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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1607.06007
Rich et al. (2016)
Thermal Infrared Imaging and Atmospheric Modeling of VHS J125601.92-125723.9 b: Evidence for Moderately Thick Clouds and Equilibrium Carbon Chemistry in a Hierarchical Triple System
(VHS J125601.92-125723.9 b の熱赤外線撮像と大気モデリング:階層的三重星系における炭素の科学へ行こうとやや厚い雲の証拠)

概要

近傍の M 型矮星 VHS J125601.92-125723.9 系を,すばる望遠鏡の IRCS L', M' バンドでの撮像観測を行った.この恒星は,~ 102 AU の距離に ~ 11 木星質量の天体を持つという報告がされている (Gauza et al. 2015).

今回の補償光学 (adaptive optics, AO) を用いた撮像観測で,中心星の VHS J125601.92-125723.9 が連星であることを部分的に空間分解した.連星間は 0.106" の角度であり,両者の明るさはほぼ等しい.

また,惑星質量天体の VHS J125601.92-125723.9 b は,L' バンドでの光度は HR 8799b, c, d, e (いずれも直接撮像で発見された惑星) と類似している.しかし,H-M' の色ではこれらよりも赤い色を示す.これは,HR 8799b, c, d, e よりも M' バンドでのフラックス密度が大きいことを示し,VHS J125601.92-125723.9 b の大気内では非平衡炭素化学が弱いことを示唆している.

また,化学平衡状態を仮定した大気モデルと,可視から熱赤外線領域でのスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) が良く一致した,ここで仮定したモデルは,HR 8799b の 5 µm でのフラックスでは一致しなかったものである.
VHS J125601.92-125723.9 b はやや厚い雲を持っている事を示唆する観測結果である.しかし,HR 8799b, c, d, e で示唆されているほど厚い雲ではないと考えられる.

この系の年齢は少なくとも 200 Myr であり,連星である中心星はどちらも少なくとも 58 木星質量であると考えられる.

またこの系で得られた幾つかの特性は,最近言われている.この系が AB Dor moving group (かじき座AB運動星団) の一員であるという主張と非整合的なものであった.

この系までの距離は,12.7 pc もしくは 17.1 pc である.これより,VHS J125601.92-125723.9 b の質量は 10.5 - 26.2 木星質量の間の値を取ると考えられる.


検出限界から考えると,6 - 8 AU までの範囲には,VHS J125601.92-125723.9 b よりも重い天体は存在しない.従って,VHS J125601.92-125723.9 b を現在の位置のような外側まで散乱させることが出来る,2 つ目の天体は存在しないだろうと思われる.


なお,中心星の VHS J125601.92-125723.9 が連星であることは,Stone et al. (2016) でも同時期に報告がある.
※注釈
VHS は,VISTA Hemisphere Survey の略称である.これは 2009 年より欧州南天天文台 (European Southern Observatory, ESO) がチリに持つ Cerro Paranal Observatory で運用されている,口径 4 m の VISTA 望遠鏡を用いて行われているサーベイ観測の名称である.
なお,VISTA は Visible and Infrared Survey Telescope for Astronomy の略称である.

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