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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.07355
Santerne et al. (2019)
An extremely low-density and temperate giant exoplanet
(極めて低密度で温暖な巨大系外惑星)

概要

トランジットする系外惑星は,惑星系の形成,移動,進化の研究において重要な存在である.特に,巨大惑星の大気を透過スペクトルや直接撮像で探査することで,大気の化学組成や物理特性の大きな多様性が明らかになる.しかしこれらの研究は,強い輻射を受けているトランジット巨大惑星か,中心星の遠方にある直接撮像可能な巨大惑星に限られてきた.

ここでは,明るい晩期 F 型星である恒星まわりの複数惑星系 HIP 41378 の惑星の物理的な特徴付けを行った.

外側を公転する HIP 41378f は土星サイズの 9.2 ± 0.1 地球半径であり,0.09 ± 0.02 g cm-3 という異常な低密度を持つ.この理由は不明である.

この惑星の平衡温度はおよそ 300 K である.従って,ホットジュピターと,太陽系のより低温な巨大惑星の間の,中間的な温度を持つ惑星である.JWST や ARIEL といった次世代の宇宙望遠鏡や,地上の超巨大望遠鏡による,中間的な輻射を受ける巨大系外惑星の大気の特徴付けへの新たな境地を開く存在となるだろう.従ってこの惑星は,輻射が惑星大気の物理特性や化学組成に及ぼす影響を理解するための重要な実験室となる.

HIP 41378 について

この系はケプラーの K2 ミッションの Champaign 5 の期間中に観測された.

K2 の観測データからは,5 つの惑星がトランジットしていることが明らかになった.
うち 2 つは軌道周期が 15, 31 日の HIP 41378b と c である.これらの 2 つは,ケプラーによる宇宙空間からの 80 日にわたる観測期間中に複数回のトランジットが検出された.他の 3 惑星 HIP 41378d, e, f は Champaign 5 の間には 1 回しかトランジットを起こさなかった.

トランジット継続時間から,これらの惑星の軌道周期は数ヶ月から数年であると予測された.

この系は,K2 の Champaign 18 で再び観測された.これによって,内側の 2 惑星の新しいトランジットの検出と,d, f の 2 回目のトランジットの検出に成功した.これにより外側の惑星の軌道周期の取りうる値が導出され,周期は 1000 日とそのハーモニクス (下限 50 日) と制約された.

TESS によってこの系がさらに観測され,内側 2 惑星のトランジットが 1 回ずつ検出された.HIP 41378b, c, d, e は半径が 5 地球半径より小さく,比較的低質量と持つと予想される.しかし HIP 41378f は土星サイズの惑星であるため,30 m s-1 水準の比較的大きな視線速度シグナルを持つことが期待される.

惑星の質量を測定し軌道周期と物理的特性を更新するため,視線速度観測を実施した.初めはオート・プロヴァンス天文台の 1.93 m 望遠鏡の SOPHIE 分光器を用いた観測を行ったが,この観測では視線速度の有意な変動は検出できなかった.そのため,HIP 41378f は予想より低質量である可能性が示唆された.

その後,さまざまな高精度視線速度装置,HARPS,HARPS-N,HIRES,PFS 分光器で観測され,合計で 464 セットの視線速度測定が 4 年にわたって実施された.

観測の初期成果では 2 つの側面が明らかになった.まず,HIP 41378f の軌道周期は,K2 による測光で予測されていた軌道周期候補の中で,542 日のもののみに整合した.

次に,62 日周期のトランジットしない惑星による有意なシグナルを検出した.この惑星 HIP 41378g が HIP 41378c と 2:1 平均運動共鳴に入っていると仮定すると,HIP 41378c が示す ~85 分のトランジット時刻変動が説明できる可能性がある.
なお,62 日のシグナルが HIP 41378d か e のものであると考えると,長いトランジット継続時間を説明するためには離心率が ~0.6 以上と大きい値である必要があり,さらにその場合は系が不安定になってしまうため,この可能性はないと考えられる.

この初期解析では,HIP 41378d と e は有意には検出されなかった.

