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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.02341
Barros et al. (2016)
Discovery of WASP-113b and WASP-114b, two inflated hot-Jupiters with contrasting densities
(対照的な密度を持つ 2 つの膨張したホットジュピター,WASP-113b と WASP-114b の発見)
2 つの惑星は半径が似ているが,WASP-114b は WASP-113b よりも 4 倍ほど重い.
どちらも膨張した半径を持っており,特に WASP-113b は膨張度を示すパラメータは R = 0.35 である.大気のスケールハイトは ~ 950 km であり,大気のフォローアップ観測対象として適している.
等級:11.771
有効温度:5890 K
金属量:[Fe/H] = 0.10
質量:1.318 太陽質量
半径:1.608 太陽半径
距離:360 pc
質量:0.475 木星質量
半径:1.409 木星半径
平均密度:0.172 g cm-3
軌道長半径:0.05885 AU
平衡温度:1496 K
等級:12.743
有効温度:5940 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
質量:1.289 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
距離:460 pc
質量:1.769 木星質量
半径:1.339 木星半径
平均密度:0.73 g cm-3
軌道長半径:0.02851 AU
平衡温度:2043 K
Fortney et al. (2007) のモデルを適用すると,惑星が固体コアを持たない場合は WASP-113b の半径は 1.05 木星半径,WASP-114b は 1.15 木星半径となる.これは観測された惑星半径より明らかに小さい.
Laughlin et al. (2011) での半径異常 (radius anomaly) の指標を用いると,それぞれ R = 0.35, 0.189 となる.
近年の観測で分かっていることは,惑星半径を膨張させているものが何であるかに関わらず,惑星が受け取る日射量と半径異常は相関があるということである (Laughlin et al. 2011, Weiss et al. 2013).
惑星が受ける日射が穏やかな場合は惑星は膨張半径を持たない (Demory & Seager 2011).惑星の平衡温度を比較すると,WASP-114b > WASP113b となっているため,一見この傾向に反しているように見える.WASP-113b は,Laughlin et al. (2011) で示されている半径以上の指標の温度依存性 R ∝ Teq1.4 に従っているが,WASP-114b はその依存性を下回っている.
しかし両者は質量が大きく異なる.WASP-114b は WASP-113b よりも 3.7 倍重い.そのため重元素も多く,さらに大きな重力束縛エネルギーがあるため,これらが半径を小さくする方向にはたらく.
ホットジュピターの半径を大きくしている機構としては,潮汐加熱 (Bodenheimer et al. 2001),大気の不透明度 (opacity) によるとするもの (Burrows et al. 2007),惑星大気中での風による運動学的加熱 (Guillot & Showman 2002),オーム加熱 (Batygin et al. 2011) が提案されている.後者 2 つの説は惑星が受ける日射フラックスと関係しているが,全ての半径異常を説明することは出来ないことも分かっている (Spiegel & Burrows 2013など).
arXiv:1607.02341
Barros et al. (2016)
Discovery of WASP-113b and WASP-114b, two inflated hot-Jupiters with contrasting densities
(対照的な密度を持つ 2 つの膨張したホットジュピター,WASP-113b と WASP-114b の発見)
概要
WASP サーベイと,SOPHIE, CORALIE によるフォローアップ観測によって,WASP-113b と WASP-114b を発見した.中心星のスペクトル型はどちらも早期の G 型であり,有効温度も ~ 5900 K と似ている.しかし WASP-113 は WASP-114 よりも年老いている.2 つの惑星は半径が似ているが,WASP-114b は WASP-113b よりも 4 倍ほど重い.
どちらも膨張した半径を持っており,特に WASP-113b は膨張度を示すパラメータは R = 0.35 である.大気のスケールハイトは ~ 950 km であり,大気のフォローアップ観測対象として適している.
パラメータ
WASP-113 系
WASP-113
スペクトル型:G1等級:11.771
有効温度:5890 K
金属量:[Fe/H] = 0.10
質量:1.318 太陽質量
半径:1.608 太陽半径
距離:360 pc
WASP-113b
軌道周期:4.54216874538 日質量:0.475 木星質量
半径:1.409 木星半径
平均密度:0.172 g cm-3
軌道長半径:0.05885 AU
平衡温度:1496 K
WASP-114 系
WASP-114
スペクトル型:G0等級:12.743
有効温度:5940 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
質量:1.289 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
距離:460 pc
WASP-114b
軌道周期:1.5487743 日質量:1.769 木星質量
半径:1.339 木星半径
平均密度:0.73 g cm-3
軌道長半径:0.02851 AU
平衡温度:2043 K
ホットジュピターの膨張半径について
巨大ガス惑星の質量-半径依存性では,惑星半径は初期の組成に依存する.重元素の存在は惑星半径を小さくする方向にはたらく.Fortney et al. (2007) のモデルを適用すると,惑星が固体コアを持たない場合は WASP-113b の半径は 1.05 木星半径,WASP-114b は 1.15 木星半径となる.これは観測された惑星半径より明らかに小さい.
Laughlin et al. (2011) での半径異常 (radius anomaly) の指標を用いると,それぞれ R = 0.35, 0.189 となる.
近年の観測で分かっていることは,惑星半径を膨張させているものが何であるかに関わらず,惑星が受け取る日射量と半径異常は相関があるということである (Laughlin et al. 2011, Weiss et al. 2013).
惑星が受ける日射が穏やかな場合は惑星は膨張半径を持たない (Demory & Seager 2011).惑星の平衡温度を比較すると,WASP-114b > WASP113b となっているため,一見この傾向に反しているように見える.WASP-113b は,Laughlin et al. (2011) で示されている半径以上の指標の温度依存性 R ∝ Teq1.4 に従っているが,WASP-114b はその依存性を下回っている.
しかし両者は質量が大きく異なる.WASP-114b は WASP-113b よりも 3.7 倍重い.そのため重元素も多く,さらに大きな重力束縛エネルギーがあるため,これらが半径を小さくする方向にはたらく.
ホットジュピターの半径を大きくしている機構としては,潮汐加熱 (Bodenheimer et al. 2001),大気の不透明度 (opacity) によるとするもの (Burrows et al. 2007),惑星大気中での風による運動学的加熱 (Guillot & Showman 2002),オーム加熱 (Batygin et al. 2011) が提案されている.後者 2 つの説は惑星が受ける日射フラックスと関係しているが,全ての半径異常を説明することは出来ないことも分かっている (Spiegel & Burrows 2013など).
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