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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1903.04817
Szabó & Kálmán (2019)
The sub-Jovian desert of exoplanets: parameter dependent boundaries and implications on planet formation
(系外惑星のサブジュピター砂漠:パラメータ依存する境界と惑星形成への示唆)
ここでは,この砂漠領域の軌道周期の境界は,恒星のパラメータ (重要な順に,有効温度,金属量,表面重力) に依存することを示す.恒星からの入射量には決定的な依存性があり,また恒星質量への依存性は恒星の有効温度が 5600 K 未満のまわりの惑星にのみ働く.
中心星に最も近接した軌道での非常に膨張した惑星には著しい欠乏があることも発見した.
なお,惑星に現在働いている潮汐力,惑星の表面重力,あるいは現在のロッシュローブの充填率への明確な依存性は見られなかった.これらの分布は,砂漠の形成には光蒸発が主要な役割を果たすというモデルと整合的である.
軌道周期,惑星半径と質量,中心星の有効温度が分かっている系外惑星に絞った結果,607 個の惑星を抽出した.このうち 550 個の惑星では中心星の金属量 [M/H] が測定されており,406 個は恒星質量と軌道長半径が分かっている.
これらのサンプルにおいて,恒星の有効温度,恒星質量,恒星の \(\log g\),金属量 [M/H],惑星の平衡温度,惑星の平均密度の木星に対する比,ロッシュローブの充填率,現在の惑星への潮汐力をスケールする因子 \(M_{*}/a_{\rm p}^{3}\) の比較を行った.サンプルをおおむねパラメータの中央値付近で分け,惑星の周期分布を低い値・高い値と比較した.定量的に評価するため,コルモゴロフ・スミルノフ検定 (K-S 検定) を行って 2 つのサンプルが異なる分布かどうかを判定した.
有効温度が 5600 K より低温な恒星を公転する惑星の 60% 以上は 10 日よりも短い周期を持つが,5600 K 以上では 10% のみであった.この影響は砂漠の境界のみに位置しており,より小さい惑星では周期分布に違いは見られなかった (p=0.6).
短周期の惑星は発見しやすいため,10 日の軌道周期未満の惑星が欠乏していることに関しては,sub-Jupiter desert の境界の周期に恒星の有効温度が影響を与えている以外の説明は考えづらい.
高金属量のグループでは,75% の惑星が軌道周期 10-11 日未満であったが,低金属量のグループでは 20% 未満であった.しかし,より小さい惑星ではこのような相関は見られなかった (p=0.3).
この相関は Dong et al. (2017) と Petigura et al. (2018) でも発見されており,金属量依存性を持つ惑星の光蒸発 (Owen & Lai 2018) とも整合的である.
最も大きな違いは,軌道周期 10 日程度のところに見られる.10 日より短い軌道周期を持つ惑星の割合は,低い \(\log g\) のグループでは 10% であったのに対し,高い \(\log g\) では 60% であった.
しかし,組み合わせたパラメータ依存性は幾分か縮退している.
砂漠の深い領域に存在できる惑星 (つまり最小軌道周期境界が低い) は,中心星が低温で高い \(\log g\) を持つ.しかし主系列では,低い有効温度を持つ恒星は高い \(\log g\) を持つ性質がある (Gazzano et al. 2013など).そのため有効温度と \(\log g\) へのパラメータ依存性はお互いを説明可能である.
周期の境界の \(\log g\) への依存性が温度への依存性の結果であるか,あるいは元々存在している相関を強化する力学的な過程と関連しているかどうかは不明である.
より重い恒星周りの惑星の最小周期は小さくなり,砂漠領域の深いところまで入り込むことができることを意味する.
この発見は有効温度への依存性の結果と矛盾するように見える.そのためサンプルを有効温度 5600 K で分割した.低温の恒星の場合,恒星質量は選択性があると認識される (p=0.07).しかし 5600 K より高温の恒星では,この依存性は完全に消失する.
そのため,恒星質量は砂漠の境界に対して恒星の有効温度が 5600 K 未満の場合にのみ影響を及ぼすと結論付けた.
arXiv:1903.04817
Szabó & Kálmán (2019)
The sub-Jovian desert of exoplanets: parameter dependent boundaries and implications on planet formation
(系外惑星のサブジュピター砂漠:パラメータ依存する境界と惑星形成への示唆)
概要
系外惑星の軌道周期-質量分布と軌道周期-半径分布には,惑星の存在個数が少ない「砂漠」領域が存在することが知られている.非常に高温な (軌道周期 3 日未満) スーパーアースとホットジュピターの存在がよく知られているのとは異なり,1-2 日程度の短周期軌道にあるスーパーアースとサブジュピターの間の惑星は知られていない.ここでは,この砂漠領域の軌道周期の境界は,恒星のパラメータ (重要な順に,有効温度,金属量,表面重力) に依存することを示す.恒星からの入射量には決定的な依存性があり,また恒星質量への依存性は恒星の有効温度が 5600 K 未満のまわりの惑星にのみ働く.
中心星に最も近接した軌道での非常に膨張した惑星には著しい欠乏があることも発見した.
なお,惑星に現在働いている潮汐力,惑星の表面重力,あるいは現在のロッシュローブの充填率への明確な依存性は見られなかった.これらの分布は,砂漠の形成には光蒸発が主要な役割を果たすというモデルと整合的である.
解析手法
砂漠領域の境界に近い惑星の存在頻度について調査を行った.軌道周期,惑星半径と質量,中心星の有効温度が分かっている系外惑星に絞った結果,607 個の惑星を抽出した.このうち 550 個の惑星では中心星の金属量 [M/H] が測定されており,406 個は恒星質量と軌道長半径が分かっている.
これらのサンプルにおいて,恒星の有効温度,恒星質量,恒星の \(\log g\),金属量 [M/H],惑星の平衡温度,惑星の平均密度の木星に対する比,ロッシュローブの充填率,現在の惑星への潮汐力をスケールする因子 \(M_{*}/a_{\rm p}^{3}\) の比較を行った.サンプルをおおむねパラメータの中央値付近で分け,惑星の周期分布を低い値・高い値と比較した.定量的に評価するため,コルモゴロフ・スミルノフ検定 (K-S 検定) を行って 2 つのサンプルが異なる分布かどうかを判定した.
結果
恒星の温度への依存性
砂漠の境界は,恒星の有効温度に最も強く依存する.K-S 検定の値は p=0.0002 である.各分布の中央値で,中心星の温度が低い方/高い方で軌道周期の値は 9 日と 21 日である.有効温度が 5600 K より低温な恒星を公転する惑星の 60% 以上は 10 日よりも短い周期を持つが,5600 K 以上では 10% のみであった.この影響は砂漠の境界のみに位置しており,より小さい惑星では周期分布に違いは見られなかった (p=0.6).
短周期の惑星は発見しやすいため,10 日の軌道周期未満の惑星が欠乏していることに関しては,sub-Jupiter desert の境界の周期に恒星の有効温度が影響を与えている以外の説明は考えづらい.
金属量への依存性
2 番目に重要な依存性は中心星の金属量である.金属量 [M/H] = 0.05 の中央値で 2 つのグループに分割することが出来る.高金属量のグループでは,75% の惑星が軌道周期 10-11 日未満であったが,低金属量のグループでは 20% 未満であった.しかし,より小さい惑星ではこのような相関は見られなかった (p=0.3).
この相関は Dong et al. (2017) と Petigura et al. (2018) でも発見されており,金属量依存性を持つ惑星の光蒸発 (Owen & Lai 2018) とも整合的である.
恒星の表面重力への依存性
恒星の表面重力 \(\log g\) への依存性も見られる.高い \(\log g\) の恒星を公転している惑星の場合は,砂漠の深い領域に存在できる.最も大きな違いは,軌道周期 10 日程度のところに見られる.10 日より短い軌道周期を持つ惑星の割合は,低い \(\log g\) のグループでは 10% であったのに対し,高い \(\log g\) では 60% であった.
しかし,組み合わせたパラメータ依存性は幾分か縮退している.
砂漠の深い領域に存在できる惑星 (つまり最小軌道周期境界が低い) は,中心星が低温で高い \(\log g\) を持つ.しかし主系列では,低い有効温度を持つ恒星は高い \(\log g\) を持つ性質がある (Gazzano et al. 2013など).そのため有効温度と \(\log g\) へのパラメータ依存性はお互いを説明可能である.
周期の境界の \(\log g\) への依存性が温度への依存性の結果であるか,あるいは元々存在している相関を強化する力学的な過程と関連しているかどうかは不明である.
中心星質量への依存性
周期の境界の恒星質量への依存性は p=0.11 である.より重い恒星周りの惑星の最小周期は小さくなり,砂漠領域の深いところまで入り込むことができることを意味する.
この発見は有効温度への依存性の結果と矛盾するように見える.そのためサンプルを有効温度 5600 K で分割した.低温の恒星の場合,恒星質量は選択性があると認識される (p=0.07).しかし 5600 K より高温の恒星では,この依存性は完全に消失する.
そのため,恒星質量は砂漠の境界に対して恒星の有効温度が 5600 K 未満の場合にのみ影響を及ぼすと結論付けた.
惑星パラメータへの依存性
惑星のパラメータ,および現在の軌道に影響を及ぼす惑星と恒星の相互作用を記述するパラメータへの,周期の境界の明確な依存性は発見できなかった.ここでは,ロッシュローブのサイズ,恒星の表面への実際の潮汐力 (\(M_{*}r_{\rm p}/a^{3}\) で記述) を調査した.PR
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