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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1908.04570
Sabotta et al. (2019)
Lack of close-in, massive planets of main-sequence A-type stars from Kepler
(ケプラーでの主系列 A 型星の近接巨大惑星の欠乏)
ケプラーの観測で得られた光度曲線の解析に基づくと,中間質量の恒星のおよそ 8% は,恒星未満の質量の近接伴星を持つことが示唆されている.このことは,このような天体が非常に高い頻度で存在することを示唆している.現在に至るまで,この仮説の満足できる証拠や検証は存在しない.
ここでは,過去に報告された,ケプラーの観測視野内での主系列 A 型星まわりの 166 個の惑星候補のサンプルについて研究した.さらにこれらのうち 6 つを,Tautenburg の Alfred-Jensch 2 m 望遠鏡 と Ondˇrejov の Perek 2 m 望遠鏡を用いて長時間にわたる視線速度測定を行い,これらの惑星候補の質量の上限値を導出した.
トランジットを検出するパイプラインである EXOTRANS を用いて,これら 166 個の恒星の光度曲線中に,木星類似の惑星に起因するトランジットは一つも検出されなかったことを確認した.さらにケプラーのサンプル中の A 型星周りの重い近接惑星の存在頻度の上限として,およそ 0.75% という値を与えた.
結果として,中間質量の恒星が近接した重い惑星を非常に高頻度で持つことを示す証拠はほとんどないと結論付けた.
この質量範囲の恒星が持つであろう惑星の存在頻度については,特に恒星に近接した軌道を持つ重い惑星について,異なる予測がある.多くの理論では,恒星の質量が大きくなるにつれて惑星の存在頻度も大きくなる事を予測している (Laughlin & Bodenheimer 1993など).しかしいくつかのモデルでは反対の予測をしている (Kornet et al. 2006など).
直接撮像で,A 型星の周りに多数の惑星が発見されている.主系列の中間質量星の解析では,太陽より重い恒星では,少なくとも軌道長半径 10-300 au の範囲内では重い惑星の存在頻度は高いことが示唆されている (Vigan et al. 2012).
残念ながら,古典的な視線速度サーベイでは A 型主系列星は惑星探査に不向きである.これは,A 型星はスペクトル線が比較的少なく,恒星の自転が速いためである.
これを回避する一つのアイデアが,主系列段階後に進化した,いわゆる retired A-type stars を観測することである.この試みは成功を収めており,多くの惑星が発見されている (Johnson et al. 2010など).
統計的な研究では,中間質量星周りの重い惑星は,太陽類似星周りよりも多く存在することが示唆されている (Johnson et al. 2010).しかしこの結論は,主系列段階後の恒星の質量決定を,分光学的および進化トラックから行う手法の信頼性が低いとの批判もある (Lloyd 2011, 2013).
その後,星震学を用いた恒星の質量の再評価が行われている (North et al. 2017など).このようにして決定された恒星質量は元々の Johnson et al. (2010) での推定質量と整合的であるか,あるいは 15-20% 小さいものであった.そのため,太陽類似星よりも中間質量星では重い惑星の存在頻度は高いと考えられている.
しかし,これらのサーベイは軌道長半径が 0.5 au 以遠にある惑星のみについてのものである.より決定的な検証については,お互いに食い違う理論的な予想が存在する,
一方でこれとは対照的に,Stephan et al. (2018) では A 型星を「世界の破壊者」と呼んだ.多くの A 型星は恒星の伴星を持ち,これがエキセントリックな古在機構を介して双方の恒星周りの惑星の力学的進化に強い影響を及ぼす.A 型星のうち 84 ± 11% が連星になっており,これは太陽型星が連星を成している割合よりもずっと大きい (Moe & Di Stefano 2017).そのため Stephan et al. (2018) は,A 型星はわずか 0.15% のみが主系列の寿命の間ホットジュピターを保持できると予測した.
A 型主系列星をトランジットするホットジュピターはいくつも発見されている.初めての発見例は WASP-33 b/HD 15082 b (Cameron et al. 2010) で,軌道周期 1.2 日である.なお,これは視線速度法で発見され,トランジットでも検出されたものである.
