忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1511.07831
Abbot (2015)
A proposal for climate stability on H2-greenhouse planets
(H2温室効果惑星における気候安定性についての提案)

概要

標準的なハビタブルゾーンよりも遠方にある地球型惑星であっても、厚い H2大気を保持している場合は、水素分子同士の衝突誘起吸収 (collision-induced absorption, CIA)による温室効果によって表面で液体の水を保持するだけの温度を実現することが出来る。しかし気候フィードバックによる気候の安定化が存在しない場合は、惑星の居住可能性は偶然的かつ短い期間のものになってしまうと考えられる。ここでは、このような惑星におけて、生物学的機能のみを必要とする、気候の安定化にはたらくフィードバック機構を提案する。

例えば、H2の起源が惑星内部に起因する場合、メタン細菌などの水素分子を消費する生命は気候の安定化に寄与することが出来る。平衡温度に正の温度擾乱が加えられた場合、生命による水素分子の消費量は増加し、それに伴って惑星を冷却する効果がある。これは平衡な気候が復元されるまで続く。このようなフィードバック機構の存在可能性は、水素大気の温室効果が働いている惑星も宇宙生物学 (astrobiology)的に興味深いターゲットとなり得ることを示す。

研究背景

惑星の居住可能性 (ハビタビリティ、habitability)は、惑星の表面に水が液体で存在できるかどうかで決まっている。ある惑星が宇宙生物学的に興味深い対象であるためには、生物の大進化 (macroevolution)のタイムスケール、少なくとも数千万年もの間は気候が安定して居住可能性が維持されている必要性がある。

地球はおよそ 40億年もの間、その期間に太陽のフラックスは 50%程度増加しているにも関わらず気候は安定に保たれている(Sagan & Mullen 1972)。これはシリケイトの風化によるフィードバック機構が安定化に寄与しているからだと考えられている (Walker et al. 1981)。

標準的なハビタブルゾーンより遠方であっても、厚い水素大気を持つ惑星では、水素分子同士の衝突誘起吸収による温室効果によって表面で水を液体の状態で保持できることが最近指摘されている (Stevenson 1990, Pierrehumbert & Gaidos 2011)。これは近年発見が増えているスーパーアースでの居住可能性に重要である可能性がある。このようなタイプの惑星における生物の指標 (biosignature)に関する研究には、Seager et al. (2013)がある。しかしこのような惑星では気候の安定化に作用するフィードバック機構が存在せず、居住可能性は偶発的なものか、短い期間のものになる可能性が指摘されている (Wordswarth 2012)。

モデルでの仮定

このモデルにおけるもっとも重要な仮定は、生物学的なプロセスは温度依存性があり、なおかつある温度でそのプロセスが最大になる (それより高温・低温では効率が減少する)というものである。地球の生体系もこのような傾向に従い、これに従わない現実的な系は考えづらい。

また、惑星は中心星から十分遠方であり、放射温度は 60 Kかそれ以下の状態を仮定する。この場合、放射している温度付近では水素分子は光学的に厚く、また二酸化炭素、メタン、水などの他の温室効果ガスは、蒸気圧が低すぎるためその大気圧では寄与しない (Pierrehumbert & Gaidos 2011)。そのためこれらの分子種は長波長での放射に寄与せず、水素分子のみが表面温度を決定する温室効果ガスとなる。

安定化に寄与する生物学的な機構

大気の水素分子は惑星の内側から、直接脱ガスで供給されるか、あるいは蛇紋石化作用 (serpentinization)によって供給されるとする。大きな水素エンベロープを持った地球型惑星がその例である。仮にそのような惑星が表面で液体の水を保持出来るだけの水素大気を持てば、その惑星には生命が存在できる可能性がある。例えばメタン菌である。

メタン菌は、
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O
という反応で水素を消費する。

消費に必要な二酸化炭素は、同じく惑星内部からの脱ガスか、あるいは形成時の大気をそのまま保持しているなどといった起源が考えられる。とにかく、水素分子を消費するという生物学的機構が存在することが重要である。






アストロバイオロジー的な論文です。
地球の気候はウォーカーフィードバックのような気候の安定化作用が存在していますが、水素主体の大気の場合はそれが存在しない可能性が指摘されていました。ここでは、メタン菌のような水素を消費する生命体が存在した場合は、それが気候の安定化のためのフィードバック機構となり得るということが提案されています。

それにしても、生命が誕生・存続・進化するために必要な気候の安定化を、生命自身によるフィードバックによって実現するというのは、あり得る話なんでしょうか…。

拍手[0回]

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック