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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1601.02814
Irwin et al. (2016)
Reanalysis of Uranus' cloud scattering properties from IRTF/SpeX observations using a self-consistent scattering cloud retrieval scheme
(散乱を起こす雲の自己無矛盾な探査スキームを用いたIRTF/SpeX観測からの天王星の雲の散乱特性の再解析)

概要

天王星の赤外線スペクトルモデルの改良を行った。ここでは、2009年の IRTF/SpeX による 0.8 - 1.8 μm での観測結果 (Tice et al. 2013) の再解析を行った。
IRTF (Infrared Telescope Facility) は、ハワイのマウナケア山にある NASA の観測装置である。

雲粒子の複素屈折率スペクトルのデータを元に、クラマース・クローニッヒの関係式 (Kramaers-Kronig relation) を用いて屈折率の実部を整合的に決めることができ、それによって天王星大気中の雲やヘイズの自己無撞着な吸光断面積を定義する事が可能になる。また、単一散乱や位相関数スペクトルも得ることが出来る。

2種類の雲モデルを、temperature/methane profile (Baines et al. 1995)、ボイジャー2号の電波掩蔽観測 (Sromovsky et al. 2011)、最近のスピッツァー宇宙望遠鏡による観測結果 (Orton et al. 2014)と合わせてテストした。その結果、雲モデルは両方共に観測された天王星の center-of-disc のスペクトルをよく再現した。どちらのモデルも、~ 2 bar 付近にある主要な雲の散乱特性に対して類似した特性を要求する。しかし、Sromovsky et al. (2011)のモデルの、最下層の雲層のスペクトル特性の改良版を用いたモデルが、短い波長域では僅かに良く合うことが分かった。また、天王星大気中のメタン雲の鉛直方向の位置として期待される位置とより整合的であることも分かった。

解析の結果、天王星の反射放射輝度は、~ 2 bar にある厚い雲によるものであるという事が判明した。1.0 μm 未満の短い波長よりも、1.0 μm 以上の長い波長をよく吸収する。このスペクトルの情報は雲の主要粒子の成分に制限をかけ得るが、得られた散乱特性は、天王星の対流圏上部で凝縮すると考えられるアンモニア (NH3)、硫化水素アンモニウム (NH4SH)、メタン (CH4)の純粋な氷の実験室データとは一致しない。従って、観測されている天王星の雲は、上空から拡散してきた光化学物質と対流圏内での凝縮物の混合物である可能性がある。これが、純粋な散乱の特徴を隠しているのだろうと考えられる。

雲の成分としては、硫化水素 (H2S) 、ホスフィン (PH3) からなる氷粒子も考えられるが、どちらも参照可能な実験室データが存在しない。したがってこれらである可能性は排除できない。しかしそれらが雲の主な成分であるである場合、それらの 1 μm 以上の波長での吸収特性は他の物質よりも 2 桁大きくないといけないはずである。従って、光化学物質との混合による影響は重要であると考えられる。

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