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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1511.08901
Tsiaras et al. (2015)
Detection of an atmosphere around the super-Earth 55 Cancri e
(スーパーアース かに座55番星eの大気の検出)
ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Fileld Camera 3 (WFC3)は、これまでに 2つのスーパーアース、GJ 1214b、HD 97658bの大気のトランジット分光観測をこれまでにない精度で行った。しかしこれらのスペクトルは特徴に欠けたものだった。これらの結果は、大気は厚い雲に覆われているか、水素より重い成分の大気を持つという事を示唆するものであった。
ここでは、かに座55番星eにおける、WFC3による 3例目のスーパーアースの大気の検出を報告する。この惑星は中心星に非常に近く、表面付近は 2000 K以上になっていると期待される。
観測では、各波長でのトランジット深さを相対的な平均の不確かさ ±21 ppmで測定した。各波長でのトランジット深さの変調を、振幅 ~ 100 ppmで検出した。これは不確かさの値よりも 5倍大きいものである。この観測により、かに座55番星eはおそらく水素主体の大気に覆われていると示唆される。
ベイズ解析を用いた大気スペクトルから組成を復元するコードによると、観測で得られた 1.42 μmと 1.54 μmの特徴は、HCN (シアン化水素)によるものだと考えられる。この HCNの存在の確認には広い波長域での追観測が必要だが、ここでは今回得られた HCNの存在について議論を行う。
大気の化学モデルによると、比較的高い HCN混合比は、高い C/O比 (炭素・酸素比)を要求する。従ってこのスーパーアースは炭素に富んでおり、これまで考えられていたよりもエキゾチックな環境にあるということが分かった。
・大気は軽い分子種で出来ているだろう。おそらくは原始惑星系円盤から多くの水素・ヘリウムを獲得したと考えられる。
・大気中に水の存在は確認されなかった。
・1.42 μm、1,54 μmは HCNの存在で良く説明できる。また、CO, CO2, C2H2の寄与もあり得る。
・観測から示唆されるHCNの存在比は、大気が炭素に富んでおり (C/O = 1.2)、炭素を含む分子種が卓越する事を示す。
arXiv:1511.08901
Tsiaras et al. (2015)
Detection of an atmosphere around the super-Earth 55 Cancri e
(スーパーアース かに座55番星eの大気の検出)
概要
系外惑星の発見前は、スーパーアースはSFの分野のものであったが、現在となってはわれわれの銀河の中では最もありふれた存在であるということが分かっている。これらの惑星については非常に基本的な惑星と軌道のパラメータしか得られていない。ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Fileld Camera 3 (WFC3)は、これまでに 2つのスーパーアース、GJ 1214b、HD 97658bの大気のトランジット分光観測をこれまでにない精度で行った。しかしこれらのスペクトルは特徴に欠けたものだった。これらの結果は、大気は厚い雲に覆われているか、水素より重い成分の大気を持つという事を示唆するものであった。
ここでは、かに座55番星eにおける、WFC3による 3例目のスーパーアースの大気の検出を報告する。この惑星は中心星に非常に近く、表面付近は 2000 K以上になっていると期待される。
観測では、各波長でのトランジット深さを相対的な平均の不確かさ ±21 ppmで測定した。各波長でのトランジット深さの変調を、振幅 ~ 100 ppmで検出した。これは不確かさの値よりも 5倍大きいものである。この観測により、かに座55番星eはおそらく水素主体の大気に覆われていると示唆される。
ベイズ解析を用いた大気スペクトルから組成を復元するコードによると、観測で得られた 1.42 μmと 1.54 μmの特徴は、HCN (シアン化水素)によるものだと考えられる。この HCNの存在の確認には広い波長域での追観測が必要だが、ここでは今回得られた HCNの存在について議論を行う。
大気の化学モデルによると、比較的高い HCN混合比は、高い C/O比 (炭素・酸素比)を要求する。従ってこのスーパーアースは炭素に富んでおり、これまで考えられていたよりもエキゾチックな環境にあるということが分かった。
観測と解析結果の要約
・惑星は大気を持つ。100 ppmのスペクトルの変調がそれを示す。・大気は軽い分子種で出来ているだろう。おそらくは原始惑星系円盤から多くの水素・ヘリウムを獲得したと考えられる。
・大気中に水の存在は確認されなかった。
・1.42 μm、1,54 μmは HCNの存在で良く説明できる。また、CO, CO2, C2H2の寄与もあり得る。
・観測から示唆されるHCNの存在比は、大気が炭素に富んでおり (C/O = 1.2)、炭素を含む分子種が卓越する事を示す。
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