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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1612.05945
Wilson Cauley et al. (2016)
A search for Hα absorption around KELT-3 b and GJ 436 b
(KELT-3b と GJ 436b まわりでの Hα 吸収の探査)
散逸する惑星のガスの形状によって,非対称的なトランジット光度曲線の形状を生み出すことがある.通常のトランジットの前と後の両方に,特定の原子による吸収が生成されることでこの現象が発生しうる.
また,散逸する大気の速度と吸収の強さの測定は,大気散逸機構への制限を与え,さらにおそらくは,惑星と中心星の相互作用のヒントとなるかもしれない.
ここでは,高温の惑星 KELT-3b と GJ 436b の惑星周りの環境における,Hα 線の吸収を調べた.
その結果,どちらの惑星でも吸収の兆候は得られなかった.
観測結果から,双方の惑星の周囲のおける,励起された水素原子大気の密度と,その動径方向の広がりについての上限を与えた.
GJ 436b での Hα の吸収の非検出は,このにおける Ly α 線でのの強い吸収の検出とは対照的な結果である.この結果は,大きな中性水素の雲はほとんど基底状態にあるという事を示唆する.
これまでに系外惑星で確認されている Hα 線の吸収は,活発な恒星周りの惑星 HD 189733b においてのみ報告されている.各惑星の中心星 KELT-3 と GJ 436 は,どちらも HD 189733 より不活発である.そのため,活動的な恒星からの EUV 光子にさらされている系外惑星の大気の方が,Hα 線での吸収の検出には適しているということを示唆する.
これらの惑星はしばしば膨張した半径を持っており (Laughlin et al. 2011など),また詳細な自転や大気力学が HD 189733b においては観測されている (Wyttenbach et al. 2015, Louden & Whearley 2015など).また同様の観測は HD 209458b でも行われている (Snellen et al. 2010).
その他に観測されている興味深い力学的過程は,惑星からの蒸発的な質量放出であろう.この過程は最初にホットジュピター HD 209458b で観測された (Vidal-Madjar 2003).水素の UV の Lyα 線の観測から,中性水素の大気が,惑星のロッシュ限界を超えて広がっていることが示されている.
この惑星のフォローアップ観測では,質量放出は大きく変動を起こし,観測するタイミングごとに大きく変わることが示されている (Lecavelier des Etangs et al. 2012).
大気の散逸は,他の高温惑星を持つ系,HD 189733b, 55 Cnc b と GJ 436b でも検出されている (Lecavelier des Etangs et al. 2010など).
Ehrenreich et al. (2015) による GJ 436b まわりの最近の質量放出の検出は,この広がった大気と散逸する大気の観測は,通常の惑星のトランジット (広い波長域の白色光トランジット) の前と後の両方で強い吸収として検出される可能性を指摘した.GJ 436b に加え,通常のトランジットより前での吸収の特徴は,WASP-12b (Fossati et al. 2010),HD 189733b (Ben-Jaffel & Ballester 2013など) でも観測されている.
高温の惑星が持つ広がった大気による,トランジット前とトランジット中の吸収の特徴は一般的なものと考えられるが,観測が難しく広帯域の測光観測では特徴が現れない.言い換えれば,強い原子のスペクトル線でのみこの吸収が観測出来る.
この観測には,水素の線スペクトルの検出が適している.特に Lyα である.
HD 189733b のトランジット前とトランジット中における Hα 線の吸収の検出は,大きく広がった中性の大気を,高分散の可視光分光観測で検出できる可能性を示唆した (Jensen et al. 2012など).また,バルマージャンプでのフラックスの減少を介して検出された励起された水素の存在は,Ballester et al. (2007) によって HD 209458b で初めて報告された.
HD 189733b での励起された水素の測定では,物質の散逸を示す大きな青方偏移した速度は検出されなかったが,観測されたトランジット深さからは,透過スペクトルは気圧が 10^-6 - 10^-9 bar の所を探査していることを示唆された.これは惑星の熱圏に相当する領域である (Christie et al. 2013).
ただし注意点として,Barnes et al. (2016) によると,Hα 線のシグナルは惑星起源であるかには疑問が投げかけられている.なぜなら,透過スペクトルにおける速度の中心が恒星の静止座標と相関があるように思えるからである.そのため HD 189733b のトランジット中の Hα 測定については議論がある.
arXiv:1612.05945
Wilson Cauley et al. (2016)
A search for Hα absorption around KELT-3 b and GJ 436 b
(KELT-3b と GJ 436b まわりでの Hα 吸収の探査)
概要
高温の惑星の周りに広がった大気の観測は,散逸する惑星物質の力学に関連した興味深い結果を与える.散逸する惑星のガスの形状によって,非対称的なトランジット光度曲線の形状を生み出すことがある.通常のトランジットの前と後の両方に,特定の原子による吸収が生成されることでこの現象が発生しうる.
