×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.03663
Quintana et al. (2015)
Giant Impacts on Earth-like Worlds
(地球類似環境への巨大衝突)
これまでのこの巨大衝突段階の数値モデルには、2つの制限があった。1つは、N体モデルの大部分では2体衝突の場合は完全合体を仮定していることである。2つ目は、これらのN体のカオス的な振る舞いを理解するための現実性に欠けるという点である。この2点を解決するため、最近開発されたコードを用いて多数のN体シミュレーションを行った。これは衝突時の破壊による破片の生成や、"hit-and-run衝突" を含むモデルである。
(※ "hit-and-run collision" は、合体や破壊によって大規模な質量の増加or現象を伴わず、衝突された側の自転速度の増加や外層の剥ぎ取りなどが起きるタイプの衝突のこと。"hit-and-run" は直訳すれば「轢き逃げ」や「当て逃げ」に相当する。いわゆる当て逃げ型の天体衝突のことである。)
ここでは、太陽を模した恒星の周りに木星と土星と同じ惑星を置き、その系での惑星の集積の計算を 140シミュレーション行った。この計算には衝突による破片形成などが含まれている。また比較のため、衝突時に完全合体を仮定した計算も同じく 140シミュレーション行った。
その結果、破片形成の効果が入っている場合のシミュレーション結果は、最終的に形成される惑星の質量や数は、完全合体を仮定した場合と同様であった。しかし最終結果に至るまでの進化経路は大きく異なる。破片形成を無視した場合は、微惑星が惑星に集積したり系から弾き出されるまでの時間を過小評価してしまう。
また、破片形成入りのシミュレーションの 90%で、地球類似の惑星が形成された。それらの惑星への巨大衝突を、衝突時のエネルギーの観点からパラメータ化を行った。その結果、164個のち旧類似惑星のうち 15個だけが、大気をすべて奪うほどのエネルギーの巨大衝突を経験した。
大気のおよそ半分を奪う衝突は、月を形成するのに必要な巨大衝突と同程度のエネルギーが必要である。また、ほぼ全ての地球類似惑星は、最低1回の月形成が可能なエネルギーを超えた巨大衝突を経験する。このような巨大衝突の平均回数は、2 Gyrの計算時間の間に 3.0回であった。一番最後の巨大衝突の中央値は、計算開始後 43 Myrであった。
1. 中心星か外側のガス惑星に衝突したものは計算から取り除く
2. 中心星から100 AUの距離を超えたものは計算から取り除く
3. 完全合体では、新しい天体の質量は、衝突体の質量と、ターゲット天体の質量の和である
4. かすめるような衝突 (grazing collision)では、集積か破壊が発生する。半分以下のプロジェクタイルがターゲット天体と相互作用するときにかすめるような衝突が発生する
5. インパクトパラメータ b < ターゲット天体半径 の時の衝突は、集積か破壊が発生する
6. "hit-and-run" (Asphaug et al. 2006, Genda et al. 2012)の場合、ターゲット天体は多くの質量を獲得 or 損失しないが、衝突体は破壊する
初期条件としては、微惑星の暴走的な成長 (runaway growth)と寡占的な成長 (origarchic growth)の終了後を想定している。26個の原始惑星と、260個の微惑星を置く。原始惑星は半径が 0.56地球半径 (~ 3500 km)の火星程度のサイズで0.093地球質量のものから、0.26地球半径 (~ 1600 km)の月程度のサイズで 0.0093地球質量のものまでを想定している。密度は全て 3 g cm-3である。
初期分布は 0.35 - 4 AUで、面密度は軌道長半径の -3/2乗になるような分布をもたせている。合計の円盤の質量は 4.85地球質量である。初期の起動はほぼ円軌道であり、同一平面上に置く。また木星質量の惑星を 5.2 AUに、土星質量の惑星を 9.6 AUに置く。
破壊で生じる破片は、質量が 0.0047地球質量、0.2地球半径 (~ 1300 km)としている。
arXiv:1511.03663
Quintana et al. (2015)
Giant Impacts on Earth-like Worlds
