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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1605.05376
Porter et al. (2016)
Red, Rough, Fast, and Perturbed: New Horizons Observations of KBO (15810) 1994 JR1 from the Kuiper Belt
(赤く,粗く,早く,そして擾乱を受けている:ニューホライズンズによるカイパーベルト天体 (15810) 1994 JR1 の観測)
これは,冥王星を除くカイパーベルト天体の初めての接近観測である.また,小型のカイパーベルト天体に対する初めての接近観測でもある.
地上観測とハッブル宇宙望遠鏡による小さい位相角からの観測と,ニューホライズンズの LORRI による大きな位相角からの観測の組み合わせより,0.6 - 58° の位相曲線を作成した.これは,カイパーベルト天体の位相曲線としては初めてのものである.
観測の結果,JR 1 は粗い表面を持つことが判明した.また地形の平均の傾斜度が 37°である.また比較的速い自転をしており,周期は 5.47 時間であった.なお現在の JR1 は冥王星から 2.7 AU の距離にある.
アストロメトリデータより,高精度の軌道の決定を行った.その結果,240 万年ごとに冥王星に接近する軌道を持ち,接近の際は冥王星の擾乱を受けることが分かった.
11 月の観測の期間中,この天体をハッブル宇宙望遠鏡で 2 色の同時観測を行った.その結果,非常に赤いスペクトルのスロープを示すことが分かった.
この観測結果は,ニューホライズンズの延長ミッション (New Horizons-Kuiper Belt Extended Mission) での将来のカイパーベルト天体観測の基礎となるだろう.
冥王星フライバイ後に,JR1 の観測も行われた.
なお,冥王星フライバイ後は,2019 年 1 月 1 日に 2014 MU69 に接近する予定である (Porter et al. 2015).
この天体は冥王星に近い位置にいるため (現在は 2.7 AU の距離),de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos (2012) では,JR1 は冥王星の準衛星 (quasi-sattelite) であるという説が提案された.準衛星とは,一定期間の間冥王星の近傍に滞在する軌道を持つが,重力的には束縛されていない天体のことである.しかし JR1 が冥王星の準衛星かどうかは,軌道の決定精度の問題で不確実であると考えられている.
軌道離心率:0.1244
不変面に対する傾斜角:3.48°
自転周期:5.47 時間
直径:~ 250 km
幾何学的アルベド:0.04
表面の粗度は 37° であり,クレーターが多い表面であることを示唆する.
海王星による擾乱によって,JR1 と冥王星は 240 万年ごとに接近する.この時,冥王星によっても擾乱をうける.
arXiv:1605.05376
Porter et al. (2016)
Red, Rough, Fast, and Perturbed: New Horizons Observations of KBO (15810) 1994 JR1 from the Kuiper Belt
(赤く,粗く,早く,そして擾乱を受けている:ニューホライズンズによるカイパーベルト天体 (15810) 1994 JR1 の観測)
概要
冥王星探査機のニューホライズンズ (New Horizons) で,3:2 共鳴をしているカイパーベルト天体 (Kuiper Belt Object, KBO) である (15810) 1994 JR1 (以下 JR1 と呼称) を観測した.観測は 2 回,2015 年 11 月 2 日に 1.85 AU の距離から,2016 年 4 月 7 日に 0.71 AU の距離から,ニューホライズンズに搭載されている LOng Range Reconnaissance Imager (LORRI) によって行われた.これは,冥王星を除くカイパーベルト天体の初めての接近観測である.また,小型のカイパーベルト天体に対する初めての接近観測でもある.
地上観測とハッブル宇宙望遠鏡による小さい位相角からの観測と,ニューホライズンズの LORRI による大きな位相角からの観測の組み合わせより,0.6 - 58° の位相曲線を作成した.これは,カイパーベルト天体の位相曲線としては初めてのものである.
観測の結果,JR 1 は粗い表面を持つことが判明した.また地形の平均の傾斜度が 37°である.また比較的速い自転をしており,周期は 5.47 時間であった.なお現在の JR1 は冥王星から 2.7 AU の距離にある.
アストロメトリデータより,高精度の軌道の決定を行った.その結果,240 万年ごとに冥王星に接近する軌道を持ち,接近の際は冥王星の擾乱を受けることが分かった.
11 月の観測の期間中,この天体をハッブル宇宙望遠鏡で 2 色の同時観測を行った.その結果,非常に赤いスペクトルのスロープを示すことが分かった.
この観測結果は,ニューホライズンズの延長ミッション (New Horizons-Kuiper Belt Extended Mission) での将来のカイパーベルト天体観測の基礎となるだろう.
(15810) 1994 JR1 について
ニューホライズンズによる観測
ニューホライズンズは,2006 年 1 月 19 日に打ち上げられ,2007 年 2 月に木星で重力アシストを行った.その後 2015 年 7 月 14 日に冥王星から 13700 km の位置をフライバイした.冥王星フライバイ後に,JR1 の観測も行われた.
なお,冥王星フライバイ後は,2019 年 1 月 1 日に 2014 MU69 に接近する予定である (Porter et al. 2015).
(15810) 1994 JR1 の発見と観測
(15810) 1994 JR1 (JR1) は,海王星と 2:3 の軌道共鳴をおこしているカイパーベルト天体である.1994 年に,Roque de los Muchachos Observatory の Issac Newton 望遠鏡を用いて発見された (Irwin et al. 1995).この天体は,冥王星・カロンを含めて 13 番目に発見されたカイパーベルト天体である.この天体は冥王星に近い位置にいるため (現在は 2.7 AU の距離),de la Fuente Marcos & de la Fuente Marcos (2012) では,JR1 は冥王星の準衛星 (quasi-sattelite) であるという説が提案された.準衛星とは,一定期間の間冥王星の近傍に滞在する軌道を持つが,重力的には束縛されていない天体のことである.しかし JR1 が冥王星の準衛星かどうかは,軌道の決定精度の問題で不確実であると考えられている.
パラメータ
軌道長半径:39.41 AU軌道離心率:0.1244
不変面に対する傾斜角:3.48°
自転周期:5.47 時間
直径:~ 250 km
幾何学的アルベド:0.04
その他の特徴
V - R は 0.76 であり,非常に赤っぽい色をしたカイパーベルト天体である.表面の粗度は 37° であり,クレーターが多い表面であることを示唆する.
海王星による擾乱によって,JR1 と冥王星は 240 万年ごとに接近する.この時,冥王星によっても擾乱をうける.
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この天体に関しては「(15810) 1994 JR1 は冥王星の準衛星である」という記述がしばしばあるものの,軌道の特徴から冥王星の準衛星である可能性があるという説が提唱されただけであり,冥王星の準衛星かどうかはそもそも確定していない.
なお,最近のニューホライズンズによるより詳細な観測を元にして,「この天体は冥王星の準衛星ではない」という否定的な見解が出されている.
参考リンク:New Horizons Collects First Science on a Post-Pluto Object | NASA