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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1511.08226
Stevenson et al. (2015)
Evidence for Water in the Atmosphere of HAT-P-26b Using LDSS-3C
(LDSS-3CによるHAT-P-26bの大気中における水の証拠)

概要

トランジットする系外惑星の物理的に多様な集まりの特徴付けをすることは、惑星を覆っている雲・ヘイズの生成に関する物理的特性の解明のための重要で必要なステップである。分光学的な特徴を持つ惑星によって、大気の化学た金属量についての理解を深めることが出来る。

ここでは、Magellanの LDSS-3Cと、スピッツァー宇宙望遠鏡のデータから、海王星質量の惑星 HAT-P-26bの透過スペクトル中に水の存在の証拠を発見したことを報告する。また、驚くべきことに、カリウムの痕跡は見られなかった。

このスペクトルの特徴は、
・高金属量、雲無しの大気
・太陽組成 (低金属量)、~ 10 mbarに雲層が存在する大気
のどちらかで説明することが出来る。

観測で得られたデータ中の強いスペクトルの特徴は、今後の高精度での観測によって大気組成の縮退を解くことが出来るだろうという事を示唆する。また観測を元に、HAT-P-26bの軌道のデータのアップデートを行った。

観測

観測に用いたのは、Low Dispersion Survey Spectrograph (LDSS)である。チリの Las Campanas Observatoryの、6.5 m Magellan II望遠鏡に搭載されている。主に可視光領域を観測する装置である。

2011年に LDSSが導入された。その後数度のアップグレードを経て、現在の LDSS-3Cに至っている。

この LDSS-3Cによる観測に加え、スピッツァー宇宙望遠鏡での観測データも合わせて解析を行った。

HAT-P-26bの大気について

観測からの制限

HAT-P-26bは、K1型星の周りを軌道周期 4.23日で公転する、膨張した半径を持つ海王星質量の惑星である (Hartmann et al. 2011)。表面重力は小さく、log(g) = 2.66 dex、g = 4.55 m s-2である。また平衡温度は 990 Kである。
(※log(g)は、cgs単位系 (cm s-2での数値の常用対数を取ったもの))

スピッツァー宇宙望遠鏡との組み合わせにより、太陽組成大気で雲が無いというシナリオは排除された。これは、このモデルの場合は強いスペクトルの特徴が見られるはずだからである。しかし前述の、高金属量で雲が無い大気と、太陽組成で雲が存在する大気の区別をすることは出来なかった。

HAT-P-26bが太陽系惑星の質量-金属量関係性 (Kreidberg et al. 2014)に従うのであれば、この惑星の質量は 0.0586木星質量であるため、予想される金属量は太陽組成の金属量の 60 - 100倍である。この場合は、高金属量で雲が無いというシナリオは整合的であると考えられる。

類似の系外惑星との比較

他の同程度のパラメータを持つ系外惑星との比較を行う。例えば、HAT-P-12b (平衡温度 960 K、log(g) = 2.75 dex)と、HAT-P-19b (1010 K、2.75 dex)が条件が近い惑星である。

Line et al. (2013)によると、HAT-P-12bのハッブル宇宙望遠鏡によるトランジット分光観測では、1.1 - 1.7 μmで水の存在を検出できなかった。また、Mallonn et al. (2015)では、OSIRIS spectrographを用いて HAT-P-19bを観測し、562 - 767 nmではフラットな特徴を持つモデルと整合的であると示した。しかしこの波長域には水の吸収は含まれておらず、また精度の問題から圧力で広がった形状を持つナトリウムのラインの存在の排除は出来ていない。

現状では、HAT-P-26bの観測結果を補強するような類似の検出例は存在しないが、しかし否定するような強い根拠を持った先例も存在しない。






海王星質量の系外惑星大気から水を検出!という報告です。

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