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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1607.05272
Wang et al. (2016)
The Orbit and Transit Prospects for β Pictoris b constrained with One Milliarcsecond Astrometry
(1 ミリ秒角アストロメトリで制約されたがか座ベータ星b の軌道とトランジットの可能性)

概要

Gemini Planet Imager (GPI) は,系外惑星系のアストロメトリ (位置天文学) 観測からの惑星の軌道を決定することが目標である.ここでは,その解析手順,観測戦略 (angular and spectral differential imaging) と,データリダクション手法 (Karhunen-Lo`eve Image Projection algorithm) について述べる.また,これを GPI で得られたがか座ベータ星b (β Pic b, β Pictoris b) の観測結果に適用した.

その結果,がか座ベータ星b は 10 σ の確度でトランジットしないという結論を得た.しかしがか座ベータ星b のヒル球はトランジットを起こす.従って,若く進化中の系外惑星の周惑星環境に関する情報を得る希少な機会であると考えられる.

ヒル球トランジットの可能性

がか座ベータ星b の特徴とトランジットの可能性

がか座ベータ星b 形成の初期条件が hot-start だと仮定し,進化トラックから 12.7 木星質量 (Morzinski et al. 2015) とする.また,マルコフチェーンモンテカルロ (Markov chain Monte Carlo, MCMC) 計算より得られた軌道長半径,軌道離心率,中心星質量と,ヒル半径の近似式 (Hamilton & Barns 1992)



を用いると,ヒル半径は 1.165 AU (59.9 秒角) となる.
ここで a は軌道長半径,e は軌道離心率,m は惑星質量,M は中心星質量である.

得られたがか座ベータ星b の軌道から推定した,主星へのみかけの再接近時の距離は 9.9 秒角 (射影距離 0.19 AU) であるため,惑星本体はトランジットを起こさないものの,惑星のヒル球はトランジットを起こす

ヒル球トランジットの予測

トランジット継続時間は長い.ヒル球トランジットの予定は以下のとおりである.

2017 年 4 月 3 日 :ヒル球トランジットの開始 (ingress)
2017 年 6 月 20 日:ヒル球の 1/2 地点のトランジットの開始
2017 年 8 月 31 日:主星への惑星の最接近 (トランジットの中心)
2017 年 11 月 12 日:ヒル球の 1/2 地点のトランジットの終了 (egress)
2018 年 1 月 29 日:ヒル球トランジットの終了

がか座ベータ星の赤経を考えると,地上からの観測はほとんどの地点では不可能である.その期間中の南極の地上望遠鏡や,南極上空へ行くことの出来る航空機搭載型の望遠鏡,また宇宙望遠鏡であれば観測することが出来る.

ヒル球のトランジットで何が見られるかは不明である.
衛星を持つ場合,衛星のトランジットが発生する可能性はある.例えばガニメデサイズの衛星を持つ場合,トランジットの減光は 2.7 mmag,イオサイズであれば 1.9 mmag となり,トランジット継続時間は ~ 2 日となる.ただし中心星は変光星であるため,注意深いモデリングが必要である.

あるいは,若い惑星であるため,周惑星円盤 (circumplanetary disk) や環があるかもしれない.例えば,1SWASP J140747.93-394542.6 (J1407) のようなものである (Kenworthy & Mamajek 2015).この J1407 は年齢が 14 Myr であり,0.6 AU の大きさの円盤を持っていることが,トランジット光度曲線の形状から示唆されている (Mamajek et al. 2012).

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