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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1701.05211
Nasiroglu et al. (2017)
Is there a circumbinary planet around NSVS 14256825?
(NSVS 14256825 のまわりに周連星惑星は存在するか?)
ここで,NSVS 1425682583 の食の時刻の観測を新たに行った.この観測により,過去に報告されていた観測結果の観測の空白期間を埋めるだけではなく,これまでに得られている O-C ダイアグラムの期間を 3 年延ばした.過去の観測データと今回の観測で得られた新しいデータの合計は 17 年間分に渡る.これらのデータを合わせて再解析した.
その結果得られた,O-C ダイアグラムの変動に対して,2 つの考えられるシナリオについて考察した.
1 つ目は,不可視の天体が連星周りを離れた軌道で公転していると考えるものである.2 つ目は,恒星の磁気的サイクルによるもので,これは Applegate effect や Lanza–Rodono ́ effect と呼ばれる効果である.
解析の結果,後者のメカニズムは O-C ダイアグラムの変動の説明にはならないことが判明した.これは,伴星の M 型星のエネルギーでは観測された変動を説明するには不十分であることが原因である.
前者のメカニズム,つまり 3 体目の天体が存在するという枠組みの中で,その仮説上の天体の軌道パラメータと質量に対して観測結果から制限を与えた.
ベストフィットモデルでは,最小質量が 15 木星質量の褐色矮星の存在によって O-C ダイアグラムの変動が説明できる.軌道離心率はやや大きめの e ~ 0.175 で,軌道周期は ~ 10 年である.
今回のの解析では,過去に提案されていた 2 惑星モデルは排除された.
Wilson et al. (2007) では,この星は食連星であり,V = 13.22-14.03 の変動を持っていると報告された.また,Wilson et al. (2007) は変動の光度曲線と関連する物理パラメータについても初めて報告し,この連星は 0.110374230 日周期であるとした.
この天体はおとめ座HW星 (HW Vir) の仲間であり,post-common-envelope binary (PCEB) である.
連星間の距離は 0.80 太陽半径である.これは測光観測及び分光観測から得られた結果である (Almeida et al. 2012).
食の時刻の測定は Wils et al. (2007) などによって行われている.Beuermann et al. (2012) では,食の周期の変動の存在と,その原因として ~ 12 木星質量,20 年周期周連星惑星の存在を示唆した.Almeida et al. (2013) ではさらに観測データを増やし,周期が 3.5 年と 6.7 年の,それぞれ ~ 3 木星質量と ~ 8.0 木星質量の 2 つの周連星惑星の存在を示唆した.なおこの周連星の 2 惑星の配置の軌道安定性に関しては,1000 年に満たないタイムスケールで軌道が不安定になると指摘されている (Wyttenmyer et al. 2013).
arXiv:1701.05211
Nasiroglu et al. (2017)
Is there a circumbinary planet around NSVS 14256825?
(NSVS 14256825 のまわりに周連星惑星は存在するか?)
概要
NSVS 14256825 の食のタイミングの O-C residual の振る舞いから,この連星系は 1 つか 2 つの木星型の周連星惑星を持つと考えられてきた.この連星系は,sdB 星 (subdwarf B star, B型準矮星) と M 型星の連星 (食連星) である.ここで,NSVS 1425682583 の食の時刻の観測を新たに行った.この観測により,過去に報告されていた観測結果の観測の空白期間を埋めるだけではなく,これまでに得られている O-C ダイアグラムの期間を 3 年延ばした.過去の観測データと今回の観測で得られた新しいデータの合計は 17 年間分に渡る.これらのデータを合わせて再解析した.
その結果得られた,O-C ダイアグラムの変動に対して,2 つの考えられるシナリオについて考察した.
1 つ目は,不可視の天体が連星周りを離れた軌道で公転していると考えるものである.2 つ目は,恒星の磁気的サイクルによるもので,これは Applegate effect や Lanza–Rodono ́ effect と呼ばれる効果である.
解析の結果,後者のメカニズムは O-C ダイアグラムの変動の説明にはならないことが判明した.これは,伴星の M 型星のエネルギーでは観測された変動を説明するには不十分であることが原因である.
前者のメカニズム,つまり 3 体目の天体が存在するという枠組みの中で,その仮説上の天体の軌道パラメータと質量に対して観測結果から制限を与えた.
ベストフィットモデルでは,最小質量が 15 木星質量の褐色矮星の存在によって O-C ダイアグラムの変動が説明できる.軌道離心率はやや大きめの e ~ 0.175 で,軌道周期は ~ 10 年である.
今回のの解析では,過去に提案されていた 2 惑星モデルは排除された.
NSVS 14256825 について
この天体は,Northern Sky Variability Survey (NSVS) によって発見された (Woz ́niak et al. 2004).Wilson et al. (2007) では,この星は食連星であり,V = 13.22-14.03 の変動を持っていると報告された.また,Wilson et al. (2007) は変動の光度曲線と関連する物理パラメータについても初めて報告し,この連星は 0.110374230 日周期であるとした.
この天体はおとめ座HW星 (HW Vir) の仲間であり,post-common-envelope binary (PCEB) である.
連星間の距離は 0.80 太陽半径である.これは測光観測及び分光観測から得られた結果である (Almeida et al. 2012).
食の時刻の測定は Wils et al. (2007) などによって行われている.Beuermann et al. (2012) では,食の周期の変動の存在と,その原因として ~ 12 木星質量,20 年周期周連星惑星の存在を示唆した.Almeida et al. (2013) ではさらに観測データを増やし,周期が 3.5 年と 6.7 年の,それぞれ ~ 3 木星質量と ~ 8.0 木星質量の 2 つの周連星惑星の存在を示唆した.なおこの周連星の 2 惑星の配置の軌道安定性に関しては,1000 年に満たないタイムスケールで軌道が不安定になると指摘されている (Wyttenmyer et al. 2013).
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近接連星が膨張して共通外層 (common envelope, CE) を持つようになったものを,共通外層連星 (common envelope binary) と呼ぶ.
その後膨張した恒星がコンパクト星に進化して共通外層を持つ時期が終わったものを,post common envelope binary (PCEB) と呼ぶ.定まった日本語訳があるかは不明.