トランジット法で発見されたものとしては,ケプラー13b や HAT-P-57b などがある.
Balona (2014) は,166 個の A 型星の光度曲線中に特異な特徴を発見した.Balona (2014) では 1974 個の A 型星のうち 166 個でこの特徴を発見しており,A 型星の 8% は軌道周期 6 日未満の重い惑星か褐色矮星の伴星を持つと結論付けている.
これが正しければ,A 型星まわりの既知の惑星の個数は大幅に増加することになる.これは面白い結果であるが,この仮説はまだ検証されていない.ここでは Balona (2014) で報告された 166 個のサンプルについて調査を行った.
統計的には 80 程度のトランジットがあるはずだが,惑星候補天体がトランジットしている様子は見られあんかった.このことから,166 個の惑星が存在するという可能性は非常に考えにくい.
ケプラーで観測された A 型星のサンプルからは,ホットジュピターは 1 つしか発見されていない.ケプラーの検出能力では,A 型星周りであっても木星サイズの惑星を検出することは容易である.
今回の研究から,A 型星周りのホットジュピター存在頻度の上限値として 0.75% を与える.これは理論的な予想のうち,低い方と非常に整合的である.これは,主系列の中間質量星周りにはホットジュピターが欠乏している証拠である.
arXiv:1908.04570
Sabotta et al. (2019)
Lack of close-in, massive planets of main-sequence A-type stars from Kepler
(ケプラーでの主系列 A 型星の近接巨大惑星の欠乏)
概要
惑星形成と進化についてのいくつかの理論では,中間質量の恒星は太陽類似星よりも多くのホットジュピターを持つという予測があるが,逆にそのような天体は非常に希少だという結論に達した研究もある.そのような惑星の存在頻度を決定するため,これらの理論の検証を行った.ケプラーの観測で得られた光度曲線の解析に基づくと,中間質量の恒星のおよそ 8% は,恒星未満の質量の近接伴星を持つことが示唆されている.このことは,このような天体が非常に高い頻度で存在することを示唆している.現在に至るまで,この仮説の満足できる証拠や検証は存在しない.
ここでは,過去に報告された,ケプラーの観測視野内での主系列 A 型星まわりの 166 個の惑星候補のサンプルについて研究した.さらにこれらのうち 6 つを,Tautenburg の Alfred-Jensch 2 m 望遠鏡 と Ondˇrejov の Perek 2 m 望遠鏡を用いて長時間にわたる視線速度測定を行い,これらの惑星候補の質量の上限値を導出した.
トランジットを検出するパイプラインである EXOTRANS を用いて,これら 166 個の恒星の光度曲線中に,木星類似の惑星に起因するトランジットは一つも検出されなかったことを確認した.さらにケプラーのサンプル中の A 型星周りの重い近接惑星の存在頻度の上限として,およそ 0.75% という値を与えた.
結果として,中間質量の恒星が近接した重い惑星を非常に高頻度で持つことを示す証拠はほとんどないと結論付けた.
A 型星周りの惑星の存在頻度
これまでの系外惑星探査
ここでの中間質量星は,1.3-3.2 太陽質量の質量範囲の恒星とする.この質量範囲の恒星が持つであろう惑星の存在頻度については,特に恒星に近接した軌道を持つ重い惑星について,異なる予測がある.多くの理論では,恒星の質量が大きくなるにつれて惑星の存在頻度も大きくなる事を予測している (Laughlin & Bodenheimer 1993など).しかしいくつかのモデルでは反対の予測をしている (Kornet et al. 2006など).
直接撮像で,A 型星の周りに多数の惑星が発見されている.主系列の中間質量星の解析では,太陽より重い恒星では,少なくとも軌道長半径 10-300 au の範囲内では重い惑星の存在頻度は高いことが示唆されている (Vigan et al. 2012).
残念ながら,古典的な視線速度サーベイでは A 型主系列星は惑星探査に不向きである.これは,A 型星はスペクトル線が比較的少なく,恒星の自転が速いためである.