HIP 41378g はトランジットしない惑星であるため軌道傾斜角は不明で,質量も最小質量しか導出できない.しかし系がほぼ同一平面上にあるため,傾斜角は ~88° に近いと期待される.そのため真の質量は,ここで導出した最小質量とほぼ同一だろうと考えられる.

HIP 41378e のトランジットは 1 回しか検出されていないが,星震学での制約から,軌道周期は 369 ± 10 日と制約された.その結果,惑星 HIP 41378d, e, f は 3:4:6 の平均運動共鳴鎖に近い状態にある.そのため,この系全体は 1:2:4:18:24:36 平均運動共鳴鎖に入っている可能性がある.

パラメータ

HIP 41378
有効温度:6320 K
金属量:[Fe/H] = -0.10
質量:1.16 太陽質量
半径:1.273 太陽半径
年齢:31 億歳
距離:103 pc
自転周期:6.4 日
HIP 41378b
軌道周期:15.57208 日
軌道離心率:0.07
軌道長半径:0.1283 au
半径:2.595 地球半径
質量:6.89 地球質量
密度:2.17 g cm-3
平衡温度:959 K
日射量:地球の 140 倍
HIP 41378c
軌道周期:31.70603 日
軌道離心率:0.04
軌道長半径:0.2061 au
半径:2.727 地球半径
質量:4.4 地球質量
密度:1.19 g cm-3
平衡温度:757 K
日射量:地球の 54 倍
HIP 41378g
軌道周期:62.06 日
軌道離心率:0.06
軌道長半径:0.3227 au
質量:7.0 地球質量 (傾斜角 88° を仮定)
平衡温度:605 K
日射量:地球の 22.3 倍
HIP 41378d
軌道周期:278.3617 日
軌道離心率:0.06
軌道長半径:0.88 au
半径:3.54 地球半径
質量:4.6 地球質量未満
密度:0.56 g cm-3 未満
平衡温度:367 K
日射量:地球の 3.01 倍
HIP 41378e
軌道周期:369 日
軌道離心率:0.14
軌道長半径:1.06 au
半径:4.92 地球半径
質量:12 地球質量
密度:0.55 g cm-3
平衡温度:335 K
日射量:地球の 2.1 倍
HIP 41378f
軌道周期:542.07975 日
軌道離心率:0.004
半径:9.2 地球半径
質量:12 地球質量
密度:0.09 g cm-3
平衡温度:294 K
日射量:1.24 地球輻射

非常に低密度な HIP 41378f の形成と特性

今回観測を行ったトランジット惑星 5 つは比較的低密度であり,これらはガス惑星であると考えられる.

もっとも極端な惑星は HIP 41378f で,12 ± 3 地球質量で 9.2 ± 0.1 地球半径であり,バルク密度は 0.09 ± 0.02 g cm-3 である.31 億歳の低質量系外惑星の構造の理論モデルと比較すると,この大きな半径を説明するためには太陽金属量より小さい必要がある.そのためこの惑星は非常に小さいコアを持ち,水素とヘリウム主体の大きな大気を持つと思われる.31 億歳でのこのような低密度惑星は,現在の系外惑星の形成と進化モデルでは予想されない存在である.

可能性のある説としては,この惑星は光学的に厚い環に取り囲まれている,比較的低質量の惑星であると考えるものがある.惑星の周囲に環が存在した場合,惑星の実効半径を大きく見せ,そのため見かけの密度を小さくする.赤外線波長ではケプラーのバンドパスに比べて環が光学的に薄くなると考えられるため,この波長でのトランジット観測で,実際には小さい惑星だと確認できるだろう.

別の説明としては,この惑星が広がった流出する大気を持つ「スーパーパフ」惑星であるというものが考えられる.

この惑星は軌道周期 ~542 日 (1.5 年),軌道長半径 1.4 au で,ボンドアルベド 0 を仮定すると 294 K となる.これは保守的なハビタブルゾーンの内縁に相当する.この惑星のような大きなガス惑星は居住可能な環境ではないだろうが,ハビタブルな系外衛星は持つかも知れない.

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