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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1912.10874
Haswell et al. (2019)
Dispersed Matter Planet Project Discoveries of Ablating Planets Orbiting Nearby Bright Stars
(Dispersed Matter Planet Project での近傍の明るい恒星を公転する蒸発する惑星の発見)
近傍の明るい主系列星 ~3000 個のうち ~40 個が,質量を失いつつある未発見の惑星の存在を示唆する,抑制された彩層放射を持つ.The Dispersed Matter Planet Project では,高精度の高頻度視線速度測定を用いてこれらの惑星を検出することを目的としている.
ここでは,2 つの惑星系 DMPP-1,DMPP-3 の観測結果のまとめと,DMPP-2 の全観測結果について報告する.
DMPP-2 系は,かじき座ガンマ型変光星 (γ-Doradus pulsator) である HD 11231 が中心星である.惑星は最小質量が 0.469 木星質量,軌道周期は 5.207 日である.60 回を超える視線速度観測からこの短周期惑星が検出された.
今回の炙られている惑星は,海王星砂漠 (短周期の中間質量の惑星が欠乏しているパラメータ領域) に関係する,短寿命のフェーズに存在している可能性がある.惑星から放出された星周ガスを観測することで,惑星の組成の解析が可能となる.そのため,蒸発する岩石惑星における観測的な系外地質学の研究を行うことが可能となる.
ケプラーの観測視野は狭く,さらにケプラーが発見する惑星は一般に遠方に存在しているため,詳細な研究が難しい.ケプラーが発見した USP 惑星に似たものは地球近傍にも存在するはずであるが,存在頻度が 0.5% であることを考えると,明るい近傍の天体を視線速度法での観測ターゲットとして USP 発見するためには多大な努力が必要である.
The Dispersed Matter Planet Project (DMPP) では,過去の恒星のスペクトル情報を元にして,短周期惑星を持っていることが期待される天体を観測対象に選出している.
この論文では,(i) トランジットするホットジュピターの観測からの推論を用いて発展させた,DMPP での観測対象の選定基準の動機と,その基礎となる仮説を説明し,(ii) その背後にある仮説を検証するために今回の初めて検出された 3 惑星の統計を用い,(iii) また DMPP-2 の発見と視線速度サーベイの方法論について説明する.
WASP-12b からの質量放出は,WASP-12 の周囲に薄い星周ガスを供給している.WASP-12 のスペクトルにおける Mg II h & k のスペクトル線のコア部分は,フラックスがゼロであることが観測されている.これは,この恒星の彩層放射が異常に完全に欠乏しているか,もしくは放射が何らかの物質によって吸収されているかのどちらかであると考えられる.WASP-12 の周りには質量を放出し続けている惑星 WASP-12b が存在しているため,後者の説明がより自然である.
また Ca II H & K 線のコアフラックスも異常に低く,視線方向の星間物質の柱密度は,観測された恒星の彩層活動による放射の少なさを説明するには不十分である.そのため,惑星から散逸した物質が恒星の周囲にトーラス状に存在している可能性が示唆される.
WASP-12 は,\(\log R’_{\rm HK}\) が測定されている恒星の分布からは異常に逸脱しており,-5.5 という値を示す.また,後の研究では近接系外惑星を持つ恒星では 1/4 が基準を下回る値を示すことが分かっている.
興味深いことに,散在星の主系列星のうち 1.5% は基準値よりも下にある.ここでは,これらの基準値より低い値を示す恒星は,未発見の炙られている近接惑星を持っているという仮説を提唱する.この仮説を検証するため,DMPP プロジェクトにおいて,\(\log R’_{\rm HK}<-5.1\) を示す明るい主系列星を観測対象として抽出して視線速度観測を行った.
スペクトル型:F5V
距離:134 pc
等級:V = 8.4
有効温度:6500 K
質量:1.44 太陽質量
半径:1.78 太陽半径
光度:1.27 太陽光度
年齢:20 億歳
HD 11231 は γ-Doradus (かじき座ガンマ型変光星) である.
最小質量:0.457 木星質量
軌道長半径:0.0664 AU
arXiv:1912.10874
Haswell et al. (2019)
Dispersed Matter Planet Project Discoveries of Ablating Planets Orbiting Nearby Bright Stars
(Dispersed Matter Planet Project での近傍の明るい恒星を公転する蒸発する惑星の発見)
概要
強く輻射を受けているいくつかの近接系外惑星は,異常に低い恒星彩層放射を示す恒星を公転している.ここでは,炙られている惑星からの質量放出によって供給されている星周ガスが異常の原因であると解釈し,この仮説を実証する統計を報告する.近傍の明るい主系列星 ~3000 個のうち ~40 個が,質量を失いつつある未発見の惑星の存在を示唆する,抑制された彩層放射を持つ.The Dispersed Matter Planet Project では,高精度の高頻度視線速度測定を用いてこれらの惑星を検出することを目的としている.
