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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1604.05366
Weaver et al. (2016)
The Small Satellites of Pluto as Observed by New Horizons
(ニューホライズンズで観測した冥王星の小さい衛星)

概要

冥王星探査機ニューホライズンズによる冥王星の小型の衛星,Styx (ステュクス)Nix (ニクス)Kerberos (ケルベロス)Hydra (ヒドラ) の観測結果について報告する.

これら 4 つの衛星は小さく,球相当径 (equivalent spherical diameter) は,Nix と Hydra は ~ 40 km,Styx と Kerberos は ~ 10 km である.どれも大きく引き伸ばされた形状をしており,最大径と最小径の比は ~ 2 である.

4 つともにアルベドは高く (50 - 90%),表面は水の氷で出来ている事を示唆する結果である.また,Nix,Hydra 表面のクレーターの密度から,衛星表面の年齢は ~ 4 Gyr 以上であると考えられる.

自転は同期回転よりも速く,自転軸は冥王星とカロンの自転軸の方向と概ね直行する向きであった.これらの事実は,この 4 つの衛星は冥王星 - カロン系を形成した時の衝突破片から形成されたという仮説を補強するものである

冥王星の小型の衛星

冥王星のまわりには,大きいサイズのカロンの他に,内側から Styx, Nix, Kerberos, Hydra という小型の衛星が発見されている.これらはハッブル宇宙望遠鏡を用いて,Nix と Hydra は 2005 年に,Kerberos は 2011 年,Styx は 2012 年にそれぞれ発見された.

軌道長半径はそれぞれ,42656 km, 48694 km, 57783 km, 64738 km であり,軌道周期は 20.2日,24.9日,32.2日,38.2日である.この軌道周期は,カロンの公転周期 6.4日の整数倍に近い.(3:4:5:6 の比に近い値になる)

ニューホライズンズの接近時にさらなる衛星の探査が行われたが,これら以外の衛星は検出されなかった (Stern et al. 2015).これより,衛星の幾何学的アルベドを ~ 0.5 とした場合,冥王星とカロンの重心から 5000 - 80000 km の範囲内には,~ 1.7 km 以上の大きさの衛星は存在しないという制限を付けることが出来る.なお,さらに遠方ではこの制限は弱くなる.

また,Kerberos の軌道安定性から,Nix と Hydra のアルベドと質量には厳しい制約がかけられている.

観測・解析結果

表面の特徴

衛星表面のクレーターは,Nix 表面にクレーター状構造を 11個,Hydra 表面には 3個が同定された.直径が 4 km より大きいクレーターの存在密度は,(1 - 3) × 10-3 km-2 であった.

Nix, Hydra はおおむね無彩色な色 (灰色) であったが,Hydra は Nix よりやや青っぽい.Hydra の表面は Nix よりも水の氷が多い可能性がある.これがアルベドの違いにも影響を及ぼしているかもしれない.

また,Nix 表面の最大のクレーターは,他のクレーターよりも赤っぽい色を示す.これは,衝突体の組成が Nix とは異なっていたか,Nix 表面下の異なる組成が衝突によって曝されたことが原因と考えられる.Nix の他のクレーターや,Hydra のクレーターではこのような色の違いは見られなかった.

その他の特徴

サイズ (km)公転周期 (日)自転周期 (日)幾何学的アルベド冥王星・カロンの自転軸に対する
自転軸の角度
Styx16 × 9 × 820.161553.240.6591°
Nix50 × 35 × 3324.854631.8290.56123°
Kerberos19 × 10 × 932.167565.310.5696°
Hydra65 × 45 × 2538.201770.42950.83110°

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