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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1702.00731
Gerdes et al. (2017)
Discovery and Physical Characterization of a Large Scattered Disk Object at 92 AU
(92 AU の距離の大きな散乱円盤天体の発見と物理的特徴付け)
この天体は,力学的に分離した (dynamically detached,海王星の強い影響下にない) 太陽系外縁天体 (trans-Neptunian object) であり,92 AU の位置で発見された.この天体は,今のところ 2 番目に遠い位置にいる太陽系外縁天体であり,この天体よりも遠方にいるのは準惑星のエリスのみである.(※軌道長半径での比較ではなく,現在の距離での比較).
この天体は 2014 年から 2016 年の間に行われた Dark Energy Survey で得られたデータの中に,r バンド中に 23.0 等級の明るさの天体として発見された.軌道周期は 1140 年で,軌道長半径は 109 AU,軌道傾斜角は 26.8° である.また,2142 年には 38 AU の位置にある近日点に到達する.
この天体の軌道の積分からは,10 億年のタイムスケールでこの軌道は力学的に安定であり,また海王星との相互作用はごく小さいことが判明した.
さらに,アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array, ALMA) でこの天体のフォローアップ観測を行った.3 時間の観測から,この天体の熱的放射の Rayleigh-Jeans tail の観測を行った.
その結果,この天体からのシグナルは 7 σ の確度で検出され,天体表面が一様で,かつ球体であることを仮定すると,V バンドでのアルベドが 18.0%で,直径が 541 km であると推定される.
これらの力学的に乱された分布を持つ天体は,古典的カイパーベルト天体の分布を生み出したメカニズムとは大きく異なったメカニズムによって生み出されたはずである.これは,サイズ (Fraser et al. 2014),色 (Tegler & Romanishin 2000),アルベド (Brucker et al. 2009),連星になっている割合 (Noll et al. 2008) が大きく異なることなどによって示唆されている.
散乱円盤の天体は Gladman et al. (2008) によって大きく 2 つに分割されている.
海王星によって散乱された天体 (これは 10 Myr のタイムスケールでの軌道長半径の大きな変動によって示唆される),そして分離天体 (detached objects,散乱されておらず,軌道共鳴に入っていない,軌道離心率が 0.24 より大きい天体) である.
これらの天体のうち最も長い軌道周期を持つもののいくつかは,近点引数と昇交点黄経において統計的に偶然では有り得ない集まり方をしている.このことから,Planet 9 と呼ばれる遠方のスーパーアース天体が存在するという仮説が提案されている (Trujillo & Sheppard 2014, Batygin & Brown 2016).
DES は,Dark Energy Camera (DECam, Flaugher et al. 2015) を用いて行われていた,南天の 5000 平方度の可視光でのサーベイ観測である.チリの Cerro Tololo Inter-American Observatory の 4 m Blanco telescope を使用して行われていた.
DES の主目的は,ダークエネルギーの状態方程式に制限をかけるというものである.このカメラは精密宇宙論のための強力な道具であるが,同時に太陽系の遠方天体を同定するのにも適している.例えば,このプロジェクトの一環で,2 つの海王星のトロヤ群小惑星が発見され (Gerdes et al. 2016),また ”extreme TNO” である 2013 RF98 も発見されている (Abbott et al. 2016).
軌道離心率:0.651
軌道傾斜角:26.78509°
近日点距離:37.97 AU
近日点通過時刻:2142年1月2日 ± 1654 日
遠日点距離:179.8 AU
軌道周期:1136 年
発見時の太陽からの距離:92.5 AU
r バンドでの実視等級:22.98
V バンドでの実視等級:23.38
絶対等級:H_V = 3.5
アルベド:18%
直径:541 km
この天体を非公式に “DeeDee” と呼んでいる.これは “distant dwarf” が由来である.
arXiv:1702.00731
Gerdes et al. (2017)
Discovery and Physical Characterization of a Large Scattered Disk Object at 92 AU
(92 AU の距離の大きな散乱円盤天体の発見と物理的特徴付け)
概要
準惑星の可能性がある天体 2014 UZ224 (愛称 “DeeDee") の観測と,その物理的な特徴付けについて報告する.この天体は,力学的に分離した (dynamically detached,海王星の強い影響下にない) 太陽系外縁天体 (trans-Neptunian object) であり,92 AU の位置で発見された.この天体は,今のところ 2 番目に遠い位置にいる太陽系外縁天体であり,この天体よりも遠方にいるのは準惑星のエリスのみである.(※軌道長半径での比較ではなく,現在の距離での比較).