これを回避する一つのアイデアが,主系列段階後に進化した,いわゆる retired A-type stars を観測することである.この試みは成功を収めており,多くの惑星が発見されている (Johnson et al. 2010など).
統計的な研究では,中間質量星周りの重い惑星は,太陽類似星周りよりも多く存在することが示唆されている (Johnson et al. 2010).しかしこの結論は,主系列段階後の恒星の質量決定を,分光学的および進化トラックから行う手法の信頼性が低いとの批判もある (Lloyd 2011, 2013).
その後,星震学を用いた恒星の質量の再評価が行われている (North et al. 2017など).このようにして決定された恒星質量は元々の Johnson et al. (2010) での推定質量と整合的であるか,あるいは 15-20% 小さいものであった.そのため,太陽類似星よりも中間質量星では重い惑星の存在頻度は高いと考えられている.
しかし,これらのサーベイは軌道長半径が 0.5 au 以遠にある惑星のみについてのものである.より決定的な検証については,お互いに食い違う理論的な予想が存在する,
理論的な予測
軌道周期 10 日未満の短周期の重い惑星についての研究で,Hasegawa & Pudritz (2013) はホットジュピターの存在頻度は中心星の質量に伴って急激に上昇すると予想している.これは,ホットジュピターは物質を多く含んでいる,中心星に近いデッドゾーンで形成されることが原因である.一方でこれとは対照的に,Stephan et al. (2018) では A 型星を「世界の破壊者」と呼んだ.多くの A 型星は恒星の伴星を持ち,これがエキセントリックな古在機構を介して双方の恒星周りの惑星の力学的進化に強い影響を及ぼす.A 型星のうち 84 ± 11% が連星になっており,これは太陽型星が連星を成している割合よりもずっと大きい (Moe & Di Stefano 2017).そのため Stephan et al. (2018) は,A 型星はわずか 0.15% のみが主系列の寿命の間ホットジュピターを保持できると予測した.
これまでの発見例
従来の視線速度法は A 型星の周囲に惑星を効率的に検出するのに向いていないため,ここではトランジットサーベイを用いるのが良い戦略であると考えられる.A 型主系列星をトランジットするホットジュピターはいくつも発見されている.初めての発見例は WASP-33 b/HD 15082 b (Cameron et al. 2010) で,軌道周期 1.2 日である.なお,これは視線速度法で発見され,トランジットでも検出されたものである.
トランジット法で発見されたものとしては,ケプラー13b や HAT-P-57b などがある.
Balona (2014) は,166 個の A 型星の光度曲線中に特異な特徴を発見した.Balona (2014) では 1974 個の A 型星のうち 166 個でこの特徴を発見しており,A 型星の 8% は軌道周期 6 日未満の重い惑星か褐色矮星の伴星を持つと結論付けている.
これが正しければ,A 型星まわりの既知の惑星の個数は大幅に増加することになる.これは面白い結果であるが,この仮説はまだ検証されていない.ここでは Balona (2014) で報告された 166 個のサンプルについて調査を行った.
結論
166 個のサンプルのうち 6 つの恒星を観測した結果,伴星の質量の上限として 3.8-7.3 木星質量という値を与えた.これは,7.3 木星質量より重い惑星や恒星の伴星の存在を否定するものである.統計的には 80 程度のトランジットがあるはずだが,惑星候補天体がトランジットしている様子は見られあんかった.このことから,166 個の惑星が存在するという可能性は非常に考えにくい.
ケプラーで観測された A 型星のサンプルからは,ホットジュピターは 1 つしか発見されていない.ケプラーの検出能力では,A 型星周りであっても木星サイズの惑星を検出することは容易である.
今回の研究から,A 型星周りのホットジュピター存在頻度の上限値として 0.75% を与える.これは理論的な予想のうち,低い方と非常に整合的である.これは,主系列の中間質量星周りにはホットジュピターが欠乏している証拠である.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.932 Stephan et al. (2018) A 型星連星系内での木星型惑星の運命