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arXiv:1701.07654
Bashi et al. (2017)
Two Empirical Regimes of the Planetary Mass-Radius Relation
(惑星の質量-半径関係の 2 つの経験的レジーム)

概要

これまでに多数が発見されている系外惑星の分類を行うことは,銀河系内における多数の惑星のタイプの統計的データを理解することに関して重要なだけではなく,惑星形成の理解にも重要である.

ここでは惑星の質量-半径関係 (mass-radius relation) おける 2 つのレジームの性質について研究した.

発見されている惑星のデータの解析から,2 つの “small” と “large” 惑星の間の遷移に関しては,質量が 124 ± 7 地球質量,半径 12.1 ± 0.5 地球半径で分かれているということが示唆された
さらに,質量-半径関係は小さい惑星に対しては R ∝ M0.55±0.02,大きい惑星に対しては M0.01±0.02 という依存性があることが分かった.

2 つのレジームの境界がある場所は,惑星内部での水素の電子縮退と関係している,これは言い換えれば惑星の全体の組成と関係しているということを示唆する.

具体的に言うと,その境界の質量は,ほとんどが水素とヘリウムから出来ている惑星の特徴的な最小質量になるため,その質量-半径関係はこれらの物質の状態方程式で決定される.

また,観測からの質量-半径関係を,popilation synthesis 計算と比較し,2 つのサンプル間は良い定性的な一致を見ることを示した.

研究背景

惑星の質量-半径関係を通じて,惑星組成に関する重要な情報を得ることが出来る.
伝統的には,惑星は 2 つの主要なグループに分類されてきた.1 つ目はガスが主体の重い惑星,2 つ目は小さい地球型惑星である (Weidenschilling 77など).この分類は太陽系に端を発するものであり,太陽系の惑星は重い惑星は木星のように主に揮発性物質で構成され,地球型惑星は小さく難揮発性物質で構成されている.

しかし系外惑星の質量と半径の多様性から,この分類はいくらか恣意的であり,また単純化しすぎていると考えられる (Baraffe et al. 2014),初めに発見された系外惑星たちは比較的大きな質量と半径を持っていたが,ここ数年は観測技術の発達や宇宙空間からの観測もあり,小さい系外惑星の発見数も飛躍的に増加している.

ほとんどの惑星は視線速度法かトランジットで発見されているため,”小さい惑星” を定義する時に質量で判断するか半径で判断するかの違いがある.
質量の観点では,質量が ~ 30 地球質量より小さいものを小さい惑星と定義する慣習がある (Mayor et al. 2011など).一方半径の観点では,しばしば半径が 4 地球半径より小さいものを小さい惑星と分類する (Marcy et al. 2014など).これらの分類は,系外惑星の質量関数の振る舞いをある程度基準にしている.

過去の質量-半径関係の研究においては,この遷移は ‘小さい’ 惑星 (海王星的) と ‘大きい’ 惑星 (木星的) の間にあると示唆されてきた.
Weiss et al. (2013) は,質量-半径関係と質量-密度関係に基づき,2 つのレジーム間の遷移は質量で言うと ~ 150 地球質量に位置すると指摘した.ここで,質量-半径関係の傾きは,150 地球質量より小さい惑星に対しては R ∝ M0.54,150 地球質量以上の惑星に対しては M-0.039 と推定された.

Hatzes & Rauer (2015) は,質量-密度関係のスロープの変化について調べた,先述の研究と同様の傾きの境界を用い,遷移する質量を ~ 0.3 木星質量 = 95 地球質量と推定した.

最近では,Chen & Kipping (2017) により,MCMC を用いた確率的な質量-半径関係に基づく詳細な予測モデルが与えられた.このクラス分けによると,小さい惑星と大きい惑星の遷移は 0.41 ± 0.07 木星質量 = 130 ± 22 地球質量にあり,分布のスロープは小さい惑星に対して R ∝ M0.59 ,大きい惑星に対しては M-0.04 となった.

面白いことに,過去のこれらの研究では 2 つのレジーム間の遷移質量は完全には一致していないが,伝統的なカットオフ質量である 20 - 30 地球質量よりは明確に大きな値を示すという点で一致している.このことは,系外惑星の質量関数の ~ 30 地球質量に見られる存在頻度の変化,言い換えれば惑星の頻度は,惑星の組成と関係していると考えられる質量-半径関係とは同じ振る舞いを示さないということを示唆する.

サンプル

この解析では,質量と半径の両方が測定されている系外惑星のみをサンプルとして利用する.

2016 年 3 月の時点でカタログに掲載されている 274 個の系外惑星を使用した.このサンプル中で最も低質量な惑星は,ケプラー138b で 0.0667 ± 0.0604 地球質量であり,地球より小さい惑星である.最も質量が大きいものは CoRoT-3b で 6945 ± 315 地球質量 (21.85 ± 0.99 木星質量) であり,これは褐色矮星である.

なお,質量-半径関係から理論的に質量が推定されている惑星は除外した.

サンプル中の全ての惑星はトランジット惑星であり,惑星質量は視線速度法かトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) で測定されているものである.
全サンプルのうち,238 個の惑星がが視線速度法でフォローアップ観測が行われて質量が測定されているもの,9 個が最初に視線速度法で発見され,後にトランジットが検出されたものである.また 27 惑星が TTV で質量が推定されているものである.
これらのデータ点をフィッティングして解析を行った.

結果

小さい惑星と大きい惑星の遷移は,質量が 124 ± 7 地球質量,半径 12.1 ± 0.5 地球半径で起きることが示唆された.
半径の質量依存性は,小さい惑星に対しては R ∝ M0.55±0.02,大きい惑星に対しては R ∝ M0.01±0.02 となった.


この分析に基づくと,土星は “小さい惑星” に分類されることになる (Chen & Kipping 2017, Weiss et al. 2013など).
内部構造モデルに基づくと,土星の重元素の割合は ~ 20 - 40%と推定される (Guillot 2005など).従って土星の質量は遷移点からそう遠くない場所にあり,遷移質量である ~ 120 地球質量はあくまで統計的な量だと理解されるべきものである.

図を見ると分かるが,~ 120 地球質量の分断点付近は,半径が質量の増加に伴って増大するレジームの高質量側への延長線上とも,半径がほぼ一定である大きな質量のレジームの低質量側への延長線上のどちらとも取れる.この遷移レジームは,80 - 120 地球質量程度の領域に広がっている.従って,データによると,実際の遷移はこの質量領域の上端で起きると考えられる.

この見た目の遷移に関してその他に考慮すべき点は,この質量-半径依存性は恒星の輻射によっても影響を受けるという点である.土星はこの統計的解析に用いているサンプルの系外惑星と比べてずっと低い輻射を受けている.


ここで得られた結果は過去の研究と良い一致を見せる.遷移が土星の質量よりも大きい領域で起きると言う事実は,大きい惑星の質量-半径関係の変化は,惑星の主要な組成に起因するというアイデアを支持する.主要な組成は,この場合水素とヘリウムの混合物である.

120 地球質量程度より重い惑星のデータは,惑星半径はこれらの軽い元素の状態方程式によって決まるという事を示唆している (Zapolsky & Salpeter 1969, Fortney et al. 2007など).水素とヘリウムが主体であることと大きな質量による圧縮は,水素とヘリウムで主に構成されている巨大ガス惑星の半径の質量に対する依存性が弱いことを自然に説明する.より低質量の惑星の場合はあまり圧縮されず,そのため半径は質量に伴って増加する.
低質量惑星が比較的大きく分散しているのは,この質量領域では惑星は多様な組成を持つからだろうと考えられる.

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