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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1607.00774
Hay et al. (2016)
WASP-92b, WASP-93b and WASP-118b: Three new transiting close-in giant planets
(WASP-92b, WASP-93b と WASP-118b:3 つの新しいトランジット近接巨大惑星)

概要

トランジット法で新しい 3 つの巨大惑星 WASP-92b, WASP-93b WASP-118b を発見した.検出は WASP サーベイで行い,その後分光観測による視線速度観測とフォローアップ観測によって惑星系の特徴付けを行った.

WASP-93b は潮汐相互作用によって外側に移動していると考えられ,これは他の多くのホットジュピターの潮汐進化による振る舞いとは異なる.

パラメータ

WASP-92 系

WASP-92
スペクトル型:F7
等級:13.18
有効温度:6258 K
金属量:[Fe/H] = 0.00
質量:1.190 太陽質量
半径:1.341 太陽半径
距離:530 pc
WASP-92b
軌道周期:2.1746742 日
質量:0.805 木星質量
半径:1.461 木星半径
平均密度:0.260 g cm-3
軌道長半径:0.03480 AU
平衡温度:1871 K

WASP-93 系

WASP-93
スペクトル型:F4
等級:10.97
有効温度:6696 K
金属量:[Fe/H] = 0.06
質量:1.334 太陽質量
半径:1.524 太陽半径
距離:250 pc
WASP-93b
軌道周期:2.7325321 日
質量:1.47 木星質量
半径:1.597 木星半径
平均密度:0.360 g cm-3
軌道長半径:0.04211 AU
平衡温度:1942 K

WASP-118 系

WASP-118
スペクトル型:F6
等級:11.02
有効温度:6420 K
金属量:[Fe/H] = 0.16
質量:1.320 太陽質量
半径:1.696 太陽半径
距離:250 pc
WASP-118b
軌道周期:4.0460435 日
質量:0.514 木星質量
半径:1.440 木星半径
平均密度:0.175 g cm-3
軌道長半径:0.05453 AU
平衡温度:1729 K

惑星軌道の潮汐進化

近接惑星の軌道進化

多くのホットジュピターは,Darwin-unstable orbit にある (Darwin 1879).そのため,惑星はロッシュ限界半径の方向へ軌道進化し,ロッシュ限界半径に到達した場合は惑星は破壊される (Matsumura et al. 2010).

惑星軌道の全角運動量 Ltot が,臨界角運動量 Lc よりも小さい場合,軌道は不安定となる.

臨界角運動量は以下のように表される.



ここで,C は中心星の慣性モーメント,Cp は惑星の慣性モーメントである (Counselman 1973, Hut 1980).

また,全角運動量は以下のように書ける.



ここで,軌道角運動量は



である.また,軌道移動のタイムスケールは



となる.ここで,Q'★, 0 は恒星の潮汐の Q 値,n は軌道周波数である (Brown et al. 2011).

WASP-92b の潮汐進化

この系では,Ltot/Lc ~ 0.67 となり,WASP-92b は他の多くのホットジュピターと同様,ロッシュ限界半径の方向 (内側) へ軌道移動していると考えられる.

恒星の潮汐の Q 値を Q'★, 0 ~ 108 と仮定すると,軌道移動のタイムスケールは t ~ 16 Gyr となる.これは中心星の残りの寿命よりも十分長い.

WASP-93b の潮汐進化

この系では,Ltot/Lc ~ 1.57 となり,1 より大きい値となった.この系では,惑星の公転軸が中心星の自転軸と揃っていて,角運動量が保存するのであれば,WASP-93b は L を一定とするように現在の軌道よりも外側の平衡軌道へと移動する.
この外側の平衡軌道というのは,エネルギーが最小の地点であり,かつ Darwin stable dual-synchronised orbit である.(ダーウィン安定の二重同期軌道)

軌道移動のタイムスケールは数値計算から推定することが出来る (Matsumura et al. 2010).Matsumura et al. (2010) での表式より,Q'★, 0 = 108 を仮定すると軌道移動のタイムスケールは t ~ 2 × 107 Gyr (2 京年) となる.Q'★, 0 がもっと小さい値だったとしても,これは中心星の残りの寿命よりも遥かに長い.

ただし,ドップラートモグラフィーによる解析より,この系では惑星の公転軸と恒星の自転軸はずれてることが示唆される.従って,恒星の赤道平面での現在の全角運動量は,軸が揃っている場合よりも小さくなる.ドップラートモグラフィーからは,軸は ~ 30° を超えてずれていることが示唆されており,この場合は惑星は潮汐進化によって内側へ軌道進化する.

WASP-118b の潮汐進化

この系では,Ltot/Lc ~ 1.07 となり,1 よりわずかに大きくなった.

しかし現在の惑星の位置は,内側の平衡軌道よりもさらに内側に存在する.そのため,この系は安定状態へと到達することが出来ず,惑星は内側へ移動する.

内側へ落下するタイムスケールは ~ 150 Gyr となる (Q'★, 0 ~ 108 を仮定した場合).

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