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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1609.00239
Smith et al. (2016)
EPIC 212803289: a subgiant hosting a transiting warm Jupiter in an eccentric orbit and a long-period companion
(EPIC 212803289:高軌道離心率軌道にいるトランジットする温暖な木星型惑星と長周期の伴星を持つ準巨星)

概要

ケプラーの K2 ミッションによる惑星の発見を報告する.

今回発見された EPIC 212803289b は,軌道周期 18.25 日,軌道離心率がおよそ 0.19 のややエキセントリックな軌道にある.トランジット法で検出され,視線速度法で確認された.質量は 0.97 木星質量,半径は 1.29 木星半径である

中心星の EPIC 212803289 は,おとめ座の領域にある 11 等星で,準巨星である.金属豊富で [Fe/H] = 0.20,質量は 1.60 太陽質量,半径は 3.1 太陽半径である.

視線速度にさらなる変動が検出され,この系での 3 体目の天体の存在が示唆される.おそらく,数百日の軌道周期を持つ褐色矮星だろうと考えられる.

パラメータ

EPIC 212803289
スペクトル型:G0 IV
等級:11.149
質量:1.60 太陽質量
半径:3.1 太陽半径
有効温度:5990 K
金属量:[Fe/H] = 0.20
年齢:2.4 Gyr
距離:604 pc
EPIC 212803289b
軌道周期:18.249 日
軌道長半径:0.159 AU
軌道離心率:0.19
質量:0.97 木星質量
半径:1.29 木星半径

考察

EPIC 212803289 系について

EPIC 212803289 はトランジット惑星を持つ準巨星 (subgiant) である.Hurley et al. (2000) の恒星の半径・質量・年齢の進化トラックからは,惑星 EPIC 212803289b は 150 Myr のうちに中心星に飲み込まれると考えられる.

他の準巨星まわりのトランジット惑星には,KELT-11b (Pepper et al. 2016, 軌道周期 4.7 日),K2-39b (Van Eylen et al. 2016, 同 4.6 日) があるが,どちらも系内 3 体目の長周期の天体が存在することを示唆するシグナルが検出されている.

ただし系としてはケプラー435 (KOI-680) 系が最も似ているかもしれない.ケプラー 435 系は,中心星がスペクトル型 F9 の準巨星で半径は 3.2 太陽半径,惑星は軌道離心率が 0.11,軌道周期は 8.6 日となっている.この系でも 3 体目の存在を示すシグナルらしきもの (周期 790 日以上) があり,惑星質量天体が存在する可能性がある.

別の惑星の存在について

Huang et al. (2016) によると,ホットジュピター (ここでは軌道周期 10 日未満) と温かい木星型惑星 (ウォームジュピター,ここでは軌道周期が 10 - 200 日) の間には隔たりがあるとしている.ウォームジュピターは木星より軽い程度の別の惑星を系内に持つ傾向があり,ウォームジュピターを持つ系の半数では近くに別の小さい惑星が検出されている.

しかし今回はそのような天体の検出は無かった.

検出があった例としては,WASP-47 系などがある (Hellier et al. 2012, Becker et al. 2015).ただし今回の系については,恒星が大きいため,小さい惑星の検出については感度が低くなっていることや,ケプラーによる観測期間的には発見が難しいという観測バイアスがある可能性はある.

惑星の軌道要素の長期進化

軌道進化について,Jackson et al. (2008) による軌道の円軌道化のタイムスケールは,惑星の潮汐の Q 値を 105.5,恒星を 106.5 とすると,84 Gyr (840 億年) となる.惑星の Q 値を 35000 (Lainey et al. (2009) による木星の値),恒星を 105 という極端な値を考えても 9.2 Gyr (92 億年) となり,系の年齢 2.4 Gyr よりも長い.

従って,潮汐によって軌道離心率は大きくは減少しない.


惑星の軌道移動について,ウォームジュピターで軌道離心率が大きいものの大部分は,系内の 3 体目の天体によって引き起こされた内側への軌道移動が原因だと示唆されている (Dong et al. 2014).ただし,今回発見された EPIC 212803289b の軌道離心率は,Dong et al. (2014) での軌道離心率の閾値 0.4 よりも小さい.

しかし軌道要素の変動において,現在は軌道離心率が低いフェーズにいるという可能性は有り得る.その場合,永年的なタイムスケールで軌道離心率は増大すると考えられる.仮に EPIC 212803289b が Kozai 機構などで軌道移動している最中なのであれば,惑星軌道面の軸は中心星の自転軸と大きくずれている可能性があり,大きな Rossiter 効果の振幅があることが期待される.これまでに惑星の公転軸の傾斜が測定されたウォームジュピター (軌道周期 10 日以上,半径 0.6 木星以上) は 7 個のみであり,そのうち 4 つは揃っており,3 つは大きくずれている.

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