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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1511.08360
de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos (2015)
From horseshoe to quasi-satellite and back again: the curious dynamics of Earth co-orbital asteroid 2015 SO2
(馬蹄形軌道と準衛星軌道との行き来:地球と同じ軌道を公転する小惑星 2015 SO2の興味深い力学)

概要

地球とほぼ同じ軌道で太陽の周りを公転し、馬蹄形軌道 (horseshoe orbit)をとる天体は、実用的な面でも興味深い対象である。地球からのアクセスが比較的容易であるため、サンプルリターンミッションの行き先としても適している。このような小惑星は、"co-orbital asteroid"と呼ばれる。ここでは、地球近傍小惑星 (Near Earth Asteroid, NEA)の一つである 2015 SO2は、回帰性の馬蹄形軌道と準衛星 (quasi-satellite)を行き来する軌道を持つ事を明らかにする。

小惑星 2015 SO2は、現在は地球とほぼ同じ軌道を公転しており、このような天体はこれが 9例目である。地球との 1:1平均運動共鳴 (mean motion resonance, MMR)の内側に入る他に、この天体は近日点引数 (argument of periherion)が 270°で秤動 (libration)する古在共鳴に入っている。

2015 SO2は、他の地球近傍小惑星とは異なり、地球と同じ軌道の領域の付近に、数十万年の間留まることが出来る。

これまでの co-orbital asteroid

馬蹄形軌道で長期にわたって安定な小惑星の存在は、 Hollabaugh & Everhart (1973)によって予測されていた。しかし、Wiegert et al. (1997)によって、3753 Cruithne (1986 TO, 日本語表記は "クルースン" が有名)がそのような天体だと判明するまでは、発見例は存在しなかった。

初めての co-orbital asteroid の発見から 20年近くが経過するが、そのような小惑星の発見は非常に少数に留まっている。これまでに発見されているものは、

・トロヤ群天体 (1つ)
2010 TK7 (Connors et al. 2011)

・準衛星 (4つ)
164297 (2004 GU9) (Connors et al. 2004, Mikkola et al. 2006, Wajer 2010)
277810 (2006 FV35 (Wiegert et al. 2008, Wajer 2010)
2013 LX28 (Connors et al. 2014)
2014 OL339 (de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos 2014)

・馬蹄型軌道の小惑星 (8つ)
3753 (Wiegert et al. 1997, 1998)
85770 (1998 UP1)
54509 YORP (2000 PH5) (Wiegert et al. 2002, Margot & Nicholson 2003)
2001 GO2 (Wiegert et al. 2002, Margot & Nicholson 2003, Brasser et al. 2004)
2002 AA29 (Connors et al. 2002, Brasser et al. 2004)
2003 YN107 (Brasser et al. 2004, Connors et al. 2004)
2010 SO16 (Christou & Asher 2011)
2013 BS45 (de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos 2013)

がある。

2015 SO2は、馬蹄型軌道の小惑星であり、上記の 9番目のメンバーということになる。

基本パラメータ

2015 SO2のパラメータは以下のとおりである。

軌道長半径:1.00079 AU
軌道離心率;0.10758
軌道傾斜角:9.198°
近日点:0.89312 AU
遠日点:1.10845 AU
絶対等級:H = 23.9 (※H は太陽系天体の絶対等級)

2015 SO2の軌道進化

N体シミュレーションの結果、この小惑星 2015 SO2は興味深い軌道をとることが分かった。現在は地球とほぼ同じ軌道で太陽を公転する馬蹄型軌道に入っているが、いずれ準衛星と呼ばれる軌道へと変化することが分かった。
さらにその後再び馬蹄型軌道に戻ることも示された。

軌道の解析と数値シミュレーションの主要な結果としては、

・2015 SO2は、現在は高確率で (99.9%以上)地球に対して馬蹄型軌道をとる小惑星であり、そのような小惑星はこれが 9番目の発見である。

・2015 SO2は、馬蹄型軌道と準衛星軌道の双方を行き来する特異な軌道を持っている。

・2015 SO2は古在共鳴に入っており、近日点引数は -90°もしくは 270°の周囲を振動する。

・小惑星 2015 SO2は地球 - 月系に起源を持つ可能性があり、またこれまでに発見された馬蹄型軌道を振動する小惑星の中では最も安定である。






小惑星にも様々な軌道があり、中には地球とほぼ同じ軌道で公転しているものも存在します。その中には地球と1:1の軌道共鳴をしているものもあります。

地球と同じ軌道を回る小惑星 (co-orbital asteroid)にはその軌道の特性から複数の種類があり、太陽・地球と正三角形を成す地球の軌道上 (ラグランジュ点の L4, L5に対応)に存在する、トロヤ群小惑星 (Trojan asteroid)、地球の付近を地球とほぼ同じ軌道で公転しているため、まるで約1年周期地球を公転しているように見える準衛星 (quasi-satellite)、そして地球と同じ軌道上を、地球との位置関係を変えながら公転している馬蹄型軌道 (horseshoe orbit)をとるものがあります。

準衛星は、地球から見るとあたかも地球の周りを回っているように見える天体であり、実際には地球の重力圏にとらわれているわけではありません。地球からの動きがあたかも衛星のような振る舞いをするため、「準衛星」と呼ばれています。似ていますが「準惑星」などとは異なる概念なので注意が必要です。

馬蹄型軌道の小惑星も、太陽基準の公転運動を見るとほぼ 1年周期で公転をしている天体です。しかし、地球に後方から接近し、ある程度まで接近した後は軌道がやや変えられて地球よりも遅くなるため地球に離されていき、今度は地球に追いつかれて接近し、ある程度まで接近した後は再び軌道がやや変えられて地球を引き離し、いずれまた後方から接近する…という繰り返しを行っています。
この運動が、地球の公転座標系からみると馬蹄型の軌道を描いて動いているように見えるため、馬蹄型軌道と呼ばれています。

今回軌道の性質が明らかにされた小惑星 2015 SO2は、現在は馬蹄型軌道にいるものの、いずれ準衛星の軌道に変化し、その後再び馬蹄型軌道に戻る、という 2つの状態を行き来する特異な性質をもつ小惑星である事が分かった、とのことです。

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