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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.04274
MacLeod et al. (2018)
Planetary Engulfment in the Hertzsprung--Russell Diagram
(ヘルツシュプルング・ラッセル図における惑星飲み込み)

概要

大部分の太陽類似星は惑星を持っていることが分かっている.多くの惑星の軌道は中心星に近く,中心星が巨星分枝 (giant branch) の段階に進化すると中心星に飲み込まれる.
ここでは,中心星に飲み込まれた惑星の軌道減衰によって生み出される力と,恒星の光度の比較を行った.

惑星の軌道減衰による力は,中心星のエンベロープによって飲み込まれた惑星にはたらく摩擦によって生み出される.恒星が巨星分枝へ進化していくと,そのエンベロープの密度も減少し,軌道減衰によって注入されるパワーもおおよそ \(L_{\rm decay}\propto R_{*}^{-9/2}\) でスケーリングされる.しかし巨星の光度は,巨星分枝の進化の間に増加する.
これらの相反するスケーリングは,\(L_{\rm decay}=L_{*}\) となる所で交差する.

ここでは,ヘルツシュプルング・ラッセル図 (HR 図) の等時線に沿った惑星の飲み込みを考慮した.
その結果.惑星質量が木星質量程度の場合,そのような交差は,\(L_{*}\approx 10^{2}L_{\odot}\) もしくは軌道長半径 0.1 au の場合に発生することを見出した.この近接巨大惑星の飲み込み,例えばホットジュピターの飲み込みが発生する場合は \(L_{\rm decay}>>L_{*}\) になる一方.ウォームジュピターのようなより遠方の惑星 (a ~ 0.5 au) の場合は,\(L_{\rm decay}<<L_{*}\) という小さな擾乱が加わるのみであることが分かった.

この結果を元に,巨星分枝に沿ったパラメータ空間で,惑星との相互作用が中心星に大きなエネルギー的な擾乱を与える様子を HR 図上に描画した.

進化した恒星による惑星の飲み込み

恒星が主系列段階から進化すると,半径は大きく増大する.軌道長半径が au スケールである惑星天体は,中心星が成長するに伴って中心星のエンベロープに飲み込まれる(Villaver & Livio 2009; Schlaufman & Winn 2013).

その後のコモンエンベロープ期 (common envelope phase,外層を共有する段階) では,伴星 (ここでは飲み込まれた惑星) の軌道は,周囲のエンベロープとの相互作用による摩擦に応答して縮小する (Paczynski 1976).

惑星の軌道エネルギーの注入は,恒星エンベロープ内でのエネルギー源となる.このエネルギー源と,輻射と対流によって既に恒星エンベロープに輸送されている恒星中心部での核燃焼のエネルギーの相対的な大きさに依存して,この追加のエネルギーは擾乱や大規模な外乱を与えうる.
飲み込まれた惑星が恒星に与える影響については,これまでに多くの研究が存在する.例えば,惑星飲み込みの際のガス動力学 (Sandquistet al. 1998,Staff et al. 2016),飲み込みに引き続く恒星の進化 (Soker et al. 1984,Siess & Livio 1999,Metzger et al. 2017など) である.

さらに,惑星の飲み込みによって角運動量が恒星のエンベロープに与えられ,恒星の自転を加速する可能性や (Soker 1998,Siess & Livio 1999,Zhang & Penev 2014,Privitera et al. 2016など),恒星の磁場を増幅する可能性 (Privitera et al. 2016),惑星物質による恒星表面組成の汚染 (Sandquist et al. 1998,Siess & Livio 1999,Sandquist et al. 2002,Aguilera-G ́omez et al. 2016) についても研究されている.
また,恒星からの噴出物からの過渡的現象の発生の際の,惑星飲み込みイベントの役割推定 (Soker & Tylenda 2006,Metzger et al. 2012,Yamazaki et al. 2017),あるいは噴出物からの惑星状星雲の形状への影響 (De Marco & Soker 2011) などについての研究も存在する.

ここでは,飲み込みに際した惑星軌道減衰のエネルギーと,恒星の光度の比較を行った.

結果のまとめ

1. 惑星にはたらく力は,中心星に飲み込まれた惑星の軌道を減衰させる.

2. 惑星の飲み込みが巨星分枝星のエネルギーを大きく乱すかどうかは,惑星の特徴 (質量と距離) と,中心星の半径が惑星の軌道長半径のサイズになった時の中心星の光度に依存する.惑星の軌道減衰の力は,恒星サイズの増加に伴って鋭く減少し,\(L_{\rm decay}\propto R_{*}^{-9/2}\) という依存性を持つ.これは膨張に伴って恒星エンベロープの密度が減少することが原因である.一方で,低質量の巨星では光度は半径の増加に伴って鋭く上昇し,\(L_{*}\propto R^{3/2}\) という依存性を持つ.この逆向きのスケーリングから,いずれこれらが交差することがわかる.

3. 軌道長半径が 0.1 au 程度未満の巨大惑星の場合は,\(L_{\rm decay}>>L_{*}\) となる.より遠方の惑星では \(L_{\rm decay}<<L_{*}\) となる.このことは,ホットジュピターは飲み込みに際して中心星に一定の影響を与えるが,0.1 - 1 au 程度のウォームジュピターの場合はそうではないということを示唆している.年齢が 109-10 年で光度が 102 太陽光度の進化した恒星は,木星型惑星の飲み込みにより \(L_{\rm decay}\approx L_{*}\) になる.

4. \(L_{\rm decay}= L_{*}\) の臨界条件を満たす天体の半径を計算した.その結果,飲み込まれる天体の半径として,巨星分枝の転回点においてはわずか 10 km 程度の天体で条件を満たすことが分かった.

5. エネルギーが注入されるタイムスケールは,中心星が転回点に近い時に飲み込まれる木星型惑星の軌道周期一周分のオーダーから,巨星分枝の先端での 104 周分まで変化する.最小の半径の天体は \(N_{\rm decay}<<1\) で短命である (\(N_{\rm decay}\) は軌道減衰の間に公転する回数に相当する).

6. 飲み込みによって突発する光度は,光学的に厚い恒星エンベロープを介する輻射輸送によって伝えられ,特に \(L_{\rm decay}>L_{*}\) の場合は \(L_{\rm decay}\) には一致しない.


中心星による惑星の飲み込みは一般的な現象であるが,現在の発生率は低く,銀河系内では 1 年に 0.1 - 1 回程度のオーダーである.そのため今回の研究は,100 太陽光度未満の巨星分枝の下部で進化している恒星に注目し,伴星との相互作用の長期にわたる観測的特徴を調べるための動機づけとなる.

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