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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1507.00195
Reale et al. (2015)
Using the transit of Venus to probe the upper planetary atmosphere
(金星の日面通過を用いた高層大気の探査)
ここでは、金星の日面通過(太陽面通過)の際に金星の半径を可視光、紫外線、軟X線を用いて観測した。
観測には、太陽観測衛星の「ひので (HINODE)」と、「Solar Dynamics Observatory (SDO)」を用いた。
結果、金星の可視光での半径は、固体部分の金星半径より 80 kmほど大きい。これは雲やヘイズの頂上部に対応している。
また、極端紫外線 (extreme UV, EUV)や軟X線 (soft X-ray)では、さらに 70 kmほど半径が大きくなる。
X線やEUVは、イオン・電子密度が最大になるあたりでよく吸収される、
EUVに励起される光電離反応によって、CO2+が生成される。これはOとの光化学反応によってO2+に変化する。
理論モデルによると、CO2+やその他のイオンは高度 150 - 180 kmで密度が最大になる。
金星の固体部分の半径は 6051.8 km (マゼランの観測による)であり、可視光で見た半径の 6131 km (固体表面から 79 kmの高さ)は、Venus Express/Visible and Infrared Thermal Imaging Spectrometer (VIRTIS)の観測による 74 kmとよく一致する。
また、UV領域では固体表面から117 - 127 km、EUV領域では 162 - 176 km程度、X線領域では 150 kmとなっている。
この観測は、太陽系内の天体をここまでの多波長で観測した初めての例である。
金星の日面通過という珍しい天文イベントが2012年6月にありました。
この日面通過、太陽グラスを使ったり、友人の望遠鏡で投影したりしてリアルタイムで見て楽しんでいました。
金星が太陽の手前を通過するというこの現象、起こっていることは系外惑星のトランジットと全く同じです。
そのため、金星が日面通過(transit)をしている間、太陽の減光を多波長で観測してやれば、多波長でのトランジット分光観測をしていることになります。
ここでは、可視光からX線までの広い波長域で金星のトランジット観測を行い、金星の高層大気の観測を行ったということです。
観測に用いられた2つ太陽観測衛星「ひので」と「SDO」のうち、ひのでは日本が打ち上げたものです。
ひのでは太陽観測で目覚しい成果を上げていますが、金星のトランジットという現象の観測にも役立ったということですね。
ちなみに金星の日面通過、次回発生するのは2117年12月とのことで、事実上のラストチャンスだったということです。
arXiv:1507.01254
Gauza et al. (2015)
Constraints on the substellar companions in wide orbits around the Barnard's Star from CanariCam mid-infrared imaging
(バーナード星まわりの遠距離に存在する恒星未満天体の存在に対する制約)
使用したのは10.4m口径のGran Telescopio CanariesにあるCanariCam。
1-10 arcsecの距離(バーナード星までの距離が1.83 pcなので、距離にすると 1.8 - 18 AU、軌道周期12年)にある伴星を捜索した。
8.7 μmのNバンドで観測し、0.24 arcsecの角度分解能があった。
観測の結果、追加の天体は発見されなかった。
観測限界からの制限より、15木星質量より大きく (有効温度 400 K以上に対応)、数億年の年齢の 3.6 - 18 AUに存在する伴星(わるいは惑星)の存在可能性を 3 σで排除した。
これは、これまでの観測よりも5木星質量ほど小さい制限となる。
また、北半球の星としては最も太陽に近い。
スペクトル型はM4.0Vの赤色矮星であり、太陽からの距離は 1.824 pc。固有運動は 10.37 arcsec/yrで、最も固有運動の大きい恒星である。
自転周期は遅く、130日。また、時期的な活動は弱い。
これらの特徴はその他の特徴より、太陽より古い恒星であると考えられている。
光度は 3.46 × 10-3太陽光度であり、有効温度は 3134 K。
低質量星の質量光度関係より、質量は 0.158太陽質量と推定されている。
Choi et al. (2013)の視線速度法による観測では、軌道周期が 10日未満かつ質量が 2地球質量以上と、軌道周期が 2年未満かつ質量が 10地球質量以上の惑星は存在しないという制限を与えた。ただしこれは、軌道がface-onの状態になっている場合を除く。
その他、直接撮像によって伴星(あるいは惑星)の存在に対して制限がかけられてきた(Dieterich et al. 2012, Oppenheimer et al. 2001, Schrowter et al. 2000)
バーナード星は太陽に非常に近い恒星であり、かなり昔から惑星の捜索が行われてきました。
文中にも書いてある通り、アストロメトリで検出したという報告はありましたが、のちに間違いだと判明しています。
このvan de Campやその弟子らはその他の近傍星でもアストロメトリでの惑星検出を主張しましたが、それらすべてが間違いだったことが分かっています。
ある恒星に惑星が存在しないと言い切ることは極めて困難です。
現在の観測精度や観測手法では検出できていないだけであるという可能性を排除しきれないからです。
そのため、なんらかの方法で惑星の捜索をし、発見できなかった場合は「惑星が存在しない」と断言するのではなく、「惑星は検出されなかった、観測限界からこういう条件の惑星は存在しない」というように、観測から制限を付けることになります。
今回の場合も、中間赤外線で直接撮像をし、それに有意なものが写らなかったため、「今回の観測で理論的に検出できる範囲のパラメータの惑星は存在し得ない」、と結論付けることになります。
arXiv:1507.00195
Reale et al. (2015)
Using the transit of Venus to probe the upper planetary atmosphere
(金星の日面通過を用いた高層大気の探査)
概要
