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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03063
Kurokawa & Inutsuka (2015)
On the Radius Anomaly of Hot Jupiters: Reexamination of the Possibility and Impact of Layered Convection
(ホットジュピターの半径異常について:層対流の可能性と影響の再検討)
その結果、重元素の単調な勾配を持つケースでは、組成不均質の効果は限定的であることが判明した。
ホットジュピターの形成から 1 Gyrの間は層対流は発達せず、代わりに全体的な対流 (overturning convection)が発達する。弾ねう温度勾配よりも急な温度勾配は、Ledouxの安定条件の安定な状態で制限される。重元素が増加した効果は、組成不均質による半径収縮の遅れの効果を相殺する。
さらに、層対流を人工的に入れた場合も、ホットジュピターの半径異常を説明するためには非常に薄い対流の層 (~ 10 - 103 cm)が必要である。このような非常に薄い層を持つ対流の長時間安定性は更なる研究が必要である。
従ってこの研究での判定条件が正しければ、単調な重元素分布の勾配だけではホットジュピターの異常半径の説明は難しい。
・恒星の入射フラックスによって駆動されるもの (Showman & Guillot 2002など)
・潮汐によるもの (Bodenheimer et al. 2001など)
・収縮の遅れによるもの (Burrows et al. 2007, Chabrier & Baraffe 2007など)
系外惑星の観測の統計からは、半径異常と中心星からの入射フラックスには相関があることが分かっている (Demory & Seager 2011, Weiss et al, 2013)。しかし半径異常を説明するためのプロセスに関しては未だにコンセンサスが得られていない。
Chabrier & Baraffe (2007)では、不均一な惑星内部での層対流が、ホットジュピターの半径異常を説明すると提案した。また Leconte & Chabrier (2012, 2013)では、太陽系のガス惑星でもこのメカニズムが働いていると提案されている。このモデルでは、ガス惑星の重元素量はこれまで想定されていた量よりも 30 - 60%多い (Leconte & Chabrier 2012)。またこのメカニズムで、土星の光度問題を解決できるとした (Leconte & Chabier 2013)。
また、輻射を受けている大気の解析モデル (Guillot 2010)を、オパシティには Freedman et al. (2008)のロスランド平均オパシティを用いている。
1 Mbar以上の領域では、conductive opacityに Potekhin (1999)、水素・ヘリウムの状態方程式は Saumon et al. (1995)、重元素に関しては SESAME EOS for water (Lyon & Johnson 1992)を用いている。
そのため、少なくとも単調な組成勾配を持つ場合に関しては、組成の不均質だけでホットジュピターの半径異常を説明することは困難であると考えられる。
arXiv:1511.03063
Kurokawa & Inutsuka (2015)
On the Radius Anomaly of Hot Jupiters: Reexamination of the Possibility and Impact of Layered Convection
(ホットジュピターの半径異常について:層対流の可能性と影響の再検討)
概要
観測からは、多くのホットジュピターが理論的に予測されるよりも異常に大きな半径を持つことが分かっている。この半径異常を説明するための説として、組成の不均質による層対流 (layered convection)が提案されている。この層対流の影響の再検討を行うため、線型解析に基づく判定条件を用いて、進化の各タイムステップでの対流の状態を決めることによって進化の計算を行った。その結果、重元素の単調な勾配を持つケースでは、組成不均質の効果は限定的であることが判明した。
ホットジュピターの形成から 1 Gyrの間は層対流は発達せず、代わりに全体的な対流 (overturning convection)が発達する。弾ねう温度勾配よりも急な温度勾配は、Ledouxの安定条件の安定な状態で制限される。重元素が増加した効果は、組成不均質による半径収縮の遅れの効果を相殺する。
さらに、層対流を人工的に入れた場合も、ホットジュピターの半径異常を説明するためには非常に薄い対流の層 (~ 10 - 103 cm)が必要である。このような非常に薄い層を持つ対流の長時間安定性は更なる研究が必要である。
従ってこの研究での判定条件が正しければ、単調な重元素分布の勾配だけではホットジュピターの異常半径の説明は難しい。
ホットジュピターの半径異常
複数のモデル
多くのホットジュピターは、水素とヘリウムからなるガス惑星のモデルが予測するよりも大きい半径を持っている (Baraffe et al. 2010, 2014など)。この半径異常を説明するメカニズムとしては複数の提案がある。この結果は大きく 3種類に分けられる。・恒星の入射フラックスによって駆動されるもの (Showman & Guillot 2002など)
・潮汐によるもの (Bodenheimer et al. 2001など)
・収縮の遅れによるもの (Burrows et al. 2007, Chabrier & Baraffe 2007など)
系外惑星の観測の統計からは、半径異常と中心星からの入射フラックスには相関があることが分かっている (Demory & Seager 2011, Weiss et al, 2013)。しかし半径異常を説明するためのプロセスに関しては未だにコンセンサスが得られていない。
組成不均質と層対流
惑星内部での層対流が、ガス惑星の収縮を遅らせるというモデルが提案されている (Chabrier & Baraffe 2007)。このモデルでは、惑星内部での組成の不均質が、大きいスケールでの対流の発生を阻害するという状況を想定している。代わりに、拡散界面 (diffusive interface)によって分割された層対流が形成されるとする (Radko 2003, 2005など)。非効率的な熱輸送が超断熱的な温度勾配を作り、惑星の収縮が遅れる。Chabrier & Baraffe (2007)では、不均一な惑星内部での層対流が、ホットジュピターの半径異常を説明すると提案した。また Leconte & Chabrier (2012, 2013)では、太陽系のガス惑星でもこのメカニズムが働いていると提案されている。このモデルでは、ガス惑星の重元素量はこれまで想定されていた量よりも 30 - 60%多い (Leconte & Chabrier 2012)。またこのメカニズムで、土星の光度問題を解決できるとした (Leconte & Chabier 2013)。
計算モデル
惑星は、1次元の静水圧平衡の式を Henyey法を用いて解いている。また、輻射を受けている大気の解析モデル (Guillot 2010)を、オパシティには Freedman et al. (2008)のロスランド平均オパシティを用いている。
1 Mbar以上の領域では、conductive opacityに Potekhin (1999)、水素・ヘリウムの状態方程式は Saumon et al. (1995)、重元素に関しては SESAME EOS for water (Lyon & Johnson 1992)を用いている。
結果
惑星内部での対流の状態を、単調な組成勾配を持つ内部構造のホットジュピターにおいて自己無矛盾に解いた結果、層対流は初めの 1 Gyrの間発達せず、組成の不均質による惑星半径への効果は限定的であることが判明した。層対流は初期の段階では存在しないため、層の厚みの仮定は進化に影響を与えない。そのため、少なくとも単調な組成勾配を持つ場合に関しては、組成の不均質だけでホットジュピターの半径異常を説明することは困難であると考えられる。
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