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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.00322
Bhatti et al. (2016)
HATS-19b, HATS-20b, HATS-21b: Three Transiting Hot-Saturns Discovered by the HATSouth Survey
(HATS-19b, HATS-20b, HATS-21b:HATSouth サーベイによる 3 つの高温の土星質量のトランジット惑星の発見)
これらの hot-Saturn をサンプルに加え,これまでに発見されている巨大ガス惑星の半径,中心星からの日射,中心星の金属量の関係性について再考察を行った.
その結果,惑星の平衡温度と惑星の半径には明確な正の相関があることが分かった.また,中心星の金属量と惑星半径には弱い負の相関が見られた.
観測された惑星半径への,様々な物理的パラメータの相対的な影響を評価するため,ランダムフォレスト回帰を行った.
解析の結果,hot-Saturn (0.1 - 0.5 木星質量) の範囲内では,惑星半径を決めるのには,惑星質量と惑星の平衡温度が主要な役割を果たしている事が判明した.対照的に,ホットジュピター (0.5 - 2.0 木星質量) では,惑星の半径の決定にもっとも重要なパラメータは惑星の平衡温度のみのように思われる.さらに重い惑星 (2.0 木星質量以上) では,惑星の平衡温度が主要であり,惑星質量と中心星の金属量は小さい寄与である.
有効温度:5896 K
金属量:[Fe/H] = 0.240
等級:13.030
質量:1.303 太陽質量
半径:1.75 太陽半径
光度:3.31 太陽光度
年齢:3.94 Gyr
距離:780 pc
軌道長半径:0.0589 AU
軌道離心率:0.30
質量:0.427 木星質量
半径:1.66 木星半径
平均密度:0.166 g cm-3
平衡温度:1570 K
他に膨張半径を持つ土星程度の質量の惑星には,WASP-31b (1.55 木星半径,Anderson et al. 2011),WASP-94 Ab (1.72 木星半径,Neveu-VanMalle et al. 2014),ケプラー12b (1.70 木星半径,Fortney et al. 2011) がある.これらの中心星の金属量はそれぞれ [Fe/H] = -0.20, +0.26, +0.07 である.
WASP-19 の金属量は +0.24 である.
中心星が金属量豊富だが惑星の半径が大きいという点は,惑星内部での運動エネルギーの熱化による加熱 (Guillot & Showman 2002) や,高い不透明度 (opacity) によるエネルギー輸送効率の低下 (Burrows et al. 2007),また大きな軌道離心率に伴う,潮汐加熱による余剰熱源の注入 (Jackson et al. 2008) の組み合わせによって説明できる可能性がある.
有効温度:5406 K
金属量:[Fe/H] = 0.030
等級:13.765
質量:0.910 太陽質量
半径:0.892 太陽半径
光度:0.612 太陽光度
年齢:6.4 Gyr
距離:454 pc
軌道長半径:0.04619 AU
質量:0.273 木星質量
半径:0.776 木星半径
平均密度:0.73 g cm-3
平衡温度:1147 K
惑星が中心星に近い位置にいる割に,質量-半径平面にプロットした際に左下の方 (半径が小さい側) に位置するのは,惑星の個体コアの質量が大きい (> 25 地球質量) のと,大気が受け取る日射が比較的小さいこと,また年齢が古く惑星の収縮が進んだことの組み合わせによるものである可能性がある.
有効温度:5695 K
金属量:[Fe/H] = 0.300
等級:12.191
質量:1.080 太陽質量
半径:1.021 太陽半径
光度:0.98 太陽光度
年齢:2.3 Gyr
距離:286 pc
軌道長半径:0.04676 AU
質量:0.332 木星質量
半径:1.123 木星半径
平均密度:0.290 g cm-3
平衡温度:1284 K
惑星の内部構造モデル (Fortney et al. 2007) に.この惑星が受け取る日射量や若い年齢 (~ 1.0 Gyr) を組み合わせると,惑星半径とモデルからの理論値はよく一致する.しかし,一致させるためには惑星の固体コア質量が小さい (< 10 地球質量) ことを要求する.
ここでは,軌道周期が 10 日未満の 207 惑星のサンプルの分析を行った.
また,惑星のサンプルをさらにグループ分けした.グループは,0.1 - 0.5 木星質量の "ホットサターン" 37 個,0.5 - 2.0 木星質量のホットジュピター 125 個,そして 2.0 木星質量以上の "大質量惑星" 45 個の 3 つである.
主な結果は以下の通りである.
