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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1512.00189
Kostov et al. (2015)
KOI-2939b: the largest and longest-period Kepler transiting circumbinary planet
(KOI-2939b:最も大きく長周期のケプラーによる周連星トランジット惑星)

概要

ケプラーの観測データから、新しい周連星惑星 (circumbinary planet, 連星の周囲を公転する惑星)の発見を報告する。このもっとも新しい周連星惑星は、これまでに発見されてきた周連星惑星のトレンドに反するものであった。これまでのものは、連星周りの安定限界軌道付近を公転するものが多かった。

今回発見された周連星惑星 KOI-2939bは、これまでに発見された周連星惑星とは異なり、食連星 KOI-2939を非常に長周期 (~ 1100日)で公転する。この惑星は、ケプラーミッションでの観測期間中に 2回しか合 (conjunction)を起こさなかった。この特異な軌道の配置のため、KOI-2939bは現時点で最も長周期の周連星惑星なだけではなく、最も長周期なトランジット惑星のうちの一つでもある

また、惑星半径は 1.06木星半径であり、これは最も大きいサイズの周連星惑星でもある

惑星は KOI-2939の光度曲線中に合計 3回のトランジットを起こした。そのうち 1回は連星の食の最中であり、朔望 (syzygy)を起こした。また惑星は連星の食のタイミングに測定可能なほどの擾乱を与えており、これによって惑星の質量が測定され、1.52 ± 0.65木星質量と定まった。
(朔望について、伴星が主星をトランジットし始めた直後に惑星もトランジットを始める、というイベントが一度だけ発生した)

惑星は、公転周期およそ 11日の 2つの太陽質量程度の恒星の連星の周りを公転している。この連星は、軌道が視線方向に対して僅かに傾き、またわずかに軌道離心率の大きな起動となっている (連星の軌道離心率 e = 0.16)。この連星系は、自転と同期して公転している。

KOI-2939bの公転周期は地球の公転周期より 3倍ほど長いものの、全軌道が連星周りの保守的なハビタブルゾーン (conservative habitable zone)の内部に存在している。

パラメータ

KOI-2939連星系のパラメータ

連星の公転周期:11.2588179日
軌道離心率:0.1602
軌道長半径:0.1276 AU

主星 (KOI-2939A)
質量:1.2207太陽質量
半径:1.7903太陽半径
有効温度:6210 K
金属量:[Fe/H] = -0.14

伴星 (KOI-2939B)
質量:0.9678太陽質量
半径:0.9663太陽半径
有効温度:5770 K

KOI-2939b

公転周期:1107.5923日
軌道長半径:2.7205日
軌道離心率:0.0581
相互軌道傾斜角:2.9855°

議論

周連星惑星について

これまでに発見された周連星惑星は、どれもが土星サイズかそれ以下だった。一番大きかったものはケプラー16bで、0.75木星半径であった。

また、どれもが連星周りの力学的な安定限界の距離からファクター 2程度の距離を公転していた。

Pierens & Nelson (2008)によると、"木星質量の周連星惑星は、その進化が安定ではないため一般的な存在ではないだろう" と示唆されており、また "もし木星質量の周連星惑星が存在する場合は中心の連星から大きく離れた位置を公転するものだろう" と考えられていた。今回の発見はそれに合致するものである。

ハビタブルゾーン

この連星系周りのハビタブルゾーンを、Haghighipour & Kaltenegger (2013)の表式を用いて計算した。その結果、保守的なハビタブルゾーンはおおむね ~ 2 - 3.5 AUの範囲に広がっており、KOI-2939bは全軌道が保守的なハビタブルゾーン内に入っている。これにより、KOI-2939bは連星周りのハビタブルゾーンを公転する惑星としては 4例目となった。

KOI-2939b自体は巨大ガス惑星であるためハビタブル惑星ではない。しかしその衛星はハビタブルな環境であるかもしれない (Forgan & Kipping 2013など)。しかしそのような衛星が存在するという証拠は現在のデータの中には無い。ガリレオ衛星のような天体があったとしても、トランジット時刻のずれは 10秒未満に留まるだろう。

軌道安定性

Holman & Weigert (1999)の式を用いると、この系での安定な最小軌道は、連星の軌道長半径の 2.91倍の位置である。KOI-2939bの軌道長半径は 2.72 AUであり、これは連星系の軌道長半径の 21.3倍に相当するため、長期的に安定である。

数値計算を用いた検証でも、連星と惑星の双方は、軌道長半径・軌道離心率ともに ~ 100 Myrにわたってほとんど変化しなかった。カオス的な挙動も見られなかった。連星の軌道傾斜角は ~ 0.0372°、惑星は ~ 2.9626°振動する。連星と惑星の相対的な軌道傾斜角は、~0.0895°振動し、惑星の昇交点 (ascending node)は ~ 2.9605°振動する。

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