ここでは,2 つの惑星系 DMPP-1,DMPP-3 の観測結果のまとめと,DMPP-2 の全観測結果について報告する.
DMPP-2 系は,かじき座ガンマ型変光星 (γ-Doradus pulsator) である HD 11231 が中心星である.惑星は最小質量が 0.469 木星質量,軌道周期は 5.207 日である.60 回を超える視線速度観測からこの短周期惑星が検出された.
今回の炙られている惑星は,海王星砂漠 (短周期の中間質量の惑星が欠乏しているパラメータ領域) に関係する,短寿命のフェーズに存在している可能性がある.惑星から放出された星周ガスを観測することで,惑星の組成の解析が可能となる.そのため,蒸発する岩石惑星における観測的な系外地質学の研究を行うことが可能となる.
背景
初めて発見された系外惑星は短周期軌道の重い惑星だったが,低質量の惑星は初発見から 20 年近くの間よく分かっていなかった.しかし最近のケプラーによる観測結果では,低質量の超短周期惑星 (ultra-short period planet, USP planet) が複数発見されており,G 型主系列星のうち 0.51% が軌道周期 1 日未満の USP 惑星を持つ.これらの大部分は 2 地球半径より小さいサイズを持つ.ケプラーの観測視野は狭く,さらにケプラーが発見する惑星は一般に遠方に存在しているため,詳細な研究が難しい.ケプラーが発見した USP 惑星に似たものは地球近傍にも存在するはずであるが,存在頻度が 0.5% であることを考えると,明るい近傍の天体を視線速度法での観測ターゲットとして USP 発見するためには多大な努力が必要である.
The Dispersed Matter Planet Project (DMPP) では,過去の恒星のスペクトル情報を元にして,短周期惑星を持っていることが期待される天体を観測対象に選出している.
この論文では,(i) トランジットするホットジュピターの観測からの推論を用いて発展させた,DMPP での観測対象の選定基準の動機と,その基礎となる仮説を説明し,(ii) その背後にある仮説を検証するために今回の初めて検出された 3 惑星の統計を用い,(iii) また DMPP-2 の発見と視線速度サーベイの方法論について説明する.
異常に活動度の低い恒星
惑星からの質量放出と恒星活動度指標
ホットジュピター HD 209458b を取り囲む水素の外気圏が発見されて以降,高温な巨大惑星では質量損失は普遍的な現象であることを示唆する証拠が発見されている.特に高温なホットジュピターで軌道周期が 1.09 日の WASP-12b は,惑星のロッシュローブを満たす外気圏に囲まれていることが分かっている.この事は,強く輻射を受けるこの惑星が質量を失っていることを示唆している.WASP-12b からの質量放出は,WASP-12 の周囲に薄い星周ガスを供給している.WASP-12 のスペクトルにおける Mg II h & k のスペクトル線のコア部分は,フラックスがゼロであることが観測されている.これは,この恒星の彩層放射が異常に完全に欠乏しているか,もしくは放射が何らかの物質によって吸収されているかのどちらかであると考えられる.WASP-12 の周りには質量を放出し続けている惑星 WASP-12b が存在しているため,後者の説明がより自然である.
また Ca II H & K 線のコアフラックスも異常に低く,視線方向の星間物質の柱密度は,観測された恒星の彩層活動による放射の少なさを説明するには不十分である.そのため,惑星から散逸した物質が恒星の周囲にトーラス状に存在している可能性が示唆される.
The Dispersed Matter Planet Project でのターゲット選定
FGK 型星の恒星活動は一般に \(\log R’_{\rm HK}\) でパラメータ化することができる.これはカルシウムの Ca II H&K 線の彩層放射と,全体のボロメトリック放射との比から導出される数値である.主系列星の値はほぼ不変で,-5.1 以上の値を示す.これは活動的ではない太陽型星が示す基準レベルの数値であり,静穏な時期の太陽の値に相当する.WASP-12 は,\(\log R’_{\rm HK}\) が測定されている恒星の分布からは異常に逸脱しており,-5.5 という値を示す.また,後の研究では近接系外惑星を持つ恒星では 1/4 が基準を下回る値を示すことが分かっている.
興味深いことに,散在星の主系列星のうち 1.5% は基準値よりも下にある.ここでは,これらの基準値より低い値を示す恒星は,未発見の炙られている近接惑星を持っているという仮説を提唱する.この仮説を検証するため,DMPP プロジェクトにおいて,\(\log R’_{\rm HK}<-5.1\) を示す明るい主系列星を観測対象として抽出して視線速度観測を行った.
パラメータ
DMPP-2
別名:HD 11231スペクトル型:F5V
距離:134 pc
等級:V = 8.4
有効温度:6500 K
質量:1.44 太陽質量
半径:1.78 太陽半径
光度:1.27 太陽光度
年齢:20 億歳
HD 11231 は γ-Doradus (かじき座ガンマ型変光星) である.
DMPP-2b
軌道周期:5.2072 日最小質量:0.457 木星質量
軌道長半径:0.0664 AU
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