このことは,これらの惑星は固体コアの占める割合が大きく (Miller & Fortney 2011),半径を大きく膨張させているメカニズムは,コアの重元素の量により敏感である事を要求する.例えば,大気の運動エネルギーの熱化による加熱 (Guillot & Showman 2002) である.これは,大気の不透明度によるエネルギー輸送効率の低下によるとするモデル (Burrows et al. 2007) とは対照的である.
このことは,半径を膨張させている機構は,惑星が受け取る日射と深い関係があることを示唆する.例えばオーム加熱 (Laughlin et al. 2011, Batygin et al. 2011) である.
この質量領域においては,半径を膨張させている機構は,オーム加熱と,惑星エンベロープ中の重元素の存在量の効果の組み合わせである可能性がある.
興味深いことに,惑星半径は,依存性は比較的小さいものの明確に軌道離心率にも依存している.従って,この質量領域では潮汐加熱も惑星半径に影響を及ぼしている可能性がある.
しかし観測での軌道離心率はたいていの場合上限値しか与えられておらず,多くの場合は 0 に固定して解析が行われている.軌道離心率を 0 に固定して解析されているような惑星の軌道離心率は,おそらく最大で ~ 0.03 程度だろうと考えられている (Jackson et al. 2008).従って,潮汐加熱を介した惑星半径への寄与は,今回解析したサンプル内では過小評価されているかもしれない.
arXiv:1607.00322
Bhatti et al. (2016)
HATS-19b, HATS-20b, HATS-21b: Three Transiting Hot-Saturns Discovered by the HATSouth Survey
(HATS-19b, HATS-20b, HATS-21b:HATSouth サーベイによる 3 つの高温の土星質量のトランジット惑星の発見)
概要
HATSouth プロジェクトで 3 つの高温な土星程度の質量を持つ惑星 (論文中では hot-Saturn と呼称),HATS-19b, HATS-20b, HATS-21b を発見した.これらの hot-Saturn をサンプルに加え,これまでに発見されている巨大ガス惑星の半径,中心星からの日射,中心星の金属量の関係性について再考察を行った.
その結果,惑星の平衡温度と惑星の半径には明確な正の相関があることが分かった.また,中心星の金属量と惑星半径には弱い負の相関が見られた.
観測された惑星半径への,様々な物理的パラメータの相対的な影響を評価するため,ランダムフォレスト回帰を行った.
解析の結果,hot-Saturn (0.1 - 0.5 木星質量) の範囲内では,惑星半径を決めるのには,惑星質量と惑星の平衡温度が主要な役割を果たしている事が判明した.対照的に,ホットジュピター (0.5 - 2.0 木星質量) では,惑星の半径の決定にもっとも重要なパラメータは惑星の平衡温度のみのように思われる.さらに重い惑星 (2.0 木星質量以上) では,惑星の平衡温度が主要であり,惑星質量と中心星の金属量は小さい寄与である.
パラメータ
HATS-19系
HATS-19
スペクトル型:G0有効温度:5896 K
金属量:[Fe/H] = 0.240
等級:13.030
質量:1.303 太陽質量
半径:1.75 太陽半径
光度:3.31 太陽光度
年齢:3.94 Gyr
距離:780 pc
HATS-19b
軌道周期:4.569673 日軌道長半径:0.0589 AU
軌道離心率:0.30
質量:0.427 木星質量
半径:1.66 木星半径
平均密度:0.166 g cm-3
平衡温度:1570 K
HATS-19b の特徴
この惑星は軌道離心率が大きい.また,理論的に期待される質量と半径の関係 (Fortney et al. 2007) よりも大きく,膨張半径を持つ惑星の一種である.他に膨張半径を持つ土星程度の質量の惑星には,WASP-31b (1.55 木星半径,Anderson et al. 2011),WASP-94 Ab (1.72 木星半径,Neveu-VanMalle et al. 2014),ケプラー12b (1.70 木星半径,Fortney et al. 2011) がある.これらの中心星の金属量はそれぞれ [Fe/H] = -0.20, +0.26, +0.07 である.
WASP-19 の金属量は +0.24 である.
中心星が金属量豊富だが惑星の半径が大きいという点は,惑星内部での運動エネルギーの熱化による加熱 (Guillot & Showman 2002) や,高い不透明度 (opacity) によるエネルギー輸送効率の低下 (Burrows et al. 2007),また大きな軌道離心率に伴う,潮汐加熱による余剰熱源の注入 (Jackson et al. 2008) の組み合わせによって説明できる可能性がある.
