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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1510.06885
Zsom (2015)
A population-based Habitable Zone perspective
(存在数をベースにしたハビタブルゾーンの全体像)
ハビタブルゾーン内の惑星は、惑星の表面に液体の水を持つ。これまで、ハビタブルゾーンは恒星周りのシャープな領域として考えられてきた。これは、ある惑星と特定の特性からハビタブルゾーンの領域が計算されてきたからである。しかしこのようなアプローチは限定的である。それは、惑星の大気と地球物理的な特性は現時点では不明だが、これらは多様性があると考えられ、さらにそれらの特性は表面に液体の水が存在するかという状況に影響を及ぼすだろうと考えられるからである。
ここでは、恒星・惑星の特性をランダムな変数として取り扱い、各変数に対して確率分布関数 (Probability distribution function, PDF)を使用した。また、モンテカルロ計算と惑星の気候モデルを組み合わせることによって、ハビタブルゾーン内の惑星の存在数を生成した。
その結果、ハビタブルゾーンは内側の明確な境界を持つが、外側境界に関しては明確な境界を持たないということを示した。また、将来的に系外惑星の大気のデータから確率に制限をかけることに関しても議論した。
しかしこれは難しい問題である。現在の観測から得られるのは、惑星の質量か半径 (もしくはその両方)、恒星の特性 (特に惑星が受けるフラックス)である。これらの特性は、惑星表面の気候を決定するためには必要な情報であるが、決定するには不十分である。
ハビタブルゾーンは、惑星大気、地球物理学的性質、惑星の形成過程によって変化する。従って、様々な先行研究で様々な決め方がある。
例えば、炭素-ケイ酸塩の循環が、地球大気中の二酸化炭素量に影響しているという地球物理学的なプロセスがある(Walker et al. 1981)。ハビタブルゾーンに関する初めての研究は、このサイクルを含んでいなかった(Hart 1974)。従って、このサイクルを考慮した後の研究 (Kasting et al. 1993, Kopparapu et al. 2013)によるハビタブルゾーンよりも狭いハビタブルゾーンとなっている。
また、惑星の大気も重要である。初期大気由来、もしくは脱ガス由来の水素分子の大気を持つ惑星の場合、地球と同じような窒素/二酸化炭素/水蒸気大気よりも遠い場所でもハビタブルゾーン内となる(Pierrehumbert & Gaidos 2011)。また、大気中の雲も重要である(Selsis et al. 2007など)。
考えるパラメータは、
・惑星質量
・大気組成 (H2+N2+CO2, N2+CO2, N2のみ, CO2のみ, H2のみ)
・表面での大気圧
・アルベド
・相対湿度
・N2混合比
・CO2混合比
である。
受け取る輻射によってコンディションが大きく左右されるため、このことはハビタブルゾーンが明確な内縁を持つことと対応している。
ハビタブルゾーンの内縁に近い惑星は、ハビタブル惑星である可能性のある惑星の中では、トランジットを起こす確率と頻度が最も高いため、トランジット時の透過スペクトルから大気の特徴付けに適する対象であると考えられる。
系外惑星大気の温室効果が非常に強い場合は、中心星から離れた場所にある惑星でも居住可能な環境を保つことができる。言い換えれば、ハビタブルゾーンの外縁はオープンである (はっきりとした外縁は無い)。遠距離にあるハビタブル惑星は、将来的な惑星からの放射の直接撮像観測によって特徴付ける事ができるだろう。
観測で制限できていない特性のうち、表面での大気圧と惑星の大気組成は、惑星の気候に最も大きな影響を与える。系外惑星の居住可能性をよく知るためには、このような大気の特性に関する情報が必要不可欠である。
arXiv:1510.06885
Zsom (2015)
A population-based Habitable Zone perspective
(存在数をベースにしたハビタブルゾーンの全体像)
概要
