在恒星進化の急速な段階にある.同様の進化状態にある恒星で系外惑星を持っているのは,この天体を含めて 9 個のみである (統計的に実証された惑星 15 個を含む).

・ケプラー1658b はホットジュピターであり,1.07 木星半径,5.73 木星質量,軌道周期は 3.85 日である.進化した恒星 (2.5 太陽半径以上,\(\log g \lesssim 3.7\)) を短周期 (100 日以下,0.5 AU 以下) で公転する数少ない惑星のひとつである.軌道距離はわずか 0.05 AU であり,この惑星は進化した恒星の周りの惑星としては最も中心星に近い.離心率がやや大きいという暫定的な証拠を検出した (e = 0.06 ± 0.02).これは,潮汐進化の研究では進化した恒星の周りの短周期惑星はやや軌道離心率を持つことが示唆されていることと整合的である.

・ケプラーによる 4 年間の観測によるトランジット時刻から,軌道崩壊率に強い上限値を与えた.軌道崩壊率は -0.42 秒/年 以下である.これより潮汐の Q 値に 4.826 × 103 以上という制約を与えた.この測定結果は,準巨星の潮汐の Q 値の初めての観測的な制約であり,過去に理論的に示唆されてきた 2 桁程度の Q 値を否定するものである.

・恒星の有効温度は 6250 K の spin-orbit misalignment の境界に近い.自転周期,射影した自転速度 \( v \sin i\) と恒星半径の組み合わせからは,惑星の傾斜角は大きいという暫定的な結論しか得られていない (16.50° - 163.50°).恒星の自転軸と惑星の公転軸の角度の測定は,将来的なロシター効果の分光観測が必要である.

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