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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1612.08962
Parke Loyd et al. (2016)
Ultraviolet C II and Si III Transit Spectroscopy and Modeling of the Evaporating Atmosphere of GJ436b
(GJ 436b の紫外線 C II と Si III トランジット分光観測と蒸発する大気のモデリング)

概要

ホットネプチューン GJ 436b の大気から蒸発している水素ガスは,トランジットの最中に 50% を超える恒星からの Lyα 線の放射を吸収する.惑星大気の組成とエネルギー律速の大気散逸率を考慮すると,この水素の流出は C や O といった重い元素も一緒に引きずっていくことが期待される.

ここでは,GJ 436b から散逸する大気中の C と Si について調査を行った.ハッブル宇宙望遠鏡で COS G 130M を用いた遠紫外線でのトランジットの観測を行った.

その結果,C II 1334 Å,1335 Å と, Si III 1206 Å 線を -100 〜 100 km s-1 で積分した観測データでは,トランジット時の吸収が検出されなかった.
また観測結果から,不透明な円盤のトランジットにおいて,C II で 14%,Si III で 60% の上限をかけ,またHI Lyα と同じ非常に非対称的な広がった大気のトランジットに対して,C II で 22%,Si III で 49% の上限を与えた.

ここで行った球対称の光化学-流体力学的モデルのシミュレーションによると,C+ は流出する大気の中に存在する.このシミュレーションは,観測したバンドパス内で積分した C II 線のトランジット深さが ~2%になることを予言し,これはデータと整合的である.
スペクトル線の中心では,C II トランジットの深さは最大で 19%になると予測する.

ここで用いたモデルからは,この惑星からの中性水素の散逸率は 1.6 × 109 g s-1,全粒子では 3.1 × 109 g s-1 と予測される.この値は,高層大気が水素とヘリウムで構成されているとした場合のものである.

研究背景

ホットネプチューン GJ 436b は,散逸する大気による吸収により,Lyα 線の大きなトランジット吸収 (56.3%) が観測されている (Kulow et al. 2014, Ehrenreich et al. 2015など).
GJ 436b は HI で大気散逸が観測されている 3 つの惑星のうち,唯一の海王星質量の惑星である.その他の惑星は HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2003) と HD 189733b (Lecavelier des Etangs et al. 2010) であり,どちらも木星質量に近い.また,55 Cnc b ではその兆候が検出されている (Ehrenreich et al. 2012).

上記の木星サイズの 2 惑星では,水素よりも重い原子やイオンも散逸するガスに引きずられて流出している.HD 209458b から流出する大気中には,O I, C II, Si III (Vidal-Madjar et al. 2004など),HD 189733b では O I (Ben-Jaffel & Ballester 2013) が検出されている.

ここでは,C II, Si III, Si IV, N V 線それぞれにおけるトランジット吸収を探査した.
ハッブル宇宙望遠鏡の Cosmic Origins Spectrograph (COS) を用いたトランジット観測を行い.観測結果を解析しトランジット深さに上限を与えた.また,X 線天文衛星チャンドラの X 線の同時期のデータから,惑星トランジット中の恒星活動のデータを取得した.

また,改良された 1 次元の流体力学-光化学モデルを用いて GJ 436b の熱圏の計算を行い,H, He, C, O の散逸率を求め,それを観測から推定されたトランジット深さの上限と比較した.

議論と結論

今回の観測では GJ 436b の C II と Si III のトランジットは検出されなかった.

Si III トランジットの非検出は,おそらく Si が上空まで輸送されるのが阻害されていることが原因だろうと考えられる.これは凝結による輸送の阻害であり,具体的には forsterite (Mg2SiO4,苦土カンラン石) と enstatite (MgSiO3,頑火輝石) の雲になっている可能性がある.
これらの種は,Line et al. (2014) によって求められた GJ 436b 大気の温度-圧力構造と交差する凝結線を持つ (Fortney 2005).また,SI を含有する分子は,水素に乗って高層大気に運ばれるには重すぎると推定される.同様の議論より,他のホットジュピターでは検出されている Mg も,GJ 436b の高層大気では存在しないだろうと予測される.

他のホットジュピターと異なり,GJ 436b での C II トランジット深さの上限値は,H I Lyα のトランジット深さよりずっと小さかった.これを検証するために GJ 436b の熱圏のシミュレーションを行った.

その結果,現在の観測のデータセットでは検出できない程度の浅いトランジットを示すことが分かった.
シミュレーションは,50%を超えるトランジットを起こすために十分な H I の密度を予言した.また散逸率は 3.1 × 109 g s-1 (全粒子合計) であり,これは中心星からのエネルギーが質量放出に変換される効率が 11% 程度である事を示唆する.

ここで推定した大気散逸率は,Bourrier et al. (2016) の予測である 2.5 ± 1 × 108 g s-1 を超える.また,予測される密度と流出の速度は両者で大きく異なる.将来的な研究により,モンテカルロ前進モデリング (“トップダウン型”) のアプローチである Bourrier et al. (2016) と,ここでの光化学-流体力学的 (“ボトムアップ型”) のアプローチの違いを解く必要がある.

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