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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1601.02395
Kiss et al. (2016)
Nereid from space: Rotation, size and shape analysis from Kepler/K2, Herschel and Spitzer observations
(宇宙空間からのネレイド:ケプラー/K2、ハーシェル、スピッツァーの観測による自転・サイズ・形状の分析)

概要

海王星の不規則衛星ネレイド (Nereid) を、ケプラーの K2 ミッションの Campaign 3 で観測した結果について報告する。

観測と解析の結果、ネレイドの自転周期は 11.594 ± 0.017 時間であり、光度変化の振幅は 0.0328 等級であった。これは過去の地上観測で示唆されていた短い自転周期を追認する結果である。2001年の観測結果と 2015年の観測での光度曲線の類似から、現在のネレイドは光度変化が小さい状態での自転状態にあることが判明した。1960年代半ばは、光度変化が大きい状態での自転状態になっていた可能性がある。次の光度変化が大きい状態は、30年程度以内に訪れると考えられる。

また、この 15年の光度曲線の振幅の観測から、ネレイドの形状の推定を行った。その結果、軸の長さの比が 1.3 : 1 という形状であることが示唆され、過去に示唆されていた 1.9 : 1 という長細い形状である可能性は排除された。従って、ネレイドの自転軸は、海王星の潮汐による強制歳差の状態には無いと考えられる。

スピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルの熱放射の観測からも、ネレイドの形状は軸の比が 1.3 : 1 に近いことが示唆され、また粗くクレーターの多い表面であることが判明した。

ネレイドの過去の観測について

ネレイドは、比較的大きい (~ 350 km) サイズを持ち、海王星周りを非常に大きな軌道離心率をもった傾いた軌道で公転している不規則衛星である (Dobrovolskis 1995, Jacobson 2009)。ネレイドの軌道の特徴はよく調べられているが、形状や形状軸の配置、自転周期などはよく分かっていない。観測する夜毎に明るさの変動が存在する、年スケールの明るさの変動が存在するなどの報告もあり、詳細は Schaefer et al. (2008) にまとめられている。

Schaefer et al. (2008) では、年ごとの光度の変化は、ネレイドの自転軸の歳差運動によるものだとしている。ある年はネレイドの軸は地球の方向を向いており、別の時には視線方向に垂直な方向を向いているということである。これは、非球対称の形状をしているネレイドにはたらく海王星の潮汐力による、強制的な歳差運動によって実現される。観測を説明するためには、ネレイドの形状は軸長の比にして 1.9 : 1 かそれ以上という長細い形状である必要がある。

Hesselbrock et al. (2013)では、Schaefer et al. (2008)と同様の、しかし更に小さい天体の効果 (特に海王星の衛星トリトンの効果) を含めた解析を行った。その結果、ネレイドは三軸楕円体 (triaxial ellipsoid) の形状をしており、軸の比はそれぞれ c/a ~ 0.5, b/a ~ 0.6 が最も観測とよく合うとした。また、初期の傾斜角は ~ 60°、初期自転周期は 144時間であるとした。さらに、ネレイドの c 軸のアスペクト角の値によって、~ 90°の時は "active"、~ 0°の時は "inactive" な時期があると予測した。
この結果は、定性的には Schaefer et al. (2008)と合うが、輝度レベルには違いがある。この違いについて、Hesselbrock et al. (2013)ではネレイド表面の不均一なアルベドによるものとしている。


ネレイドの実際の形状は、ここでの話に重要であるが詳細は不明である。ボイジャー2号の観測では、サイズは 350 ± 50 km という結果を得ている (Thomas et al. 1991)。この時の観測では一定のレベルで空間分解は出来ているが、形状の決定をするためにはデータの質が悪い。

2001年8月と 2002年8月の地上からの観測では、自転周期は短く 11.52時間、光度変化の振幅は 0.029等級という結果が得られている (Grav et al. 2003)。後に、2008年の地上観測の結果を元にして 11.50時間、0.031等級という非常に近い結果が得られている (Terai & Itoh 2013)。

地上観測からはあまりよく制限を付けられていないのが現状である。宇宙空間からの観測ではどうだろうか?
海王星はケプラーの K2 ミッションの Campaign 3 の期間中に観測範囲に入る。海王星の衛星ネレイドも同様である。従って、ケプラーによってネレイドの光度変化の観測を行うことが可能になる。さらに過去のスピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルによる赤外線観測のデータを取得して解析も行った。スピッツァー宇宙望遠鏡とハーシェルでは、24 - 160 μm の中間赤外線・遠赤外線のデータが得られている。これはネレイドからの熱放射の観測に対応する。

観測・解析結果

K2 データの解析から、自転周期は 2001年と 2008年の地上観測の結果と整合的であった。光度変動の振幅についても同様である。現在は光度変化の振幅が小さく見える状態にあるが、数十年前は光度変化が大きかった可能性が示唆された。

また、非常に細長い形状である可能性は排除され、軸長の比にして 1.3 : 1 というゆるやかに潰れた形状であることが示唆された。この軸長の比では、海王星の潮汐力によって強制的な歳差運動の状態には入らないと考えられる。

また赤外線データを、NEATM (Near-Earth Asteroid Thermal Model) (Harris 1998) と TPM (thermophysical model) (Lagerros 1996など) のモデルを用いて解析した結果、サイズは 335 - 345 km、幾何学的アルベドは 0.25 - 0.27、また表面の粗雑さが大きいことが判明した。粗雑さを表す roughness は ~ 0.9 程度である。そのため、ネレイドの表面には深いクレーターが多数存在すると考えられる。

光度曲線と熱放射からは、ネレイドの形状は 1.3 : 1 程度の軸長比であると推測される。また現在の自転軸のアスペクト角は ~ 30°である。この形状は、数十年前に報告されていた大きな光度曲線の振幅を部分的に説明できるだろうと考えられる。






ケプラーは系外惑星を検出するための探査機ですが、これを用いて太陽系内小天体の観測を行ったという興味深い結果です。

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