惑星の高層大気では水素原子が高エネルギーの放射を吸収するため、高エネルギーの波長で見たときの惑星半径は、可視光で見たときの半径よりも大きくなる。ここでは、金星の日面通過(太陽面通過)の際に金星の半径を可視光、紫外線、軟X線を用いて観測した。
観測には、太陽観測衛星の「ひので (HINODE)」と、「Solar Dynamics Observatory (SDO)」を用いた。
結果、金星の可視光での半径は、固体部分の金星半径より 80 kmほど大きい。これは雲やヘイズの頂上部に対応している。
また、極端紫外線 (extreme UV, EUV)や軟X線 (soft X-ray)では、さらに 70 kmほど半径が大きくなる。
X線やEUVは、イオン・電子密度が最大になるあたりでよく吸収される、
EUVに励起される光電離反応によって、CO2+が生成される。これはOとの光化学反応によってO2+に変化する。
理論モデルによると、CO2+やその他のイオンは高度 150 - 180 kmで密度が最大になる。
金星の固体部分の半径は 6051.8 km (マゼランの観測による)であり、可視光で見た半径の 6131 km (固体表面から 79 kmの高さ)は、Venus Express/Visible and Infrared Thermal Imaging Spectrometer (VIRTIS)の観測による 74 kmとよく一致する。
また、UV領域では固体表面から117 - 127 km、EUV領域では 162 - 176 km程度、X線領域では 150 kmとなっている。
この観測は、太陽系内の天体をここまでの多波長で観測した初めての例である。
金星の日面通過という珍しい天文イベントが2012年6月にありました。
この日面通過、太陽グラスを使ったり、友人の望遠鏡で投影したりしてリアルタイムで見て楽しんでいました。
金星が太陽の手前を通過するというこの現象、起こっていることは系外惑星のトランジットと全く同じです。
そのため、金星が日面通過(transit)をしている間、太陽の減光を多波長で観測してやれば、多波長でのトランジット分光観測をしていることになります。
ここでは、可視光からX線までの広い波長域で金星のトランジット観測を行い、金星の高層大気の観測を行ったということです。
観測に用いられた2つ太陽観測衛星「ひので」と「SDO」のうち、ひのでは日本が打ち上げたものです。
ひのでは太陽観測で目覚しい成果を上げていますが、金星のトランジットという現象の観測にも役立ったということですね。
ちなみに金星の日面通過、次回発生するのは2117年12月とのことで、事実上のラストチャンスだったということです。
arXiv:1507.01254
Gauza et al. (2015)
Constraints on the substellar companions in wide orbits around the Barnard's Star from CanariCam mid-infrared imaging
(バーナード星まわりの遠距離に存在する恒星未満天体の存在に対する制約)
概要
バーナード星を中間赤外線で撮像観測した。使用したのは10.4m口径のGran Telescopio CanariesにあるCanariCam。
1-10 arcsecの距離(バーナード星までの距離が1.83 pcなので、距離にすると 1.8 - 18 AU、軌道周期12年)にある伴星を捜索した。
8.7 μmのNバンドで観測し、0.24 arcsecの角度分解能があった。
観測の結果、追加の天体は発見されなかった。
観測限界からの制限より、15木星質量より大きく (有効温度 400 K以上に対応)、数億年の年齢の 3.6 - 18 AUに存在する伴星(わるいは惑星)の存在可能性を 3 σで排除した。
これは、これまでの観測よりも5木星質量ほど小さい制限となる。
バーナード星について
バーナード星 (GJ 699, V2500 Oph)は、星としては4番目に太陽に近い。星系としては、3重連星のアルファ・ケンタウリ系に次いで2番目に太陽に近い。また、北半球の星としては最も太陽に近い。
スペクトル型はM4.0Vの赤色矮星であり、太陽からの距離は 1.824 pc。固有運動は 10.37 arcsec/yrで、最も固有運動の大きい恒星である。
自転周期は遅く、130日。また、時期的な活動は弱い。
これらの特徴はその他の特徴より、太陽より古い恒星であると考えられている。
光度は 3.46 × 10-3太陽光度であり、有効温度は 3134 K。
低質量星の質量光度関係より、質量は 0.158太陽質量と推定されている。
バーナード星まわりの惑星探査
かつて、1960年代後半には、van de Campがアストロメトリ法を用いて、木星質量の惑星を2つ検出したと報告した(van de Camp 1969)。しかし2つとものちに否定されている。Choi et al. (2013)の視線速度法による観測では、軌道周期が 10日未満かつ質量が 2地球質量以上と、軌道周期が 2年未満かつ質量が 10地球質量以上の惑星は存在しないという制限を与えた。ただしこれは、軌道がface-onの状態になっている場合を除く。
その他、直接撮像によって伴星(あるいは惑星)の存在に対して制限がかけられてきた(Dieterich et al. 2012, Oppenheimer et al. 2001, Schrowter et al. 2000)
バーナード星は太陽に非常に近い恒星であり、かなり昔から惑星の捜索が行われてきました。
文中にも書いてある通り、アストロメトリで検出したという報告はありましたが、のちに間違いだと判明しています。
このvan de Campやその弟子らはその他の近傍星でもアストロメトリでの惑星検出を主張しましたが、それらすべてが間違いだったことが分かっています。
ある恒星に惑星が存在しないと言い切ることは極めて困難です。
現在の観測精度や観測手法では検出できていないだけであるという可能性を排除しきれないからです。
そのため、なんらかの方法で惑星の捜索をし、発見できなかった場合は「惑星が存在しない」と断言するのではなく、「惑星は検出されなかった、観測限界からこういう条件の惑星は存在しない」というように、観測から制限を付けることになります。
今回の場合も、中間赤外線で直接撮像をし、それに有意なものが写らなかったため、「今回の観測で理論的に検出できる範囲のパラメータの惑星は存在し得ない」、と結論付けることになります。
PR
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