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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1806.04145
Stephan et al. (2018)
A-type Stars, the Destroyers of Worlds: The lives and deaths of Jupiters in evolving stellar binaries
(A 型星,世界の破壊者:進化する伴星系での木星型惑星の一生と死)

概要

ホットジュピターは中心星の周りを数日オーダーの周期で公転している.ホットジュピターは,比較的重い恒星 (1.6 - 2.4 太陽質量,つまり A 型星) 周りや,進化した恒星の周りを含む,銀河系内では一般的な存在である.

A 型主系列星の大部分は恒星質量の伴星を持っており,主星・伴星双方の周りにある惑星の力学的進化に強く影響を及ぼす.ここでは,遠方の恒星質量の伴星による重力的擾乱,いわゆる Eccentric Kozai-Lidov (EKL) 機構によって,主星の A 型星を公転する巨大ガス惑星の軌道進化が受ける影響を調査した.なお計算には,一般相対論効果,主系列段階後の恒星進化,潮汐効果を含んでいる.


その結果,A 型星は主系列星の間に,わずか 0.15% のみがホットジュピターを持ちうるということを見出した.

しかし新しい分類の惑星,"一時的なホットジュピター" (temporary hot Jupiters, THJs) が,主系列段階後の寿命の間に,かつて A 型主系列星であった恒星に対して一定の割合で形成されることも分かった (3.7%).
これらの一時的なホットジュピターは,10 - 100 日周期程度で中心星を公転し,中心星が膨張してきて飲み込まれるまでの数十万年の間のみ存在する.しかし一時的なホットジュピターは,恒星の光度が増すに伴い “古典的な” ホットジュピターと同じ表面温度になる.

一時的なホットジュピターの spin-orbit 角度 (恒星の自転軸と惑星の公転軸が成す角度) は,大部分がずれていると考えられる.

一時的なホットジュピターとそれらの中心星との潮汐相互作用は,中心星のエンベロープに大きな影響を及ぼす.一方で進化後に起きる惑星の飲み込みは中心星の自転を加速させ,また一時的な増光シグナルも起こす.これらの影響によって,一時的なホットジュピターが存在している時期である数十万年よりもずっと長い間に渡り,一時的なホットジュピターの痕跡を観測できるようになる.

全体としては,A 型星を公転している巨大ガス惑星のおよそ 70% は,いずれ中心星に破壊されるか,飲み込まれるかという運命を辿る.25% は中心星が主系列星の間に,45% は主系列段階後の進化の間に破壊されるか飲み込まれる.

計算のセットアップ

用いたのは,階層的三体系の力学的進化を追う,大規模モンテカルロシミュレーションである.
主星である恒星とそれを公転する木星サイズ惑星の比較的近距離の連星と,それらから離れた位置で恒星が外側の伴星として公転しているという連星系を考える.

中心星は 1.6 - 3.0 太陽質量の間とし,主系列段階では A 型星か小さい B 型星に相当する.この中心星は 1 つの木星質量惑星を持つと設定する.惑星は,サイズ・自転ともに木星と同じとする.
外側の伴星の質量は Duquennoy & Mayor (1991) の伴星質量分布から設定する.

惑星の軌道長半径は,1 - 10 AU まで一様な分布を持つと仮定し.外側の伴星の軌道長半径は同じく Duquennoy & Mayor (1991) の伴星分布から設定する.

惑星の初期の軌道離心率は 0.01 と小さい値に設定し,また spin-orbit angle も同様に小さい値とする.これは,惑星は原始惑星系円盤内で形成された仮定しているためである.

一方で外側の伴星は軌道離心率は 0 - 1 の間に一様分布させた.ただし軌道安定性を保証するため,外側の伴星の軌道長半径が ~ 10000 AU を超えるものは除外した.これは,軌道長半径が大きすぎる場合は,銀河潮汐によって比較的速く中心星から分離されてしまう傾向があるからである.
また,階層的三重星系の長期的な安定性を保証するため,惑星の軌道長半径と伴星の軌道長半径・離心率には一定の制約を与えた.また,内側惑星と外側伴星の軌道角運動量の傾斜角はコサインで一様になるように設定した.

全体で 4070 通りのシミュレーションを実行した.
計算の途中で惑星が恒星に接触したりロッシュ限界をまたいだ場合,そこで時間積分を停止した.

