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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1608.00706
Way et al. (2016)
Was Venus the First Habitable World of our Solar System?
(金星は我々の太陽系で最初の居住可能な惑星だったか?)

概要

現在の金星は温度が 750 K あり,大気も現在の地球より 90 倍も厚い惑星である.しかし数十億年前は金星の状態も違った可能性がある.

ここでは,マゼランによる金星の地形データ,29 - 7.15 億年前までの太陽の分光放射照度の推定値,現在の金星軌道のパラメータ,現在の理論と計測に整合的な海の体積,初期の金星に推定される大気組成と,三次元の気候シミュレーションを合わせ,金星の過去の気候の推定を行った.

その結果,これらのパラメータを用いた計算からは,過去の金星は現在の地球よりも 46 - 70%多い日射を受けているにもかかわらず,自転周期が 16 日よりも長ければ表面は温暖な温度になり得る事が判明した.

現在の金星の自転周期が 243 日であることを考えると,金星は 7 億 1500 万年前まではハビタブルな環境下だったと考えられる (ただし初期条件として浅い海が存在する場合).

この研究より,これまでに発見されている系外惑星の金星的な惑星の気候の歴史の理解には,惑星の自転と地形が極めて重要な役割を果たすという事が示された.

計算手法

計算の設定

計算には,Goddard Institute for Space Studies の ROCKE-3D (Resolving Orbital and Climate Keys of Earth and Extraterrestrial Environments with Dynamics) GCM を用いている.

シミュレーションは,デカルト座標で 4° × 5° の経度・緯度の解像度,大気は 20 層で上端を 0.1 hPa とした.また大気は,13 層からなる完全に動的な海洋と結合している (Russell et al. 1995).

初期パラメータ

地面のアルベドは,Yang et al. (2014) に従い,0.2 を初期値とした.計算開始時は陸地には氷は無い状態だが,氷の蓄積は考慮に入れた.

現在の金星大気には窒素分子が相当量存在するが,窒素の供給源や吸収源がほとんど存在しないことから,古代の金星大気は ~ 1 bar の窒素大気を持っていたと仮定する.

金星表面は,数億年前の火山活動で更新されている (McKinnon et al. 1997など).そのため,それ以前の地形は不明である.ここでは Venus Magellan mission による地形のデータを計算に使用した.

標高が低い部分は水で覆い,海水面は金星の平均半径と同じと仮定した.これは平均水深が 310 m になることに対応している.またこの値は,偶然にも Donahue & Russell (1997) によるの推定の範囲内である.
海の体積は 1.4 × 1017 m3 であり,これは現在の地球の値 1.3 × 1018 m3 よりも 1 桁少ない.この設定において,海は全球の 60 % を占める.

シミュレーションのセット

シミュレーションは 4 セット行った.
  • Sim A:金星の地形,2.9 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2001 W m-2,自転周期は現在の金星の値
  • Sim B:金星の地形,0.715 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2357 W m-2,自転周期は現在の金星の値
  • Sim C:地球の地形,2.9 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2001 W m-2,自転周期は現在の金星の値
  • Sim D:金星の地形,2.9 Gyr 前の太陽のスペクトルを使用,日射は 2001 W m-2,自転周期は地球の 16 倍

結果

表面温度の結果は以下のようになった.
  • Sim A:最低温度 -22℃,最高温度 36℃,平均温度 11℃
  • Sim B:最低温度 -17℃,最高温度 35℃,平均温度 15℃
  • Sim C:最低温度 -13℃,最高温度 46℃,平均温度 23℃
  • Sim D:最低温度 27℃,最高温度 84℃,平均温度 56℃
Sim A では,表面の大気温度の平均値は 11℃となった.表面温度が取る範囲は現在の地球よりも小さい.これの一番大きな理由としては,自転が遅い惑星での力学的な熱輸送によって水平方向の温度勾配を効率良く下げることがあり,二番目には地球の最低温度は Sim A の設定には存在しない,極域の大陸部分で発生するからである.

Sim A と B では受け取るフラックスが現在の金星と比べて 77%→94% となっているが,平均温度はわずかに 4℃上昇するのみである.

しかし惑星の自転周期の影響は大きい.自転周期を 16 日にした結果とは大きく異なり,これは Yang et al. (2014) と整合的な結果である.

雲の発生について,昼側の雲の被覆率は 100%に近くなった.自転が遅い場合は上昇流を伴う強い大気循環を生み,昼側に日射を反射する厚い雲を形成する.これも Yang et al. (2014) と整合的である.

対流雲によって水蒸気と凝縮物が上昇気流で上空へ運ばれる.上昇流が安定になる対流圏の中部・上部に到達すると流れは拡散し,水蒸気と雲粒子をその領域に注入し,巻雲やかなとこ雲などの反射性の覆いを形成する.これは地球の intertropical convergence zone (熱帯収束帯) での雲と類似している.ただし金星の条件下では,自転速度が遅いため対流は何日も同じ場所に存在し,数カ月にわたって広い範囲が曇りとなる.

Sim A, B, C では,夜側は雪が降るのには十分な低温になる.雪は数 cm 積もり,これは昼には完全に溶ける.また,大きな cold trap は存在しない.
しかし Sim A, B では,標高 5000 m を超える最も高い場所の計算セル (Ishtar Terra に相当) では,時間によって変動しない ~ 5 m 程度の万年雪が出来る.

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