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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1511.01533
Kane et al. (2015)
On the Stellar Companion to the Exoplanet Hosting Star 30 Arietis B
(系外惑星を持つ恒星おひつじ座30番星Bの伴星について)

概要

おひつじ座30番星 (30 Arietis, 30 Ari)の観測を行った。その結果、おひつじ座30番星Bは、恒星の伴星と惑星の両方を持つ天体であることが判明した。Keckの補償光学を用いた撮像では、恒星の伴星を直接撮像することに成功した。また視線速度での観測も確認した。

なお、この発見は Roberts et al. (2015)の結果を追認する、独立した観測結果である。

おひつじ座30番星系について

おひつじ座30番星 (30 Ari)

この恒星は実視連星 (visual binary)である事が分かっている。38.1"離れた、スペクトル型がF5VとF6Vの恒星からなっている。それぞれ、30 Ari A、30 Ari Bである。(おひつじ座30番星A、おひつじ座30番星B)

どちらも明るく、実視等級はそれぞれ 6.48, 7.09等級である。さらに 30 Ari Aは分光連星である事が分かっている(Adam & Joy 1919, Morbey & Brosterhus 1974)。30 Ari Aの伴星は、軌道周期 ~1.1日である。

おひつじ座30番星B (30 Ari B)

この恒星は、別名として HD 16232, HIP 12184, HR 764などを持つ。この恒星の周りには、~ 10木星質量程度の惑星が発見されている(Guenther et al. 2009)。視線速度法により、軌道周期は 335日と判明している。

この恒星は比較的明るい恒星だが、このような早期型のスペクトルを持つ恒星は吸収線が少なく、また恒星の自転周期が速いため一般に視線速度観測は難しい。したがって30 Ari Bは明るさの割にあまり観測されてこなかった。しかし最近の観測で、恒星の伴星が検出され(Riddle et al. 2015)、さらに Roberts et al. (2015)でも確認された。
史上2個目、4重連星の中の惑星 - アストロアーツ

この恒星までの距離は 40.8 pc、質量は 1.16太陽質量、半径は 1.13太陽半径である。

おひつじ座30番星Bb (30 Ari Bb)

おひつじ座30番星Bの周りには惑星が発見されている。今回の観測ではそのパラメータの再解析も行った。その結果、

軌道周期:345.3日
軌道離心率:0.18
最小質量:6.6木星質量
軌道長半径:1.01 AU

となった。軌道周期は過去の観測よりやや短く、軌道離心率はやや小さく、最小質量も小さくなった。軌道長半径は過去の結果よりやや大きくなった。

おひつじ座30番星Bの伴星

観測の結果おひつじ座30番星Bは、0.536"離れた位置に伴星を持つことが確認された。これは投影距離にすると 21.9 AUに対応する。

伴星のスペクトルタイプは M1 - M3、質量は 0.29太陽質量以上、軌道周期は 95年未満である。また軌道長半径を 21.9 AUとした場合、軌道離心率は 0.75より小さい値という制限を与える。

系の全体像

従って、おひつじ座30番星の全体像は以下のとおりである。

まずほぼ同程度の大きさの2つのF型星である 30 Ari Aと30 Ari Bが、1500 AUほど離れた状態で連星を形成している。さらに30 Ari Aは周期 ~ 1.1日の小さい伴星を持っている。30 Ari Bは 1 AUほどの軌道の惑星 (30 Ari Bb)をもち、さらに離れた位置に別の伴星を持つ。

すなわち、30 Ari Bbは、四重連星系中での惑星ということになる。

伴星の命名について

連星と惑星の命名の規則に従った場合、30 Ari Bは 30 Ari BAと 30 Ari BBの連星ということになり、従って惑星は 30 Ari BA bとなる。
(おひつじ座30番星B → おひつじ座30番星BAとおひつじ座30番星BB、惑星はおひつじ座30番星BA b)

Washington Multiplicity Catalog standard (Raghaven et al. 2010)では、30 Ari B → 30 Ari Ba, Bbとすることが推奨されている。しかしこの命名法では惑星の名称の慣例と被ってしまう。

新しく発見された伴星を 30 Ari Cとした場合 (Roberts et al. (2015)でも同様に提案されている)、惑星は 30 Ari Bbのままとなる。






アストロアーツのリンク先にもありますが、この系は 四重連星中での2例目の惑星発見となります。
1例目の PH1は初めから四重連星中に発見された惑星ですが、このおひつじ座30番星Bbの場合は、先に惑星が発見されていたため当初は三重連星中の惑星と見なされており、後にさらなる伴星が発見されたため、2例目の四重連星中の惑星となりました。

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