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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1604.05356
Randall Gladstone et al. (2016)
The Atmosphere of Pluto as Observed by New Horizons
(ニューホライズンで観測した冥王星の大気)

概要

冥王星探査機ニューホライズンズによる冥王星大気の観測結果について報告する.

下層大気 (表面からの高度 200 km 以下) は地上観測と整合的な結果であった.しかし大気上層は,ニューホライズンズ接近前のモデルよりも低温で小さい大気構造であった.

大気は N2 分子が主要成分であり,少量存在する化学種の中で多いものは,メタン (CH4),アセチレン (C2H2),エチレン (C2H4),エタン (C2H6)である.またこれらは冥王星を覆うもや (ヘイズ,haze) の生成と関係していると考えられる.

冥王星高層の冷たい大気は,これまで存在すると考えられていた冥王星大気の宇宙空間への促進されたジーンズ散逸,流体力学的な散逸を留める.現在の冥王星大気の状態が,季節的なタイムスケールや地質学的なタイムスケールでの平均的な状態であるのかは不明である.

冥王星からの大気散逸

冥王星の表面気圧,冥王星の半径,大気のメタンと一酸化炭素の混合比から,冥王星からの窒素分死の散逸率は 2.8 × 1027 個 s-1 と予想されていた.これは,太陽からの極端紫外線や遠紫外線による大気の加熱と,冥王星の広がった大気の有効面積を元に推定された値である.

しかしこの予想は,光化学的に生成される HCN や アセチレンの冷却を無視した値である.これらの分子種による冷却は,散逸率を低下させる効果がある.

今回のニューホライズンズで観測された,冥王星大気による太陽の掩蔽の観測から,窒素とメタンの散逸率はそれぞれ,1 × 1023 個 s-1 と 5 × 1025 個 s-1 と推定された.この値はジーンズ散逸的な値であり,冥王星大気はハイドロダイナミックエスケープを起こしていないことが判明した

この散逸率が冥王星の公転 1 回分の期間にわたって一定である場合,窒素とメタンの冥王星表面の氷の厚みに換算すると,それぞれ 3 nm と 1.5 µm である.また,太陽系の年齢の期間にわたって一定である場合は,それぞれ 6 cm,28 m に相当する.

窒素の比較的小さい散逸率は,カロンに大気が検出されていないことと整合的な結果である.しかし,冥王星表面に侵食地形が存在することとは非整合的である.これは,過去の大気散逸率は一時的に大きかった可能性を示唆する.

メタンの散逸率は予想と近い値である.そのため,カロンの北極付近の表面が赤いのが冥王星大気のメタンに由来するという仮説は有効である.

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