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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1601.00789
Forgan & Dobos (2016)
Exomoon Climate Models with the Carbonate-Silicate Cycle and Viscoelastic Tidal Heating
(炭酸塩-ケイ酸塩循環と粘弾性潮汐加熱を考慮した系外衛星の気候モデル)
過去の解析的な計算によると、惑星周りのハビタブルゾーンは内縁だけが存在し、外縁は存在しないとされている。この場合、外縁は衛星軌道の安定性というエネルギーバランスとは別の要素によって決まる。しかし後の経度方向の一次元の気候モデルでは、惑星による中心星の食と、アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) の複合的な効果によって、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が作られることが示された。ただしこの外縁は実際に存在するものなのか、それとも気候モデルの簡単化に起因するアーティファクトかは不明である。
ここでは、炭酸塩-ケイ酸塩の循環 (carbonate-silicate cycle) と、粘弾性潮汐加熱 (viscoelastic tidal heating) の両方の効果を含んだ、改善された一次元モデルを用いた。このモデルで、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンについて、パラメータサーベイを行った。
その結果、惑星周りのハビタブルゾーンは、系外衛星の軌道が惑星の公転軌道に比べて傾いていない場合は外縁が存在する事が示された。
衛星の軌道傾斜角が小さい場合、惑星による中心星の食の頻度が高くなり (つまり日光が遮られる頻度が大きくなり)、全球凍結状態になりやすくなる。そのため、惑星からの距離が大きく、潮汐加熱や惑星からの照り返しが弱くなっている状態ではより全球凍結状態へ移行しやすくなる。そのため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じる。
軌道傾斜角が大きくなると食の頻度も下がるため、惑星周りのハビタブルゾーンの外縁も消失する。また、惑星に近づき過ぎると潮汐加熱や照り返しの効果が大きくなり、高温の衛星となってしまう。
また、炭酸塩-ケイ酸塩の循環によって、惑星周りのハビタブルゾーンは外側へ拡大する。これは、二酸化炭素分圧が上昇することによって温室効果が増大する事が原因である。
また、従来の固定された潮汐の Q 値のモデルに対し、粘弾性潮汐加熱の効果はハビタブルゾーンを広げる効果がある。さらに、固体成分が溶けることによる加熱効果の減少により、大きな軌道離心率を持つ系外衛星でもハビタブルな環境になることが出来る。また、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンの双方の内縁を内側へ広げる効果がある。
アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) と言うのは、気候の変化における星のフィードバック効果のことです。何らかの原因で天体表面を氷が覆う面積が増えると、日光をよく反射するようになり (=アルベドが大きくなり)、平衡温度が低下します。温度が低下することによってさらに氷の面積が増え、それによってアルベドがさらに大きくなり…というように、最終的に全体が氷に覆われた全球凍結状態になるまでフィードバックが続きます。
これも逆のフィードバックも発生します (氷面積が減少→アルベドが減少→平衡温度上昇→氷面積が減少)。
地球もかつてこの効果によって、全球凍結状態 (スノーボール・アース) に何度かなったと考えられています。
それにしても、衛星の軌道傾斜角が小さい場合は惑星が日光を遮りやすくなるため全球凍結状態になりやすく、さらに惑星から離れると潮汐加熱と照り返しの加熱が少なくなるため全球凍結状態にさらになりやすくなるため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じるというのは面白い話。
arXiv:1601.00789
Forgan & Dobos (2016)
Exomoon Climate Models with the Carbonate-Silicate Cycle and Viscoelastic Tidal Heating
(炭酸塩-ケイ酸塩循環と粘弾性潮汐加熱を考慮した系外衛星の気候モデル)
概要
地球と同様な特徴を持つ系外衛星 (exomoon) のハビタブルゾーンは、地球に類似した系外惑星のハビタブルゾーンと比較すると単純ではない。系外衛星の場合は、惑星の潮汐力による潮汐加熱と、惑星による恒星の食と惑星からの照り返しを含めたエネルギーバランスを考慮して、恒星周りのハビタブルゾーン (circumstellar habitable zone) と惑星周りのハビタブルゾーン (circumplanetary habitable zone) の両方を考慮する必要がある。過去の解析的な計算によると、惑星周りのハビタブルゾーンは内縁だけが存在し、外縁は存在しないとされている。この場合、外縁は衛星軌道の安定性というエネルギーバランスとは別の要素によって決まる。しかし後の経度方向の一次元の気候モデルでは、惑星による中心星の食と、アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) の複合的な効果によって、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が作られることが示された。ただしこの外縁は実際に存在するものなのか、それとも気候モデルの簡単化に起因するアーティファクトかは不明である。
ここでは、炭酸塩-ケイ酸塩の循環 (carbonate-silicate cycle) と、粘弾性潮汐加熱 (viscoelastic tidal heating) の両方の効果を含んだ、改善された一次元モデルを用いた。このモデルで、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンについて、パラメータサーベイを行った。
その結果、惑星周りのハビタブルゾーンは、系外衛星の軌道が惑星の公転軌道に比べて傾いていない場合は外縁が存在する事が示された。
衛星の軌道傾斜角が小さい場合、惑星による中心星の食の頻度が高くなり (つまり日光が遮られる頻度が大きくなり)、全球凍結状態になりやすくなる。そのため、惑星からの距離が大きく、潮汐加熱や惑星からの照り返しが弱くなっている状態ではより全球凍結状態へ移行しやすくなる。そのため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じる。
軌道傾斜角が大きくなると食の頻度も下がるため、惑星周りのハビタブルゾーンの外縁も消失する。また、惑星に近づき過ぎると潮汐加熱や照り返しの効果が大きくなり、高温の衛星となってしまう。
また、炭酸塩-ケイ酸塩の循環によって、惑星周りのハビタブルゾーンは外側へ拡大する。これは、二酸化炭素分圧が上昇することによって温室効果が増大する事が原因である。
また、従来の固定された潮汐の Q 値のモデルに対し、粘弾性潮汐加熱の効果はハビタブルゾーンを広げる効果がある。さらに、固体成分が溶けることによる加熱効果の減少により、大きな軌道離心率を持つ系外衛星でもハビタブルな環境になることが出来る。また、恒星周りのハビタブルゾーンと惑星周りのハビタブルゾーンの双方の内縁を内側へ広げる効果がある。
アイス・アルベド・フィードバック (ice-albedo feedback) と言うのは、気候の変化における星のフィードバック効果のことです。何らかの原因で天体表面を氷が覆う面積が増えると、日光をよく反射するようになり (=アルベドが大きくなり)、平衡温度が低下します。温度が低下することによってさらに氷の面積が増え、それによってアルベドがさらに大きくなり…というように、最終的に全体が氷に覆われた全球凍結状態になるまでフィードバックが続きます。
これも逆のフィードバックも発生します (氷面積が減少→アルベドが減少→平衡温度上昇→氷面積が減少)。
地球もかつてこの効果によって、全球凍結状態 (スノーボール・アース) に何度かなったと考えられています。
それにしても、衛星の軌道傾斜角が小さい場合は惑星が日光を遮りやすくなるため全球凍結状態になりやすく、さらに惑星から離れると潮汐加熱と照り返しの加熱が少なくなるため全球凍結状態にさらになりやすくなるため、惑星周りのハビタブルゾーンに外縁が生じるというのは面白い話。
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