また,散逸する大気の速度と吸収の強さの測定は,大気散逸機構への制限を与え,さらにおそらくは,惑星と中心星の相互作用のヒントとなるかもしれない.
ここでは,高温の惑星 KELT-3b と GJ 436b の惑星周りの環境における,Hα 線の吸収を調べた.
その結果,どちらの惑星でも吸収の兆候は得られなかった.
観測結果から,双方の惑星の周囲のおける,励起された水素原子大気の密度と,その動径方向の広がりについての上限を与えた.
GJ 436b での Hα の吸収の非検出は,このにおける Ly α 線でのの強い吸収の検出とは対照的な結果である.この結果は,大きな中性水素の雲はほとんど基底状態にあるという事を示唆する.
これまでに系外惑星で確認されている Hα 線の吸収は,活発な恒星周りの惑星 HD 189733b においてのみ報告されている.各惑星の中心星 KELT-3 と GJ 436 は,どちらも HD 189733 より不活発である.そのため,活動的な恒星からの EUV 光子にさらされている系外惑星の大気の方が,Hα 線での吸収の検出には適しているということを示唆する.
研究背景
高温の惑星 (軌道周期が 5 日程度より短いもの) は中心星から多くの量のフラックスを受けるため,長周期の惑星では発生しないような極端な宇宙物理学的プロセスについての識見を与えてくれる.これらの惑星はしばしば膨張した半径を持っており (Laughlin et al. 2011など),また詳細な自転や大気力学が HD 189733b においては観測されている (Wyttenbach et al. 2015, Louden & Whearley 2015など).また同様の観測は HD 209458b でも行われている (Snellen et al. 2010).
その他に観測されている興味深い力学的過程は,惑星からの蒸発的な質量放出であろう.この過程は最初にホットジュピター HD 209458b で観測された (Vidal-Madjar 2003).水素の UV の Lyα 線の観測から,中性水素の大気が,惑星のロッシュ限界を超えて広がっていることが示されている.
この惑星のフォローアップ観測では,質量放出は大きく変動を起こし,観測するタイミングごとに大きく変わることが示されている (Lecavelier des Etangs et al. 2012).
大気の散逸は,他の高温惑星を持つ系,HD 189733b, 55 Cnc b と GJ 436b でも検出されている (Lecavelier des Etangs et al. 2010など).
Ehrenreich et al. (2015) による GJ 436b まわりの最近の質量放出の検出は,この広がった大気と散逸する大気の観測は,通常の惑星のトランジット (広い波長域の白色光トランジット) の前と後の両方で強い吸収として検出される可能性を指摘した.GJ 436b に加え,通常のトランジットより前での吸収の特徴は,WASP-12b (Fossati et al. 2010),HD 189733b (Ben-Jaffel & Ballester 2013など) でも観測されている.
高温の惑星が持つ広がった大気による,トランジット前とトランジット中の吸収の特徴は一般的なものと考えられるが,観測が難しく広帯域の測光観測では特徴が現れない.言い換えれば,強い原子のスペクトル線でのみこの吸収が観測出来る.
この観測には,水素の線スペクトルの検出が適している.特に Lyα である.
HD 189733b のトランジット前とトランジット中における Hα 線の吸収の検出は,大きく広がった中性の大気を,高分散の可視光分光観測で検出できる可能性を示唆した (Jensen et al. 2012など).また,バルマージャンプでのフラックスの減少を介して検出された励起された水素の存在は,Ballester et al. (2007) によって HD 209458b で初めて報告された.
HD 189733b での励起された水素の測定では,物質の散逸を示す大きな青方偏移した速度は検出されなかったが,観測されたトランジット深さからは,透過スペクトルは気圧が 10^-6 - 10^-9 bar の所を探査していることを示唆された.これは惑星の熱圏に相当する領域である (Christie et al. 2013).
ただし注意点として,Barnes et al. (2016) によると,Hα 線のシグナルは惑星起源であるかには疑問が投げかけられている.なぜなら,透過スペクトルにおける速度の中心が恒星の静止座標と相関があるように思えるからである.そのため HD 189733b のトランジット中の Hα 測定については議論がある.
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