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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1604.07388
Zahnle et al. (2016)
Photolytic Hazes in the Atmosphere of 51 Eri b
(エリダヌス座51番星bの大気中における光分解ヘイズ)

概要

輻射を受けている温かい木星型惑星エリダヌス座51番星b (51 Eri b) の大気中での光化学と,もや (ヘイズ) 形成を1 次元モデルを用いて調べた.その結果,当初意図していた対象は炭素であったが,硫黄の光化学反応が重要であるということが判明した.

有機物ヘイズは,エリダヌス座51番星b の垂直方向の混合が木星よりも弱い場合に形成し,その場合は水やメタンが光分解する高度よりも低い領域で発見されるだろうと考えられる.

新しい結果としては,光化学反応は H2S を元素状硫黄 (S8) に変えるというものである.低温な大気モデルにおいては,S8 は固体硫黄粒子の光学的に厚い雲中で凝縮すると予測される.
温暖なモデルにおいては他の同素体と共に気相にあり,これらは視覚的に影響をおよぼすため観測可能である可能性がある.

エリダヌス座51番星b の環境下においては,硫黄が凝縮するかどうかの境目は ~ 700 K である.この温度は,実際のこの惑星の有効温度の誤差の範囲内である.

研究背景

エリダヌス座51番星 (51 Eri) は,スペクトル型が F 型の,年齢が 2000万歳の若い前主系列星 (pre-main sequence star, PMS) である.直接撮像により,自ら熱放射する惑星エリダヌス座51番星b が発見されており,惑星の有効温度は 700 K である (Macintosh et al. 2015).

系の年齢と惑星の熱進化モデル,観測から得られた惑星の光度より,質量は ~ 2木星質量,半径は 1木星半径と推定されている.

大気からはメタンの吸収が検出されているが,吸収から推定されるメタンの存在量は熱化学的平衡から期待される量よりも少ない.従って一酸化炭素が多く存在すると予想されているが,これはまだ検出が確認されていない.

また,部分的な雲の存在も示唆されている (Macintosh et al. 2015).これは,観測結果と大気中における輻射輸送モデルの組み合わせからの示唆である.しかしこの惑星の有効温度では,シリケイトの雲が形成されるのは惑星の光球面より下であり,直接観測することは出来ない.その他には Na2S や NaCl の雲が形成されうるが,これらもやはり光球面より下に形成される.

ここでは,1 次元の反応速度論計算を行った.雲やヘイズの候補には 2 つある.1 つはタイタンや冥王星,北京に見られるような有機物の光化学ヘイズであり,こちらが有名である.今回の新しい結果では,硫黄によるものが重要である可能性が示された.

モデル

大気中の反応速度論の 1 次元シミュレーションを行った.

大気中での鉛直方向の物質の輸送は,渦拡散係数の大きさでパラメータ化した.
化学反応には,H, C, O, N, S からなる 78 種の化学種 481 の順反応と 42 の光分解反応を考慮した.また,結果の感受性試験のため,これ以外に 12 の反応と 2 種の化学種を加えた計算も行った.

全ての順反応は,熱力学的平衡で決まる逆反応によってバランスされるという状態を考える,また,光分解反応の逆反応については考慮しない.背景大気としては,水素分子 84%,ヘリウム 16%の混合ガスを用いた.また表面重力は 32 m s-2 とした.

このモデル中における重要な簡単化は,渦拡散係数によって鉛直方向の物質の輸送・混合をパラメータ化した点である.また,渦拡散係数の大きさは高度依存性を持たないものとした.

エリダヌス座51番星b のような成層大気における渦拡散係数はあまりよく制限されていない (Freytag et al. 2010).木星では,対流圏上端で 103 cm2 s-1,成層圏上端で 106-7 cm2 s-1 である (Moses et al. 2005).ホットジュピター大気中では 1010 cm2 s-1 程度になる事が示唆されており,ここでは 105 - 1010 cm2 s-1 の範囲とした.

結果・議論

計算の結果,硫黄の影響が重要である事が判明した.多くの硫黄を含む化学種は,波長が 200 nm より長い紫外線で簡単に光分解されるため,硫黄は光分解に大きな影響を与える.中心星のエリダヌス座51番星は F 型星であり,この波長帯の紫外線は強い.

この硫黄の光化学反応が,遊離基 (free radical) の主要な供給源となる.

また,硫黄自身も光化学反応による雲を形成することが出来る.ここでは環状分子の S8 が重要であることがわかり,これは 典型的には ~ 10 mbar の高度で生成され,~ 100 µbar の高度あたりまで生成される.

大気全体での硫黄の循環はシンプルである.H2S が上空へと輸送され,S8 と H2 が下降する.

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