この天体は 2014 年から 2016 年の間に行われた Dark Energy Survey で得られたデータの中に,r バンド中に 23.0 等級の明るさの天体として発見された.軌道周期は 1140 年で,軌道長半径は 109 AU,軌道傾斜角は 26.8° である.また,2142 年には 38 AU の位置にある近日点に到達する.
この天体の軌道の積分からは,10 億年のタイムスケールでこの軌道は力学的に安定であり,また海王星との相互作用はごく小さいことが判明した.
さらに,アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array, ALMA) でこの天体のフォローアップ観測を行った.3 時間の観測から,この天体の熱的放射の Rayleigh-Jeans tail の観測を行った.
その結果,この天体からのシグナルは 7 σ の確度で検出され,天体表面が一様で,かつ球体であることを仮定すると,V バンドでのアルベドが 18.0%で,直径が 541 km であると推定される.
散乱円盤天体の特徴と観測
太陽系外縁天体中の散乱円盤 (scattered disk) と 内オールトの雲 (inner Oort cloud) は,古典的なカイパーベルトを超えて数百 AU の距離まで分布している.これらの力学的に乱された分布を持つ天体は,古典的カイパーベルト天体の分布を生み出したメカニズムとは大きく異なったメカニズムによって生み出されたはずである.これは,サイズ (Fraser et al. 2014),色 (Tegler & Romanishin 2000),アルベド (Brucker et al. 2009),連星になっている割合 (Noll et al. 2008) が大きく異なることなどによって示唆されている.
散乱円盤の天体は Gladman et al. (2008) によって大きく 2 つに分割されている.
海王星によって散乱された天体 (これは 10 Myr のタイムスケールでの軌道長半径の大きな変動によって示唆される),そして分離天体 (detached objects,散乱されておらず,軌道共鳴に入っていない,軌道離心率が 0.24 より大きい天体) である.
これらの天体のうち最も長い軌道周期を持つもののいくつかは,近点引数と昇交点黄経において統計的に偶然では有り得ない集まり方をしている.このことから,Planet 9 と呼ばれる遠方のスーパーアース天体が存在するという仮説が提案されている (Trujillo & Sheppard 2014, Batygin & Brown 2016).
DES は,Dark Energy Camera (DECam, Flaugher et al. 2015) を用いて行われていた,南天の 5000 平方度の可視光でのサーベイ観測である.チリの Cerro Tololo Inter-American Observatory の 4 m Blanco telescope を使用して行われていた.
DES の主目的は,ダークエネルギーの状態方程式に制限をかけるというものである.このカメラは精密宇宙論のための強力な道具であるが,同時に太陽系の遠方天体を同定するのにも適している.例えば,このプロジェクトの一環で,2 つの海王星のトロヤ群小惑星が発見され (Gerdes et al. 2016),また ”extreme TNO” である 2013 RF98 も発見されている (Abbott et al. 2016).
パラメータ
軌道長半径:108.90 AU軌道離心率:0.651
軌道傾斜角:26.78509°
近日点距離:37.97 AU
近日点通過時刻:2142年1月2日 ± 1654 日
遠日点距離:179.8 AU
軌道周期:1136 年
発見時の太陽からの距離:92.5 AU
r バンドでの実視等級:22.98
V バンドでの実視等級:23.38
絶対等級:H_V = 3.5
アルベド:18%
直径:541 km
この天体を非公式に “DeeDee” と呼んでいる.これは “distant dwarf” が由来である.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.192 Batygin & Brown (2016) 太陽系内の "第9惑星" の証拠について