結果

全シミュレーションのうち,70% で木星型惑星の破壊が起き,中心星が白色矮星になるまで生き残ったのは 30% のみであった.

計算結果は大きく以下の 4 つのケースに分類される.

1. Classical Hot Jupiters (古典的なホットジュピター)

軌道周期が 10 日未満の (一般的な) ホットジュピターである.ホットジュピターの形成過程として,高軌道離心率移動モデルとして過去の研究で想定されていたものである.

これらの惑星は,中心星に近い短周期軌道に,中心星の主系列寿命の間に到達する.これは EKL による大きな軌道離心率と潮汐の効果が働いた結果である.

これらは,恒星が進化して半径が膨張すると,最終的には中心星に飲み込まれて破壊されることになる.進化の最中で,典型的には表面温度が 2000 - 5000 K に到達し,その後飲み込まれる.

全シミュレーションの 1.5% がこの結果になった.

2. Roche-limit crossers (ロッシュ限界を越える惑星)

これらは EKL 機構を介して非常に大きな軌道離心率に到達した惑星であり,中心星のロッシュ限界を横断したり恒星の表面をかすめたりする.

このような惑星の実際の運命は複雑である可能性があり (Dosopoulou et al. 2017).いくつかは生き残ることもあるだろうと考えられる.しかしここでは単純のため,全てをまとめて “Roche-limit crossers” と名付けた.

全シミュレーションの 31% で,惑星が中心星のロッシュ限界を越える Roche-limit crossers となった.23% は中心星が主系列星の間に,8% は主系列段階後に発生した.

主系列段階後の進化の間に恒星のロッシュ限界を越える惑星は,単に十分に高い離心率の励起が起きなかったか,主系列寿命の間は近い近点距離を持つには初期軌道が大きすぎたかだと考えられる.

3. “Temporary” Hot Jupiters ("一時的な" ホットジュピター)

これらの惑星は,中心星の主系列星でいる間には潮汐による円軌道化と軌道の減衰を経験できるような十分大きな軌道離心率には到達しなかったが,中心星が主系列段階を離れて巨星になるにつれてそれらを経験するようになったものである.

これらの全ては,表面温度と軌道離心率という文脈で,それらの寿命の短い間だけ事実上 "ホットジュピター" と分類できる

これらの一時的なホットジュピターは中心星が膨張を続けるにつれ,また潮汐相互作用によって惑星が恒星表面に近付くつれ,中心星に飲み込まれることになる.

中心星による惑星の飲み込み過程は中心星に高エネルギーの擾乱を引き起こし,これは観測可能である可能性がある (MacLeod et al. 2018など).

全シミュレーションの 37% がこの結果となった.
しかしそのうち 1/5 (全体の 7%) は,伴星による EKL 擾乱が無視できる場合でもこの結果に到達した.これは,惑星の初期の軌道長半径が 1-3 AU と恒星に近い場合に起きる.

惑星が一時的なホットジュピターの状態を保つのは数十万年の間だけであり,その後ロッシュローブを超えて中心星に飲み込まれる.しかし飲み込みの際に恒星のエンベロープに一定の影響を与え,また拡大する恒星のロッシュローブに入る前には表面温度は 2000 - 3000 K に到達する.

4. Surviving Jupiters (生き残る惑星)

これは中心星とは明確な作用を起こさず,中心星が白色矮星になるまで生き残る惑星である.

伴星による EKL 擾乱が惑星の軌道離心率を大きくするには弱すぎ,また中心星の主系列段階後の潮汐進化の影響を受けるには軌道長半径が大きい場合,この状態になる.このポピュレーションは主に,これらの惑星系の初期条件に関する我々の知識の欠如を示している.

全シミュレーションの 30% がこの段階に到達する.

少ない割合で (全体の 0.3%),恒星からの質量放出が系の軌道要素を変えるのに伴って惑星が破壊され,白色矮星に降着する.これは EKL 機構で生き残った惑星の軌道離心率が大きく励起され,最終的に白色矮星のロッシュ限界を越えて潮汐破壊されるという進化を辿るものである.この白色矮星表層の汚染機構は,Stephan et al. (2017) などで詳細に議論されている.

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