HATS-20系
HATS-20
スペクトル型:G9V有効温度:5406 K
金属量:[Fe/H] = 0.030
等級:13.765
質量:0.910 太陽質量
半径:0.892 太陽半径
光度:0.612 太陽光度
年齢:6.4 Gyr
距離:454 pc
HATS-20b
軌道周期:3.7992969 日軌道長半径:0.04619 AU
質量:0.273 木星質量
半径:0.776 木星半径
平均密度:0.73 g cm-3
平衡温度:1147 K
HATS-20b の特徴
この惑星は密度が大きい.また中心星の金属量は太陽と類似している.惑星が中心星に近い位置にいる割に,質量-半径平面にプロットした際に左下の方 (半径が小さい側) に位置するのは,惑星の個体コアの質量が大きい (> 25 地球質量) のと,大気が受け取る日射が比較的小さいこと,また年齢が古く惑星の収縮が進んだことの組み合わせによるものである可能性がある.
HATS-21系
HATS-21
スペクトル型:G4V有効温度:5695 K
金属量:[Fe/H] = 0.300
等級:12.191
質量:1.080 太陽質量
半径:1.021 太陽半径
光度:0.98 太陽光度
年齢:2.3 Gyr
距離:286 pc
HATS-21b
軌道周期:3.5543973 日軌道長半径:0.04676 AU
質量:0.332 木星質量
半径:1.123 木星半径
平均密度:0.290 g cm-3
平衡温度:1284 K
HATS-21b の特徴
この惑星は,金属量豊富な恒星まわりの土星質量の惑星である.惑星の内部構造モデル (Fortney et al. 2007) に.この惑星が受け取る日射量や若い年齢 (~ 1.0 Gyr) を組み合わせると,惑星半径とモデルからの理論値はよく一致する.しかし,一致させるためには惑星の固体コア質量が小さい (< 10 地球質量) ことを要求する.
惑星半径の物理量依存性
惑星の半径が,惑星の平衡温度,中心星の金属量 ([Fe/H] の値),惑星質量,軌道長半径,軌道離心率,中心星質量とどの程度相関しているかの調査を行った.ここでは,軌道周期が 10 日未満の 207 惑星のサンプルの分析を行った.
また,惑星のサンプルをさらにグループ分けした.グループは,0.1 - 0.5 木星質量の "ホットサターン" 37 個,0.5 - 2.0 木星質量のホットジュピター 125 個,そして 2.0 木星質量以上の "大質量惑星" 45 個の 3 つである.
主な結果は以下の通りである.
ホットサターンの半径
ホットサターンは,惑星質量と惑星の平衡温度に大きく依存する.また中心星の金属量には弱い負の依存性が見られる.このことは,これらの惑星は固体コアの占める割合が大きく (Miller & Fortney 2011),半径を大きく膨張させているメカニズムは,コアの重元素の量により敏感である事を要求する.例えば,大気の運動エネルギーの熱化による加熱 (Guillot & Showman 2002) である.これは,大気の不透明度によるエネルギー輸送効率の低下によるとするモデル (Burrows et al. 2007) とは対照的である.
ホットジュピターの半径
ホットジュピターの場合,惑星質量や金属量と比べると,惑星の平衡温度への依存性が遥かに大きい.これはホットサターンとは異なる傾向である.このことは,半径を膨張させている機構は,惑星が受け取る日射と深い関係があることを示唆する.例えばオーム加熱 (Laughlin et al. 2011, Batygin et al. 2011) である.
大質量惑星の半径
さらに質量が大きい惑星の場合,半径は惑星の並行温度への依存性が大きかった.また,惑星質量と中心星の金属量との相関は,同程度の弱い寄与がある.この質量領域においては,半径を膨張させている機構は,オーム加熱と,惑星エンベロープ中の重元素の存在量の効果の組み合わせである可能性がある.
興味深いことに,惑星半径は,依存性は比較的小さいものの明確に軌道離心率にも依存している.従って,この質量領域では潮汐加熱も惑星半径に影響を及ぼしている可能性がある.
軌道離心率の寄与
軌道離心率は,大質量惑星を除くと半径への寄与は見られなかった.しかし観測での軌道離心率はたいていの場合上限値しか与えられておらず,多くの場合は 0 に固定して解析が行われている.軌道離心率を 0 に固定して解析されているような惑星の軌道離心率は,おそらく最大で ~ 0.03 程度だろうと考えられている (Jackson et al. 2008).従って,潮汐加熱を介した惑星半径への寄与は,今回解析したサンプル内では過小評価されているかもしれない.
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