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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:2001.06836
Szabó et al. (2020)
Rotational properties of Hilda asteroids observed by the K2 mission
(K2 ミッションで観測されたヒルダ群小惑星の自転特性)

概要

ヒルダ群小惑星は小惑星帯のメインベルトの外縁,あるいはすぐ外を公転しており,木星との 2:3 平均運動共鳴にある.この群は複数の異なる分類があることで知られており,これはヒルダ群の起源が複合的であることを示唆している.すなわち,メインベルト外側やトロヤ群から現在の位置まで移動してきたと考えられる.

しかしヒルダ群についての詳細を理解するための包括的な研究を行う観測は依然として少ない.ここではケプラーの K2 ミッションで観測されたヒルダ群小惑星の 125 個の光度曲線を同定した.

その結果,ヒルダ群には複合した分類があるにも関わらず,自転周期とその振幅の分布において,木星のトロヤ群小惑星と非常に似た特徴を示すことを見出した.また LR グループ (大部分が C 型か X 型小惑星) のヒルダ群天体もこのルールに従う.

メインベルトの小惑星とは対照的に,ヒルダ群小惑星には非常に高速自転する天体が少ないという特徴がある.100 時間以上の周期の非常に遅い自転をするものの割合は 18% と驚くべき数値であり,これは太陽系内で独特の特徴である.

複数の自転周期の特徴を示すものの割合 (4%) と,光度曲線中に 3 回の極大を示すもの (5%) の存在頻度からは,連星になっている小惑星が多いことを示しており,ここではヒルダ群天体のうち 25% が連星になっていると推定した.

ヒルダ群について

ヒルダ群は,小惑星帯のメインベルトの外部から木星のトロヤ群小惑星の間の領域に存在しており,木星と 3:2 平均運動共鳴の状態にある.力学的な安定性のため,この群は固有要素空間において良く定義され,また 2 つの衝突族であるヒルダ族 (Hilda family) とシューバルト族 (Schubart family) が,平均軌道傾斜角がそれぞれ 3 度と 9 度の周囲に存在することが確認されている.

最近の推定では,サイズが 2 km より大きいヒルダ群小惑星は 1 万個以上存在し,サイズ分布の指数は α=0.38 と推定されている (Terai & Yoshida 2018).このべき乗則分布をサイズが 1 km の範囲にまで外挿すると,1 km より大きいヒルダ群小惑星は 105 個のオーダーで存在すると推定され,これはメインベルトに存在することが予想される 200 万個の小惑星の数%に相当する.またトロヤ群で 1 km より大きいものの推定個数である 100-200 万個の数%に相当する.
そのため,ヒルダ群小惑星の数はトロヤ群天体やメインベルト全体よりも 1-1.5 桁少ないものの,依然として太陽系小天体の多くを占める天体グループであり,メインベルトとトロヤ群の間を繋ぐ存在である.

ヒルダ群は木星との 3:2 平均運動共鳴により摂動を受け,これらの接触軌道要素は大きな変動を示す.ヒルダ群という名称は,小惑星 153 ヒルダに由来しており,これはこの群として初めて発見された天体である.

木星を基準とした回転座標系から見ると,典型的なヒルダ群小惑星の軌道は「ヒルダの三角形」を形成し,ループを描き,遠日点の三軸秤動点の周辺にかなりの時間にわたって滞在するが,近日点近くでは連続した秤動点にずっと速く移行する.このためヒルダ群の軌道に沿って 3 ヶ所の密度波が形成され,これらのうち 2 つは木星の実際の経度の 60° 先行した位置と後方の位置にある.

ヒルダ群とトロヤ群は存在領域が大きく重複しているが,これらの群は異なる安定性を持つため,群を互いに行き来した天体の頻度に関しては議論がある (Terai & Yoshida 2018).またヒルダ群とメインベルト外部の天体の間にも相互作用がある.そのため,位置と運動から,メインベルト小惑星とトロヤ群小惑星はどちらもヒルダ群の一員に寄与していると考えられる.

天体のサイズ分布のべき乗則の指数 α は,メインベルトの中では徐々に減少していることが知られており,明るい側では 0.76-0.56,暗い側では 0.46-0.40 となり,明白なパターンが見られない (Parker et al. 2008).ヒルダ群の指数である 0.38 程度という値は,メインベルト天体の指数の分布に適合する (Terai & Yoshida 2018).しかしトロヤ群はより急なサイズ分布を持, α=0.44 で,分布に明確な分断点が見られない (Szabó et al. 2007).このことは,トロヤ群の集団とメインベルトは異なる力学的進化を経由していることを反映している.

トロヤ群とメインベルト外部の小惑星は異なる分類にあることが示唆されている.メインベルト外部にある天体は,ほとんどがスペクトル型が C型 と X 型であるが,トロヤ群は D 型か P 型である.力学的な位置付けと同じく,ヒルダ群には D, P 型のトロヤ群小惑星と,C, X 型のメインベルト外部小惑星が観測されている.Wong et al. (2014) では,Red Hildas (R) と Less Red Hildas (LR) という名称を提案している.また Demeo & Carry (2013) では選択基準を gri slope と i-z のパラメータ空間内で定義した.これによると,C, X 型は LR グループ,P, D 型は R グループに属する.

観測

ケプラーの K2 ミッションで,ヒルダ群天体が観測された.K2 ミッションの Campaign 6-18 の間に 103 個のヒルダ群天体が検出された.このうち 22 個の複数回の検出があり,観測数の合計としては 125 回となる.

まとめ

  • ヒルダ群小惑星の周期-振幅分布は,トロヤ群天体のものと非常に類似している.実際,ヒルダ群とトロヤ群の自転特性は統計的には区別しづらい.
  • ヒルダ群の自転パラメータは,メインベルト小惑星のものとは明確に異なる.ヒルダ群には高速自転天体はわずかしか存在しない.しかし木星のトロヤ群の場合はこの割合はさらに低くなる.これは,メインベルトが起源であると考えられているにも関わらず,LR グループのヒルダ群でも同様の傾向が見られる.
  • ヒルダ群の下位グループのうち,トロヤ群的 (R グループ,D と P 型) とメインベルト的 (LR グループ,C と X 型) の分類は非常に似た自転特性を持っている.
  • K2 で検出されたヒルダ群小惑星の自転周期の中間値は 20.7 時間,平均は 54.8 時間である.どちらの値も既知のメインベルト小惑星のものを著しく超える.100 時間以上の非常に遅い自転をするものは,18% とこれまでになく高い割合である.
  • 二重周期を持った小惑星を 4 つ発見し,うち 2 例は連星であると考えるのがもっともらしい説明である.残りの 2 例は,連星もしくはタンブリング自転のどちらでも説明可能である.
  • 光度曲線に 3 つの極大を持つ天体を 5 個同定した.
  • ヒルダ群の連星の割合は小惑星帯の中では最も高く,おそらくトロヤ群の値も超える.

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