系外惑星の観測において、得ることができる量は恒星の特性、惑星半径、惑星が受け取る恒星からのエネルギー程度である。これらの限られた情報から、系外惑星の居住可能性 (ハビタビリティ)について何が言えるかということについての研究を行った。ハビタブルゾーン内の惑星は、惑星の表面に液体の水を持つ。これまで、ハビタブルゾーンは恒星周りのシャープな領域として考えられてきた。これは、ある惑星と特定の特性からハビタブルゾーンの領域が計算されてきたからである。しかしこのようなアプローチは限定的である。それは、惑星の大気と地球物理的な特性は現時点では不明だが、これらは多様性があると考えられ、さらにそれらの特性は表面に液体の水が存在するかという状況に影響を及ぼすだろうと考えられるからである。
ここでは、恒星・惑星の特性をランダムな変数として取り扱い、各変数に対して確率分布関数 (Probability distribution function, PDF)を使用した。また、モンテカルロ計算と惑星の気候モデルを組み合わせることによって、ハビタブルゾーン内の惑星の存在数を生成した。
その結果、ハビタブルゾーンは内側の明確な境界を持つが、外側境界に関しては明確な境界を持たないということを示した。また、将来的に系外惑星の大気のデータから確率に制限をかけることに関しても議論した。
系外惑星の居住可能性について
系外惑星の気候がどうなっていて、その環境が居住可能かどうかというものは古くから考えられてきた話題である。この議論は、ハビタブルゾーンというコンセプトに簡単化される。つまりその惑星が表面に液体の水を持つか?という問題である。しかしこれは難しい問題である。現在の観測から得られるのは、惑星の質量か半径 (もしくはその両方)、恒星の特性 (特に惑星が受けるフラックス)である。これらの特性は、惑星表面の気候を決定するためには必要な情報であるが、決定するには不十分である。
ハビタブルゾーンは、惑星大気、地球物理学的性質、惑星の形成過程によって変化する。従って、様々な先行研究で様々な決め方がある。
例えば、炭素-ケイ酸塩の循環が、地球大気中の二酸化炭素量に影響しているという地球物理学的なプロセスがある(Walker et al. 1981)。ハビタブルゾーンに関する初めての研究は、このサイクルを含んでいなかった(Hart 1974)。従って、このサイクルを考慮した後の研究 (Kasting et al. 1993, Kopparapu et al. 2013)によるハビタブルゾーンよりも狭いハビタブルゾーンとなっている。
また、惑星の大気も重要である。初期大気由来、もしくは脱ガス由来の水素分子の大気を持つ惑星の場合、地球と同じような窒素/二酸化炭素/水蒸気大気よりも遠い場所でもハビタブルゾーン内となる(Pierrehumbert & Gaidos 2011)。また、大気中の雲も重要である(Selsis et al. 2007など)。
モデル
恒星・惑星の各パラメータに対して確率分布関数を考慮した。考えるパラメータは、
・惑星質量
・大気組成 (H2+N2+CO2, N2+CO2, N2のみ, CO2のみ, H2のみ)
・表面での大気圧
・アルベド
・相対湿度
・N2混合比
・CO2混合比
である。
結果
惑星が受け取る放射量が、地球が受け取っている放射量の 2 - 3倍より大きいか、惑星半径が 2 - 3地球半径より大きい (あるいはその両方を満たす)場合は、その惑星はハビタブル惑星では無いだろう。中心星に近く輻射を多く受けている場合は、表面の温度が水の沸点を超えてしまう。また惑星が大きすぎる場合は、固体の表面を持たない小型の天王星型惑星になってしまう。受け取る輻射によってコンディションが大きく左右されるため、このことはハビタブルゾーンが明確な内縁を持つことと対応している。
ハビタブルゾーンの内縁に近い惑星は、ハビタブル惑星である可能性のある惑星の中では、トランジットを起こす確率と頻度が最も高いため、トランジット時の透過スペクトルから大気の特徴付けに適する対象であると考えられる。
系外惑星大気の温室効果が非常に強い場合は、中心星から離れた場所にある惑星でも居住可能な環境を保つことができる。言い換えれば、ハビタブルゾーンの外縁はオープンである (はっきりとした外縁は無い)。遠距離にあるハビタブル惑星は、将来的な惑星からの放射の直接撮像観測によって特徴付ける事ができるだろう。
観測で制限できていない特性のうち、表面での大気圧と惑星の大気組成は、惑星の気候に最も大きな影響を与える。系外惑星の居住可能性をよく知るためには、このような大気の特性に関する情報が必要不可欠である。
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