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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.06471
Gaidos et al. (2015)
The Enigmatic and Ephemeral M Dwarf System KOI 6705: Cheshire Cat or Wild Goose?
(不可解かつ儚いM型矮星系 KOI 6705:チェシャ猫か野生のガンか?)
この系の中心星は、可視光線と赤外線でのスペクトル観測から、M型主系列星 (矮星)で、有効温度 3327 K、金属量が [Fe/H] = -0.08、0.31太陽半径、0.28太陽質量である。また太陽系からの距離は 70 pcである。この恒星の空間運動の様子、自転周期、Hα線での放射の欠乏から、銀河の "薄い円盤 (thin disk)" の一員であると考えられる。
その一方で、赤外線領域に赤外超過が確認されており、これは非常に若い恒星の周りによく存在するダスト円盤を持っている可能性を示唆している。
仮にこの恒星で検出された KOI 6705.01のシグナルが惑星によるものであるとすると、トランジット深さが 60 ppmであるということから、惑星の半径は 0.26地球半径となり、月と同程度の大きさの天体となる。しかしトランジットの継続時間 (3時間よりも長い程度)と、トランジット時刻の変動は異常な数値を示す。観測期間の初めの 2年間はシグナルは検出されず、後半の 2年間でシグナルが増加するという経緯を辿っている。これらの特徴は、信じがたいような惑星の軌道と組成の特徴を必要とする。
従って、このシグナルが惑星によるものという説明は除外される。ただし、ダスト雲によるものであるという可能性についてはこの限りではない。
この得意なシグナルの原因について、背景星の混入、天球面上での近隣の星の散乱光、検出器の読出チャネル間の電子的なクロストークによるものなど、幾つかの原因が引き起こす偽陽性 (false positive)の可能性について検討したが、これらの可能性も除外された。
KOI 6705.01のシグナルに対するもっともらしい説明は、KIC 6423922からの光を受けている検出器のカラムでの電荷輸送の非効率による擬陽性と、1.99日周期の食連星の両方による効果だというものである。シグナルが徐々に強くなったのは、CCDが放射によってダメージを受けたからだという可能性がある。
謎の光度曲線の解析の結果、機器に起因する偽陽性 (誤検出)であるだろう、という内容。論文のサブタイトルがなかなか謎で、「チェシャ猫か野生のガンか? (Cheshire Cat or Wild Goose?)」というサブタイトルが付けられています。
チェシャ猫はご存知、「不思議の国のアリス」に登場する猫 (あるいはその元ネタとなった架空の猫)で、ニヤニヤ笑いを残して姿を消してしまう猫のことです。
一方の野生のガンというのは今ひとつピンときませんが、英語では "wild goose chase" という語句で、「無駄なこと」とか「骨折り損」という意味になるようです。例えば、"go on a wild-goose" という表現で「無駄な探索をする」という意味になります。野生のガンは捕らえるのが難しく、なおかつ捕らえた所で価値はあまり高くないということから、このような表現が使われるようです。
これらの内容を踏まえると、チェシャ猫というのはこの謎のシグナルが正体不明のまま掴みどころもなく消えてしまう様を、野生のガンというのは謎のシグナルの正体を追い求めるのは大変だが、正体を掴んでも得られるものは少ない、という事を表現したのだろうと推測できます。
実際にこのシグナルは解析の結果惑星ではなさそうであり、検出器の不具合によって生み出された偽陽性でしかなかったということのようなので、まさしくサブタイトル通りの結果になってしまったと言えます。
arXiv:1511.06471
Gaidos et al. (2015)
The Enigmatic and Ephemeral M Dwarf System KOI 6705: Cheshire Cat or Wild Goose?
(不可解かつ儚いM型矮星系 KOI 6705:チェシャ猫か野生のガンか?)
概要
ケプラー宇宙望遠鏡の光度曲線から、KIC 6423922に 0.995日周期の惑星的なシグナルの存在を確認した (KOI 6705.01)。この系の中心星は、可視光線と赤外線でのスペクトル観測から、M型主系列星 (矮星)で、有効温度 3327 K、金属量が [Fe/H] = -0.08、0.31太陽半径、0.28太陽質量である。また太陽系からの距離は 70 pcである。この恒星の空間運動の様子、自転周期、Hα線での放射の欠乏から、銀河の "薄い円盤 (thin disk)" の一員であると考えられる。
その一方で、赤外線領域に赤外超過が確認されており、これは非常に若い恒星の周りによく存在するダスト円盤を持っている可能性を示唆している。
仮にこの恒星で検出された KOI 6705.01のシグナルが惑星によるものであるとすると、トランジット深さが 60 ppmであるということから、惑星の半径は 0.26地球半径となり、月と同程度の大きさの天体となる。しかしトランジットの継続時間 (3時間よりも長い程度)と、トランジット時刻の変動は異常な数値を示す。観測期間の初めの 2年間はシグナルは検出されず、後半の 2年間でシグナルが増加するという経緯を辿っている。これらの特徴は、信じがたいような惑星の軌道と組成の特徴を必要とする。
従って、このシグナルが惑星によるものという説明は除外される。ただし、ダスト雲によるものであるという可能性についてはこの限りではない。
この得意なシグナルの原因について、背景星の混入、天球面上での近隣の星の散乱光、検出器の読出チャネル間の電子的なクロストークによるものなど、幾つかの原因が引き起こす偽陽性 (false positive)の可能性について検討したが、これらの可能性も除外された。
KOI 6705.01のシグナルに対するもっともらしい説明は、KIC 6423922からの光を受けている検出器のカラムでの電荷輸送の非効率による擬陽性と、1.99日周期の食連星の両方による効果だというものである。シグナルが徐々に強くなったのは、CCDが放射によってダメージを受けたからだという可能性がある。
謎の光度曲線の解析の結果、機器に起因する偽陽性 (誤検出)であるだろう、という内容。論文のサブタイトルがなかなか謎で、「チェシャ猫か野生のガンか? (Cheshire Cat or Wild Goose?)」というサブタイトルが付けられています。
チェシャ猫はご存知、「不思議の国のアリス」に登場する猫 (あるいはその元ネタとなった架空の猫)で、ニヤニヤ笑いを残して姿を消してしまう猫のことです。
一方の野生のガンというのは今ひとつピンときませんが、英語では "wild goose chase" という語句で、「無駄なこと」とか「骨折り損」という意味になるようです。例えば、"go on a wild-goose" という表現で「無駄な探索をする」という意味になります。野生のガンは捕らえるのが難しく、なおかつ捕らえた所で価値はあまり高くないということから、このような表現が使われるようです。
これらの内容を踏まえると、チェシャ猫というのはこの謎のシグナルが正体不明のまま掴みどころもなく消えてしまう様を、野生のガンというのは謎のシグナルの正体を追い求めるのは大変だが、正体を掴んでも得られるものは少ない、という事を表現したのだろうと推測できます。
実際にこのシグナルは解析の結果惑星ではなさそうであり、検出器の不具合によって生み出された偽陽性でしかなかったということのようなので、まさしくサブタイトル通りの結果になってしまったと言えます。
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