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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1904.00522
Dunham et al. (2019)
Haumea's Shape and Composition
(ハウメアの形状と組成)

概要

高速で自転する分化した天体の平衡形状を計算し,準惑星ハウメアの形状と構造と組成を決定した.

過去のハウメアの光度曲線の研究では,ハウメアは組成が一様で三軸楕円体の形状をしており,960 × 774 × 513 km のヤコビ楕円体と整合的で,バルク密度はおよそ 2600 kg m-3 であると示唆されている.
対照的に,最近のハウメアによる恒星の掩蔽の観測では,ハウメアの形状は 1161 × 852 × 523 km で,密度 1885 kg m-3 と推定されている.この結果は,ハウメアは静水圧平衡の状態にある流体ではなく,部分的に分子間力で形状が支えられている必要があることを示唆している.

これらの観測の差異を解決するためのコードを作成し,ハウメアが実際に静水圧平衡の流体であるかどうかを決定した.コードは,天体の平衡形状,密度,分化したハウメアの氷地殻の厚さを,与えた長軸 (半長軸) a と b で計算するものである.

その結果,ハウメアは静水圧平衡にある分化した三軸楕円体の流体であるという結果と整合的であった,ベストフィットの軸長は,1050 km × 840 km × 537 km である.またハウメアの平均密度は 2018 kg m-3,コアの密度は 2680 kg m-3,コアのサイズは 883 km × 723 km × 470 km と推定される.

この結果は,ハウメアの氷マントルは全体積の 17% 程度を占め,厚さは 67 - 167 km の間で差異があることに対応している.ここで示唆されたハウメアの厚い氷地殻は,ハウメアの衝突族天体は,ハウメアへの天体衝突前の氷地殻のほんの一部であることを示す.

広いパラメータ範囲において,ハウメアに対して導出されたコア密度は,現在のコアは水和ケイ酸塩で構成されていることと,おそらく過去に蛇紋石化作用が発生した可能性があることを示唆している.

ハウメアについて

ハウメアの主要な特性

ハウメアは冥王星軌道以遠を公転しているカイパーベルト天体で,軌道長半径は 43.2 AU である,現在は遠日点距離 51.5 AU の付近にいるが,等級は比較的明るく V = 17.3 である.これは,ハウメアのサイズが大きいことと,表面が反射率の高い氷から成っていることが要因である.

ハウメアの平均半径は 720 km 程度 (Lockwood et al. 2014) から 795 km 程度 (Ortiz et al. 2017) と推定されている.反射スペクトルは,表面が 100% に近く一様に水氷で覆われていることを示唆している (Trujillo et al. 2007,Pinilla-Alonso et al. 2009).ハウメアはカイパーベルト天体の中では冥王星,マケマケに次ぐ 3 番目に明るい天体である (Brown et al. 2006).

ハウメアは,ヒイアカとナマカという 2 つの小さい衛星を持つ.この 2 つの衛星の運動から,ハウメアの質量は 4.006 × 1021 kg と推定されている (Ragozzine & Brown 2009).これは冥王星,エリス,そしておそらくはマケマケに次いで,既知のカイパーベルト天体の中では 3 番目か 4 番目に大きな質量である.

自転特性と過去の天体衝突

天体サイズが大きいものの,ハウメアの自転は速い.
光度曲線からは自転周期は 3.91531 時間と推定されている (Lellouch et al. 2010).これはカイパーベルト天体の中で最も速い自転である (Sheppard & Jewitt 2002),また 100 km を超える天体としては太陽系の中で最も速い自転周期を持つ (Rabinowitz et al. 2006).

またハウメアは衝突族を持ち (Brown et al. 2007),環を持っている (Ortiz et al. 2017).自転が速いことと,衝突族を持つことから,ハウメアは過去に大きな衝突を経験したことが示唆される (Brown et al. 2007).衝突族のメンバーである天体群の軌道の分散に基づくと,衝突が発生したのは 30 億年前と推定される (Volk & Malhotra 2012).

ハウメアはケレスのような他の準惑星よりもずっと大きい (ケレスは半径 473 km).あるいは,衛星ディオネ (561 km),アリエル (579 km) のような,名目上は球体である衛星よりも大きい.
しかしハウメアの反射光の光度曲線は非常に大きな極大と極小の振幅があり,2005 年には等級の振幅が 0.28 等級分 (Rabinowitz et al. 2006),2007 年には 0.29 (Lacerda et al. 2008),2009 年には 0.32 (Lockwood et al. 2014) であることが分かっている.ハウメアの表面のスペクトルは一様であるため,このような極端な明るさの変化は,表面の模様の変化ではなく観測者から見た時の断面積の違いのみによると考えられる.

ハウメアの形状と内部構造

自転が速いことから,ハウメアはヤコビ楕円体と呼ばれる特別な形状をしていると推定される.これは,ある閾値よりも速く自転をする,静水圧平衡にあるシアー無しの流体が取ると考えられ得る平衡形状の分類である (Chandrasekhar 1969, 1987).

ヤコビ楕円体では天体の軸比は b/a = 0.806,そしてハウメアの自転周期を考えると,密度は 2580 kg m-3 である必要があり,また c/a = 0.520 となるはずである.長軸を a = 960 km とすると,b = 774 km,c = 499 km となる.ここから推定される質量 (4π/3)abcρ は,観測されているハウメアの質量に一致する.そのため平均半径は 718 km ということになる.さらに,ハウメアの断面積からは表面アルベドは pV = 0.71 - 0.84 と示唆され (Rabinowitz et al. 2016など),これは水氷からなる表面を持つことと整合的である.

ハウメアの表面が氷であることと,密度が 2580 kg m-3 であることを同時に説明するためには,ハウメアの内部の密度が 2600 kg m-3 に近い必要がある,一方で,表面は非常に薄い氷の層を持つ.この構造は,ハウメアが過去に巨大衝突を経験し,氷マントルをはぎ取られたことを示唆している.

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