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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1909.05218
Tsiaras et al. (2019)
Water vapour in the atmosphere of the habitable-zone eight Earth-mass planet K2-18 b
(ハビタブルゾーンの 8 地球質量惑星 K2-18b の大気中の水蒸気)

概要

過去十年間の観測において,宇宙空間からと地上からの観測では,高温な系外ガス惑星の大気からは水素に次いで水が最も多く発見されている分子である.水分子は酸素原子を保持する主要な分子であることから,水の存在は惑星の起源と形成機構のトレーサーとなる.

温暖な地球型惑星では,水の存在は居住可能な環境の指標として非常に重要である.このような惑星は小さく比較的低温であることから,これらの惑星とその大気は観測が困難であり,大気のスペクトルのシグナルはこれまでに検出されていない.

晩期型星を公転する 10 地球質量よりも軽いスーパーアースは,このような惑星の特性を分光学的に研究する良い対象である.ここでは,M 型矮星のハビタブルゾーンを公転する 8 地球質量の惑星 K2-18b の大気から,水の特徴を分光学的に検出したことを報告する
さらに,観測から導出した平均分子量からは,この惑星の大気はいくらかの水素を含んでいることが示唆される.観測にはハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を使用した.

M 型星の周囲の環境がハビタブル惑星に適しているかどうかについては議論の余地があるが,この惑星はハビタブルゾーン内の惑星の組成と気候に関する考察を得るための非常に良い対象である.

小型の惑星大気の過去の観測例

大きさが 3.0 地球半径よりも小さい,高温な惑星大気のスペクトルに関しては過去に観測例がある.GJ 1214b,HD 97658,55 Cnc e (かに座55番星e) である.

前者 2 つの惑星は,トランジット深さの波長依存性が見られない.このことは,これらの惑星大気が分厚い雲に覆われているか,水素よりも重い分子種でできているかを示唆している.一方で 55 Cnc 3 のスペクトルは,軽い大気を持つことを示唆しているが,依然として大気中には水素・ヘリウムが存在することを示唆する.

さらに,超低温矮星 TRAPPIST-1 周りの 6 つの温暖な地球サイズの惑星 TRAPPIST-1b, c, d, e, f, g は大気中の分子の特徴を示さず,雲なしの H/He 大気を持つ可能性は否定されている.

K2-18b について

K2-18b は 2015 年にケプラーによる観測で発見された惑星である.中心星 K2-18 はスペクトル型が M2.5 で,有効温度は 3457 K,0.359 太陽質量,0.411 太陽半径,太陽系からの距離は 34 pc である.

軌道長半径は 0.1429 AU で,恒星のハビタブルゾーン (0.12-0.25 AU) の中に位置している.惑星の表面温度は 200-320 K と推定される.この温度は,惑星のアルベドと,惑星表面もしくは惑星大気の放射能率に依存する.

惑星は 7.96 地球質量,2.279 地球半径であり,バルク密度は 3.3 g cm-3 である.この密度は,この惑星が広がった大気を持つ岩石惑星か,水の質量割合が 50% 未満の内部組成を持つ惑星かのいずれかであることを示唆している.

この惑星の 9 回のトランジットは過去にハッブル宇宙望遠鏡で観測されており,今回解析に用いたのはアーカイブとして公開されていたデータである.

観測結果

大気組成の推定においては,雲なしの大気で,H2O と H2/He のみを含む場合,雲なしの大気で H2O,H2/He と N2 を含むもの (N2 は平均分子量には寄与するものの,WFC3 のバンドパスでは検出できない「不可視」の分子として働く),および,曇った大気で H2O と H2/He のみを含むものの 3 種類を考慮した.

解析の結果,大気組成に関する限りは,今回考慮した全てのケースにおいて高い統計的信頼性で大気中の水蒸気の存在を確認した.しかし,その存在度もしくは大気の平均分子量を制限することは難しい.

H2O + H2/He 大気のケースでは,水の存在度は 50% から 20% の間と推定される.他の 2 ケースでは 0.01% と 12.5% の間である.また大気の平均分子量は H2O + H2/He 大気のケースでは 5.8-11.5 amu,他のケースでは 2.3-7.8 amu と推定される.
この結果は,大気の無視できない割合は依然として H/He であることを示唆している.

さらなる別の気体,例えば CH4 や NH3 を含む可能性は除外できないが,現在の観測では同定できない.これは,ハッブル宇宙望遠鏡 WFC3 がカバーする波長範囲と限定的なシグナルノイズ比では,他の分子の検出はできないからである.







arXiv:1909.04642
Benneke et al. (2019)
Water Vapor on the Habitable-Zone Exoplanet K2-18b
(ハビタブルゾーンの系外惑星 K2-18b の水蒸気)

概要

ケプラーミッションの結果によると,任意の恒星のハビタブルゾーン内に地球やスーパーアースが存在する確率は最大で 5-20% であることが示唆されている.このような高い存在度にも関わらず,これらのハビタブルゾーン内惑星の環境や大気特性を探査するのは非常に困難であり,系外惑星研究における課題となっている.

ここでは,8.6 地球質量のハビタブルゾーン惑星 K2-18b の大気中の水蒸気の検出と,液体の水からなる雲を示す可能性のあるシグナルについて報告する.

スペクトル型 M3 の矮星を 33 日周期で公転する軌道にあるこの惑星は,実質的に地球と同程度の輻射を受けている (1441 ± 80 W/m2,地球は 1370 W/m2),そのため液体の水の雲を持つ可能性がある良い候補天体である.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた 8 回のトランジット観測により,水蒸気の検出に必要な感度を達成した.

K2-18b が分厚いガスのエンベロープを持っていることは,この惑星は実際には地球類似惑星ではないことを意味している.しかしこの観測は,液体の水を保持するための環境が整った低質量のハビタブルゾーン惑星は,最新の望遠鏡で観測可能であることを実証するものである.

液体の水の雲が存在する可能性

今回の観測では,波長 1.4 µm での統計的に有意な水の吸収の特徴を検出した

この惑星の中間大気では,液体の水の雨が存在する可能性がある.ここでは,この惑星の大気中の液滴の可能性についても,輻射対流熱輸送と化学平衡を反復的に解く大気モデルを使用して考察した.

その結果,10-1000 mbar の,水蒸気が過飽和状態になる範囲では,液体の水からなる凝縮物が生成可能であることが分かった.ベストフィットの大気復元モデルでは,雲頂はこの圧力範囲の中に入っており,この惑星の大気中には液体の水滴が存在する可能性があるというシナリオを支持する.







同じ系外惑星についての,同じ観測データを用いた論文です.ハッブル宇宙望遠鏡でのこの惑星の観測提案を行ったのは Benneke らのグループであり,観測が行われて一定期間経った後にデータが公開され,そのアーカイブデータを用いて Tsiaras らのグループが先に論文として発表した模様です.

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