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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1610.04305
Hastings et al. (2016)
The Short Rotation Period of Hi'iaka, Haumea's Largest Satellite
(ハウメアの最も大きい衛星ヒイアカの速い自転)

概要

ヒイアカハウメアの,外側の大きい衛星であるハッブル宇宙望遠鏡とマゼランの相対測光観測と,位相分散最小化分析より,ヒイアカの自転周期を ~ 9.8 時間 (二重ピーク) と同定した.これはヒイアカの公転周期よりも 120 倍速い値である.

この観測結果は,この衛星の形成と潮汐進化に対して新たな問題を投げかける.
高速な自転からは,この衛星が大きな自転軸傾斜角を持つことと,数年以内に光度曲線で観測できるであろう自転軸の歳差を持つということが示唆される.


また,この予想外に高速な自転周期から,現在はまだよく分かっていない,ハウメア系とハウメア族の形成過程への示唆についても調査を行った.特に,初期のヒイアカの軌道長半径と自転周期の,潮汐進化理論における重要性について調べた.

その結果,他の系や連星系と同様に,自転と公転が同期するようになるまでに要する時間は,軌道長半径と初期の自転周期に大きく影響されることが分かった.また,ヒイアカがロッシュ限界付近で形成されたとしても,潮汐による自転の減速によって必ずしも自転と公転の同期状態に落ち着くわけではないということも判明した.従って,観測された速い自転周期は,ヒイアカが大きな潮汐進化を起こしたことを否定するものではない.

ヒイアカの自転周期は,現在のヒイアカの位置における形成と,ハウメアを中心とした軌道を持つ衝突体による自転の加速という系の形成メカニズムとも整合的なものである.

ハウメア系とハウメア族

準惑星であるハウメアは,その他のカイパーベルト天体に比べて目立つ存在である.

自転周期は,同程度のサイズを持つ天体の中で最も速く,3.9154 時間である (Rabinowitz et al. 2006).また,ヒイアカとナマカという 2 つの規則衛星を持っている (Ragozzine & Brown 2009).さらに,ハウメアに付随する衝突族 (単一の天体衝突イベントによって形成されたと考えられる小天体の集まり) であるハウメア族を従えている (Brown et al. 2007).

ハウメア族は,他の族とは異なる特性をハウメアと共有している.例えば,強い水氷のスペクトルを持つ点 (Schaller & Brown 2008など),アルベドが高い点 (Elliot et al. 2010),またおそらく族内の天体の平均自転周期 6.27 時間がその他のカイパーベルト天体の平均値 7.65 時間よりも速いという点 (Thirouin et al. 2016) である.
これらは,大きな衝突によってハウメア族が形成された可能性を示している.またこの衝突により,ハウメアの自転を速め,族や衛星が形成されたと考えられる.

しかし既存の形成シナリオでは,全てを整合的に説明することが出来ていない (Ortiz et al. 2012など).
ハウメア族のように小さくまとまった族の形成のためには,低速での天体衝突が必要だが (Leinhardt et al. 2010),このような衝突は難しいということが示されている (Levison et al. 2008, Campo-Bagatin et al. 2016).

ただし,ハウメアがかつて同程度のサイズの天体と連星系をなしており,後に太陽との 3 体作用などの過程で不安定になれば,このような衝突は起きうる.このような場合,発生する確率が非常に低い,太陽中心軌道を取る天体との低速衝突イベントは不要であり,ハウメア中心軌道の衝突体との比較的高い確率での低速衝突は起こしうる.しかしこの仮説が別の仮説よりももっともらしいかは,さらなる研究が必要である.

ヒイアカとナマカの 2 つの衛星は,ほぼ円軌道・同一平面上にある.これは,族を形成するのと同じ,ハウメアの自転を加速するような衝突イベントの際に形成されたという事を示唆される.ただし,族の形成に繋がる衝突と別の衝突イベントで衛星が形成されるというシナリオも可能である.

結果と解釈

ヒイアカの光度曲線の振幅は 19%であり,周期は 9.8 時間の二重ピーク構造であった.なおヒイアカの公転周期は 49.462 日である.

太陽中心軌道をとる衝突体の場合,ヒイアカそのものを破壊せずに,あるいは軌道を大きく変えずにヒイアカの自転周期を加速する様な衝突を起こすのは困難である.しかし衝突体がハウメア中心軌道を取る場合はそのような衝突は可能である.

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