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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1907.07777
Thorngren et al. (2019)
The Intrinsic Temperature and Radiative-Convective Boundary Depth in the Atmospheres of Hot Jupiters
(ホットジュピターの大気における intrinsic 温度と放射対流境界)

概要

巨大惑星大気のモデリングにおいては,intrinsic temperature Tint放射対流境界 (radiative-convective boundary, RCB) が重要な下側境界条件となる.1 次元輻射対流モデルや 3 次元 general circulation モデルではしばしば,Tint は木星自身の値である 100 K と類似していることが仮定されており,これを元にすると RCB の位置はホットジュピターでは 1 kbar 程度の圧力の場所となる.

ここでは,惑星が膨張した半径を持つ,従って惑星内部が大きな比エントロピーを持つ場合,ホットジュピターでは Tint が従来の仮定より高い温度になることを示す.

半径の膨張の原因として,冷却の遅れによるものではなく,惑星内部の電流による加熱による影響が主要であると仮定し,惑星の平衡温度と Tint の平衡関係を導出した.その結果,後者が最大で 700 K になり得ることを示す.またそれに応じて,RCB は大気中の上方へと移動する.

1 次元輻射対流大気モデルを用いると,RCB は典型的に仮定されてきたキロバール程度の高度ではなく,わずか数バールの圧力となる高度にくる.このような従来の仮定よりもずっと浅い位置に RCB が来ることは,惑星の大気構造,鉛直方向・水平方向の大気循環,惑星の位相曲線の解釈,雲形成における大気深層でのコールドトラップの効果に重要な影響を及ぼす.

木星型惑星の放射対流境界

ホットジュピターのように強く輻射を受ける巨大惑星が発見されてすぐ,その大気は太陽系のガス惑星のものとは大きく異なることが判明した.

木星は,可視光ではアンモニアの雲頂 (~0.6 bar) まで見通すことができる.これは木星大気の対流領域の中であり,対流層は惑星のずっと深くまで続いている.
一方でホットジュピターの大気の場合,中心星からの強い輻射により,恒星から離れた軌道にある孤立した惑星に比べて高層大気が高温に加熱されるため,かなりの深さまで大気は放射層になることが予測されている (Guillot & Showman 2002など).これは大気の温度構造が断熱温度勾配から大きく外れることを意味し,大気循環に大きな影響を及ぼす.

ホットジュピターの輻射対流大気モデルでは,木星と同じ intrinsic flux (Tint でパラメータ化され,木星では 100 K) を持つが恒星からの入射フラックスが木星より 10000 倍大きいモデルを考えた場合,RCB が位置する場所の圧力は 1 kbar 付近とされる (Guillot & Showman 2002など).RCB の深さは Tint の値に強く依存することは早くから分かっていたが (Sudarsky et al. 2003),冷却モデルでは Tint は時間の経過に伴って木星と似た値にまで落ちることが示唆されていた.そのため ~1 kbar の RCB は,これらの天体における典型的な値として定着している.

しかし,ホットジュピターの半径は理論的な予想よりも大きくなっていることが分かっており,このことからホットジュピターの内部は木星と比べてより高温でよりフラックスも大きいことが示唆される.これにより内部の流束は高くなり,場合によっては RCB の位置は標準的な値である 1 kbar よりずっと浅くなる可能性がある.このような状況の大気はこれまでにも想定されてきたが,詳細には研究されてこなかった.

今回のモデルでは,惑星内部に加熱源が存在することを想定した.ホットジュピターの膨張半径を説明するモデルとしては,内部に加熱源が存在するか,あるいは冷却が遅くなっているかという説が提案されている.例えばオーム散逸 (Batygin et al. 2011) はこれらの組み合わせである.

惑星の冷却の遅れも,見かけの Tint を変えうる.しかし,多くの異常加熱モデルは冷却の遅れに依拠しない.
また惑星が再膨張していることを示す兆候も報告されており (Hartman et al. 2016など),ホットジュピターの異常膨張の原因として内部加熱モデルを支持している.もし再膨張があることが示された場合,半径膨張は内部加熱が支配的であるはずである (Lopez & Fortney 2016).

結果と議論

RCB の位置は,惑星の平衡温度が高い場合に低圧側に移動する.平衡温度 1000 K 周辺の膨張半径の cutoff では,RCB は 100 bar 程度になる.平衡温度 1800 K の極値では,およそ 1 bar になる.

惑星重力が強い場合は RCB を高圧領域に移動させ,大気が高金属量の場合は低圧側へ移動させる.平衡状態では,表面重力が 25 m s-2 未満で,大気の金属量が太陽金属量がそれより多いホットジュピターでは,1 kbar より深い位置に RCB を持つものは存在しない.

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