(地球類似環境への巨大衝突)
概要
地球型惑星の形成の最終段階は巨大衝突 (giant impact)が占める。巨大衝突は、形成する全ての惑星に対して、成長・力学的安定性・組成・居住可能性といった要素を決める上で重要な影響がある。これまでのこの巨大衝突段階の数値モデルには、2つの制限があった。1つは、N体モデルの大部分では2体衝突の場合は完全合体を仮定していることである。2つ目は、これらのN体のカオス的な振る舞いを理解するための現実性に欠けるという点である。この2点を解決するため、最近開発されたコードを用いて多数のN体シミュレーションを行った。これは衝突時の破壊による破片の生成や、"hit-and-run衝突" を含むモデルである。
(※ "hit-and-run collision" は、合体や破壊によって大規模な質量の増加or現象を伴わず、衝突された側の自転速度の増加や外層の剥ぎ取りなどが起きるタイプの衝突のこと。"hit-and-run" は直訳すれば「轢き逃げ」や「当て逃げ」に相当する。いわゆる当て逃げ型の天体衝突のことである。)
ここでは、太陽を模した恒星の周りに木星と土星と同じ惑星を置き、その系での惑星の集積の計算を 140シミュレーション行った。この計算には衝突による破片形成などが含まれている。また比較のため、衝突時に完全合体を仮定した計算も同じく 140シミュレーション行った。
その結果、破片形成の効果が入っている場合のシミュレーション結果は、最終的に形成される惑星の質量や数は、完全合体を仮定した場合と同様であった。しかし最終結果に至るまでの進化経路は大きく異なる。破片形成を無視した場合は、微惑星が惑星に集積したり系から弾き出されるまでの時間を過小評価してしまう。
また、破片形成入りのシミュレーションの 90%で、地球類似の惑星が形成された。それらの惑星への巨大衝突を、衝突時のエネルギーの観点からパラメータ化を行った。その結果、164個のち旧類似惑星のうち 15個だけが、大気をすべて奪うほどのエネルギーの巨大衝突を経験した。
大気のおよそ半分を奪う衝突は、月を形成するのに必要な巨大衝突と同程度のエネルギーが必要である。また、ほぼ全ての地球類似惑星は、最低1回の月形成が可能なエネルギーを超えた巨大衝突を経験する。このような巨大衝突の平均回数は、2 Gyrの計算時間の間に 3.0回であった。一番最後の巨大衝突の中央値は、計算開始後 43 Myrであった。
計算の特徴とセットアップ
N体計算を行っている。微惑星と原始惑星に関しては、1. 中心星か外側のガス惑星に衝突したものは計算から取り除く
2. 中心星から100 AUの距離を超えたものは計算から取り除く
3. 完全合体では、新しい天体の質量は、衝突体の質量と、ターゲット天体の質量の和である
4. かすめるような衝突 (grazing collision)では、集積か破壊が発生する。半分以下のプロジェクタイルがターゲット天体と相互作用するときにかすめるような衝突が発生する
5. インパクトパラメータ b < ターゲット天体半径 の時の衝突は、集積か破壊が発生する
6. "hit-and-run" (Asphaug et al. 2006, Genda et al. 2012)の場合、ターゲット天体は多くの質量を獲得 or 損失しないが、衝突体は破壊する
初期条件としては、微惑星の暴走的な成長 (runaway growth)と寡占的な成長 (origarchic growth)の終了後を想定している。26個の原始惑星と、260個の微惑星を置く。原始惑星は半径が 0.56地球半径 (~ 3500 km)の火星程度のサイズで0.093地球質量のものから、0.26地球半径 (~ 1600 km)の月程度のサイズで 0.0093地球質量のものまでを想定している。密度は全て 3 g cm-3である。
初期分布は 0.35 - 4 AUで、面密度は軌道長半径の -3/2乗になるような分布をもたせている。合計の円盤の質量は 4.85地球質量である。初期の起動はほぼ円軌道であり、同一平面上に置く。また木星質量の惑星を 5.2 AUに、土星質量の惑星を 9.6 AUに置く。
破壊で生じる破片は、質量が 0.0047地球質量、0.2地球半径 (~ 1300 km)としている。
PR
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック